第6話 忘れられた、レストラン「もる・もる~ず」
「話を聞いてくださいますか。そうだ まずは オプションのチーズをお願いしましょう」
「いいのよ。 そんなことしなくても。その代わりリゾットを美味しく味わって帰るのよ」
貧相に見える身なりの客は この店には来ないほうがいい。
せっかく、リゾットは美味しいのに 気持ちが満たされずに帰ることになるわ。
このお店って もったいないのよね。 二つのアイデアが別々の道を歩いている感じ。
貧相なお客は 自分もレストランを経営していると言うことを話してくれた。
老舗のレストランらしく 何台か前のオーナーは天才だったらしく名前を知らない人はいないくらいの有名店だったらしい。
この貧相な男性はグレイスといって その天才オーナーの残した本を毎日拝んでいるのだとか。
「拝むのもいいけど、読まないのですか?」と聞いたけど 異国の言葉で書かれているらしく読めない本らしい。
ギュルルル~
あ!
私のお腹がなってしまった・・そうだ バールとリフトの相手をしていたから まかないを貰い忘れていたわ。
「ははは お嬢さん レストランで働いているのにお腹が空いているのですか?
そのキューブのパズルや もう一人の自分のことについては よくわからないのですが
もし 私の店にも取り入れることが出来るならうちのレストランでも働いてみませんか?」
急なお誘いを受けた。 私はこの街にお金を稼ぎにやってきたのでボランティアはしてあげられない。
「でも 私は 高いわよ」
私は 稼いだチップの金額をグレイスに告げた。
すると グレイスは 両手にこぶしを作って膝の上に 強く置くと考え込んでしまった。
「そ、、そんなに、、」 「でも・・ そう」「信じたい。君は本物だ!」
グレイスは強いまなざしで 私を見すえて、私の手をギュっと握った。。
彼の目を通して 彼の心が流れてくる。 魔法ではないけど魔法の様な強い熱意が伝わってきた。
「おっほん!! あの~ お客さん おさわりはダメ ダメダメ!! つまみだして!」
「ははは あの客 やっぱり おかしな客だったわ」
「私 あのテーブルにいかなくって よかった。」
「あの子、リフト様とバール様をバカにするような態度だったじゃない?きっと罰が当たったのよ ほほほ」
あらら 私の手を握っているのを見つかってグレイスはつまみ出されてしまった。
他のレストランならまだしも このレストランでウェイトレスの体に触ることは絶対にしちゃいけない。
そして 「リフト様とバール様」ってなに? 今日、この街に来たはずなのにウェイトレスたちの間で何かがあったようだ。
私は厨房のほうへ 下がる様にいわれて
厨房では 店長やコックたちから 色々な言葉で心配された。違うんだけどなぁ~
包丁を構えて「次に来たら、俺がミンチにしてやるよ」とかいう ヤバイ、コックもいた。
レストランはまだまだ 続くけど私はみんなよりも早く 仕事が終わった。
なんでも この街では私みたいな人族を遅くまで働かせることはできないらしい。
お店を出ると道の真ん中に 顔にアザのある男性がたっていた。グレイスだ。
見るからに痛そうだ。。 グレイスは「平気さ 当然の報いだよ」といって気にもしていないようだったけど
なんだか こちらの心が痛む。。
ご飯を食べるチャンスをすっかり 逃してしまっていたのでグレイスのお店に行くことにした。
「ようこそ もる・もる~ずへ!!」
老舗のレストランというのは本当のようで、屋根には二匹のデブのモルモットの看板が掛けられている。
「店長お帰りなさい~ぃ」と迎えてくれたのは ソリアとミーシャという名前のウエイトレスだ。
ソリアは 細身というかガリガリな体系で 一方のミーシャはふくよかすぎる体系だった。
厨房にはもう一人、コックのパンキーという人がいて 店長に頼まれて料理を作り出したけど「うぉぉ!」とか「ホイホイホイ!!」とか 掛け声だけはすごい。
そして 出てきた料理は すごい山盛りの料理だった。
ソリアとミーシャは帰りたがっていたけど 私と同じテーブルに着かせると
「明日から お昼の時間帯だけ働いてもらう事になった。トモちゃんだ!みんな仲良くしてやってくれ」
と紹介された。
パンキーはオデコをコンコンとたたいて「店長は とうとうそっちへ。行ってしまったか はぁ~」といったが
店長は 私の仕事ぶりについて話をしてくれた。
そして 次は私の番。私は人の心についての一通りの説明をしてみた。ほぼ メアリーの受け売りだけど。
ミーシャは 何度もうなずいて「わかる わかるわ」と言いながら 「もう一人の私のせいで私はいつもつまみ食いをしてしまうの」と言っていた。
でも 二人は半信半疑のようで。
「その もう一人の自分っていうのが 大騒ぎしているから、本当の自分の力を100%発揮できなくなっているって話だけど。俺は大丈夫だ! だって いつも全開だからな! うぉぉぉ!!」
「そのうち時間が出来るでしょうから 付き合ってもいいわよ。わたし なぜかわからないけど 毎日が忙しくて・・ごめんね」みたいなノリだった。
明日は少し 早くから来た方がよさそうね。
料理の味は それなりに美味しかったし、店の感じもレトロな味のある雰囲気だ。
壁には 絵が掛けられていて一つだけ メタルのレリーフがありメッセージが書かれていた。
「私の心を盗んだ、伝説のハンバーグ メアリーより」
メアリーですって!
さらに 驚いたことがあった。
「トモちゃん この本が あの天才オーナーの残した。ありがたい本だよ」
グレイスは 頼んでもいないのに私が本を見たいと思っていたのだろうか?
「君の目的は これだろ?」と言わんばかりに 自慢げに本をみせてくれた。
手に取って中身を見ると やっぱり 異国の言葉が書かれている。
だけど 私には二つだけ 読める文字があった。
それは 「と」と「も」の文字だ。
ピョンタが 昔教えてくれた。もう一つの私の名前の文字が書かれている。
そして すべてのページにと言っていいほど「と」「も」の文字が書かれていた。
「と・・も・・と・・も、もしかして トモちゃん? 私? この本は私を呼んでいるみたい」
私はグレイスに頼んで この本を貸してもらう事にした。
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