自分とそれ以外を隔てる境界線と鏡界面について

 私は一つ自慢があります。
 それは、本作を連載初日に発見し、それを50話の現在までずっと追い続けていることです。

 実は最初の印象はあまり芳しくなかったのです。
 初っ端から大変ショッキングな場面と描写に眉をひそめました。
 ですが、三人称で語られる確かな文体と、登場人物の自然な会話が心地よく、近未来SFとして内容の緻密さと設定の奥深さもあり、すっかり嵌ってしまいました。

 設定自体は、長谷敏司先生のアナログハック・オープンリソースを使用しているとのことで、私も補完のために「BEATLESS」などを参照してみました。

 ですが、それらの予備知識も実はあまり必要ないのかもしれません。
 hIEと呼ばれるヒューマノイドが生活に溶け込んでいる未来であることだけ知っていれば、そこで紡がれる日常は、今の延長線にあると実感できます。

 何より、純粋に物語として面白く、連載がしばらく空いた期間も何度か読み返し、新たな気付きに喜びを感じました。

 そんな物語の完成度に舌を巻く私は、更なる衝撃を受けます。
 それは作者様の本作に注ぐ想い。
 本作のために自ら立ち上げた自主企画などで研鑽を積み、アドバイスに真摯に耳を傾け、厭わずに改稿を行う。

 私などは、一度書いた文章がダメだ! と気付いても、それをどう直して良いか分からず、まあいいか。と放置するので、きっとここが完成度に対する分水嶺なのだと思います。

 さて、物語の現在地と帰着点、伏線の数々と様々な謎に対する考察もあるのですが、ここは一つ「考えるな感じろ」の姿勢で続きを待ちたいと思います。

 そしてどんな結末が訪れても私は満足できるのです。
 ここまでの物語で得られた感情と、考察させていただいた思考は、すでに私の宝物なのですから。

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