第1話 今日の予定

 私服に着替えた後俺たちは台所に立って俺は5枚切の食パンを棚から取って、トースターに2枚入れて焼く。心優は冷蔵庫からベーコンと卵を取り出して、ベーコン2枚と卵4個をフライパンに落として焼いていく。

 焼けた食パンをお皿に一枚ずつ乗せてダイニングテーブルに敷いてあるランチョンマットの上に置いて二人分のナイフとフォークをラタンカトラリーケースに入れ、グラスに冷蔵庫に常備してあるオレンジジュースをグラスに入れてテーブルに置いている間に心優がベーコンと卵をお皿に盛って、上に黒胡椒をミルで少し削ってテーブルに置いた。

 今日はパンだから黒胡椒のみだけど、パンが白米の時は醤油をかけている。と言っても白米と目玉焼きが一緒に出てくることはほとんどない。なにせ俺と心優は朝食がパン派だから朝食に白米が出てくることは月に数えるくらいしかない。

だから家にはいろんな種類のパンが置いてある。

 


「「いただきます」」


ラタンカラリーケースからナイフとフォークを出して心優が焼いてくれたベーコンを一口に切って食べる。

 さすが心優。いい焼き加減。卵もいい半熟具合だし。相変らず心優は料理がうまいな。

 朝ご飯は一緒に作って食べているけど、夕飯は一緒に作ろうと思ったけど心優が「夕飯は私に任せて」と言ったから任せている。心優が手伝って欲しいと言われたら手伝っているけど。

 朝のニュース番組を見ながら朝食を食べていると天気予報が始まった。

 どうやら今日は全国的に快晴でお出かけ日和らしい。


「今日お出かけ日和だって」

「らしいね。どこか行く?」

「公園に行こう。お昼をどこかで食べて」

「いいよ」


 パンとベーコンエッグを食べてお皿を台所に持っていってお皿を洗う。

 心優は電子ケトルでお湯を沸かして珈琲を入れて、マグカップに珈琲を注いでソファーの前にあるテーブルの上に置いて座った。

 俺はお皿を洗い終え冷凍庫からチョコレートを4つ出して心優の元に持って行って、チョコレートと珈琲を堪能しながらテレビを見る。

 学校が休みの日はいつもこんな感じ。学校がある日はさすがにここまでのんびりしている時間は無いからどうしても珈琲が飲みたいときは、学校に行く途中にあるコンビニで買って行く。まあ、そういうときは余計なものを買って行くけど。

 心優と珈琲を飲みながらテレビを見て約1時間。時間はちょうど10時になった。

 マグカップを流しに入れて各自担当の家事を始める。

 俺の担当は部屋の掃除。心優は洗濯物を洗う。

 押し入れからコードレス掃除機をだしてリビングから掃除機をかける。

 リビングの半分くらいの所まで掃除機をかけたあたりで洗濯機を回した心優が台所に行って、朝ご飯に使った食器と調理器具を布巾で丁寧に拭いて棚に戻し始める。

 休みの日の家事はこんな感じで分担している。学校の日は朝に心優が洗濯を回して、俺が食器を片づけたりしている。

 俺たちが使っている洗濯機は乾燥機能付きだから朝回しておけば家に帰ってくるころには乾いている。

 ちなみに今俺たちが使っている家電のすべては心優と俺の両親がとってもいいやつを買ってくれた。

 家もオートロック・システムキッチンのあるマンションを借りてくれて、家賃も払ってくれている。だから俺たちは水道光熱費と食費を払えばいいからバイトをしようとしたら、両者の両親から止められて二人にほぼ同額が毎月振り込まれている。しかも十分すぎるくらいの金額が。

 俺が掃除機を寝室までかけ終えて寝室から出てくると食器をしまっていた心優がソファーに座っていた。


「お疲れ様。お茶飲む?」


 そう言いながらグラスに入った心優の飲みかけの麦茶を渡そうとしてきた。


「それ、心優のでしょ」

「そうだよ」

「新しいの持ってくるよ」

「え~、いいじゃん私ので。それとも私と間接キスはいや?」

「……嫌ってわけじゃないけど」

「良いじゃん。私とキスしたの初めてってわけじゃないから」

「……え?」

「え! 覚えてないの?」


 いつ心優とキスをしたんだ。全然身に覚えがない。

 俺が寝ているとき? それとも俺がただただ忘れているだけ?


「オボエテ…」

「無いんでしょ。もう」

「いつした?」

「——昨日」

「は⁉」


 昨日⁉

 昨日は学校だったから学校でした覚えは無いし。もし、学校でキスをしたのであれば覚えているはずだし。


「場所は」

「——ここ」

「まさか」


 昨日の夜。夕飯を食べた後心優とここで一緒にテレビを観ているときについ居眠りをしてしまった。もしかしたらその時にされてしまったのかも。


「そう。ついしちゃった♡」


 ついって…

 徐々に俺の体が熱くなってくるのがわかる。

 昨日キスしたことを笑顔で、ストレートに言ってきたから何か月も同棲していると言っても、さすがに恥ずかしい。


「顔が赤くなってるよ」

「なってないよ」

「私の前で強がらなくてもいいんだよ」

「——強がっているわけじゃ」

「じゃあ、恥ずかしいの?」

「……」

「恥ずかしいんだ~。可愛いな」


 心優はすぐ「可愛い」って言う。

 学校ではあんまり言わないのに、家にいるとよく俺のことを「可愛い」って言う。

 俺の恥ずかしがっているところを見て、心優は凄く笑顔でいる。


「——で、飲む?」


 再度俺に飲みかけのお茶を一口飲んで渡そうとしてきた。


「ありがとう。じゃあ貰うよ」

「うん」


 心優からコップを受け取って飲む。

 てっきり冷蔵庫に作ってあるお茶をそのままコップに入れたのかと思ったら、まだ温かかった。

 まるで心優の心の温かみがそのままお茶に移ったような感じ。


 一つのコップに入ったお茶を二人で分け合って飲み、今朝話して決めた公園に行く準備をする。

 準備をすると言ってもカバンの中に財布やスマホを入れてクローゼットから自分のコートを出して着る。これもそろそろ変えようかな。少し小さい気がするし、若干すうすうするところがあるし。今日買おうかな。


「一樹のコート穴空いているよ」

「え?」

「ほらここ」

「ほんとだ」


 コートの裾に穴が開いていた。恐らくどこかに引っ掛けて空いたのだろう。でも、どこかに引っ掛けた記憶は無いからきっといつの間にか引っ掛けてしまったんだろうな。


「どうするの?」

「どうするって?」

「さすがにそれじゃ嫌でしょ?」

「嫌だけど、これしかないし今日はこれを着るし、今日買おうかなって思っているし」

「あ、私も買う」

「心優は持っているし、綺麗でしょ?」

「そうだけど、これ中1のお正月から使っているから少し小さいんだよ」


 たしかに心優が今のコートを着て前を閉じると少しきつそうに見える。だから毎回心優がコートを着る時どんなに寒くても前を開けていたんだ。


「確かにきつそうだもんね」

「そうなの。だから真冬はとっても寒いの」


 そう言いながら自分の胸を押さえながら答えた。


「中学の時はそんなことなかったのに…」

「あの時はそんなに大きくなかったね」

「うるさいな。あの時はそれなりに気にはしてたんだよ。周りの女の子は徐々に大きくなっているのに私だけ平たかったから」

「でも、俺と付き合い始めたころは今と対して変わらなかっただろ」

「中3から大きくなってきたからね。いつの間にか周りの女の子より大きくなってたし、今もクラスの女の子より大きい気がする」

「確かにそうかも。まあ、担任の加藤先生の方が大きいと思うけど」

「なんで加藤先生はあんなに大きいんだろう。今度聞いてみようかな」


 聞くんだ。今より心優の胸が大きくなったらこれからの目のやり場に困る。今でも十分大きいと思うのに。


「あ~、でもこれ以上大きくなると肩が凝るかな」

「そうやって言うね」

「やっぱ聞くのやめよ」


 そんな何とも言えない会話をしながらこれから出かける準備を進める。

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