プロローグは二種類のおどろきを味わいました。
冒頭の掴みには成功していますが、場面転換後のシーンで「どうして少女がこんな目に!」とショックを受けました。
タイムリープものかと思って一章を読み始めましたが、ロボットとか人権を主軸にしたストーリーのようなので、「あ、これ勝手な先入観で読み進めたら混乱する」と気を引き締めて挑みました。
hlE(人型の機械)が普及された世界で、必死に何かから逃げている少女と出会うところから物語はスタートします。
自分は家電の説明書のような文章で世界観を語るSFが苦手なので、♯3あたりで苦しくなりました。
でも人間そっくりな振る舞いや心の在り方や人間の定義の境界線のくだりはよかったです。
(かなり脱線するのですが、自分は「背景」が好きです。
ファミレスのシーンや抹茶アイスだらけの冷凍庫とか、本編に関係ないのになぜか目をひきました)
私は一つ自慢があります。
それは、本作を連載初日に発見し、それを50話の現在までずっと追い続けていることです。
実は最初の印象はあまり芳しくなかったのです。
初っ端から大変ショッキングな場面と描写に眉をひそめました。
ですが、三人称で語られる確かな文体と、登場人物の自然な会話が心地よく、近未来SFとして内容の緻密さと設定の奥深さもあり、すっかり嵌ってしまいました。
設定自体は、長谷敏司先生のアナログハック・オープンリソースを使用しているとのことで、私も補完のために「BEATLESS」などを参照してみました。
ですが、それらの予備知識も実はあまり必要ないのかもしれません。
hIEと呼ばれるヒューマノイドが生活に溶け込んでいる未来であることだけ知っていれば、そこで紡がれる日常は、今の延長線にあると実感できます。
何より、純粋に物語として面白く、連載がしばらく空いた期間も何度か読み返し、新たな気付きに喜びを感じました。
そんな物語の完成度に舌を巻く私は、更なる衝撃を受けます。
それは作者様の本作に注ぐ想い。
本作のために自ら立ち上げた自主企画などで研鑽を積み、アドバイスに真摯に耳を傾け、厭わずに改稿を行う。
私などは、一度書いた文章がダメだ! と気付いても、それをどう直して良いか分からず、まあいいか。と放置するので、きっとここが完成度に対する分水嶺なのだと思います。
さて、物語の現在地と帰着点、伏線の数々と様々な謎に対する考察もあるのですが、ここは一つ「考えるな感じろ」の姿勢で続きを待ちたいと思います。
そしてどんな結末が訪れても私は満足できるのです。
ここまでの物語で得られた感情と、考察させていただいた思考は、すでに私の宝物なのですから。