第2話 のんびりなカップル
ピピピ、ピピピ。
ベッドの上にある目覚まし時計が6時を告げる音が鳴った。
手を後ろに伸ばして鳴っている目覚ましを止める。
目覚まし時計を止めて目を開けると、目の前に心優の顔がもうすぐ鼻がくっつきそうな所にあった。
「おはよう」
「お、おはよう。ちょっと近い」
「近いね。恥ずかしいの?」
「い、いや」
「顔赤いよ」
「気のせい」
「ふ~ん」
ニコニコしながらくっつきそうな鼻をくっつけてきた。
心優が鼻をくっつけてきたから俺の心拍が一気に上がったのがわかる。
「どうしたの? 一樹の心臓の音がよく分かるようになったよ」
「心優。さすがに…」
「さすがに?」
「恥ずかしい」
「私も少し恥ずかしい」
心優も恥ずかしいのになんでこんなスキンシップをしてくるんだよ。
少し無言でただただ心優と見つめ合う時間が続いた。
「ご飯食べる?」
「うん」
チュ。
心優が不意打ちのキスをして布団から起き上がった。
心臓に悪い。心優がさっきみたいな不意打ちのキスをしてきたのは初めてだけど、最近朝起きると心優の顔が目の前にあったり、心優が俺にピッタリくっついていたりしているから毎朝何をしてくるかわからない。
まあ、俺も嫌ではないからいいけど。きっと心優も楽しんでやっているだろうし。
ベッドから降りて心優と顔を洗いに洗面所に行って洗顔する。
元々俺は洗顔していなかったけど心優に「一樹も洗顔した方がいいよ」って言われて、今は心優と朝洗顔をするようにしている。
俺と心優が暮らしている洗面台は横に長い洗面器だから二人ならそれなりに使える洗面器。
洗面所で洗顔をして台所に行って朝ご飯の準備をする。
今日は珍しく朝ご飯に白米が登場する。
理由は昨日の買い物で美味しそうな鮭があったから。正直理由はこれだけ。
久しぶりの朝食に鮭を食べて洗面台に行って歯を磨いて寝室に行って制服に着替える。
俺たちが通っている学校は去年まで学ランとセーラー服だったけど、俺たちが入学した年に制服がブレザーになった。正直学ランより、ブレザーの方が好きだから俺は嬉しい。心優もブレザーで嬉しいらしいけど、セーラー服を着てみたかったらしい。
家から電車を使って30分かけて学校に行く。
学校には俺たちが付き合っていることは隠していないけど、さすがに俺たちが同棲していることを知られると恐らくいろんな問題が発生する予感がするから同棲していることは隠している。
まあ、もしバレたとしても大した問題にはならないような気がするけど。
教室の後ろの扉から教室に入って、教室に後ろの方にある自分の席に座る。
ちなみに心優は俺の右横の席。
「相変らず二人は遅いな。今日もHR《ホームルーム》ギリギリじゃないか」
席に座ってリュックからノートと筆箱を出していると俺の前の席の
光一は俺に中学からの友人で俺と心優が付き合っていることを中学から知っている。ただ、俺と心優が同棲していることは知らない。
「間に合えばいつ来ても大丈夫だよ」
「確かにその通りだけど…」
「なに。どうしたの?」
隣の席でリュックから物を出していた心優が割り込んできた。
「俺たちが来るのが遅いって話をしていたんだ」
「え~、私たちが来るのって遅いかな」
「十分遅いよ」
俺たちが学校に来るのはHRの始まる10分前に来ている。俺的には「HRが始まる前に来ればいつ来たって大丈夫でしょ」って思っている。中学の時もHRが始まる前ならいつ来たっていいと思っていたから。
心優はどう思っているのかわからないけど、心優は中学の時は割と早かった気がする。心優の中学の時は友達が多かったからだと思うけど、俺は友達がいなくて本当に陰キャだったから学校に早く来たって仕方なかったから。
「早く来たって何にもすることないし」
「友達と話すとか課題をやるとか」
「課題をやるのは光一だろ。俺たちは前日にちゃんとやるから」
「最近はちゃんと前日にやってるぜ」
「本当かよ」
「本当だよ」
光一と話しているとHRを告げるチャイムが鳴った。
クラスの席を立っていた生徒が一斉に席に座って騒がしかった教室が一気に静まり返って5分したら俺のクラス担任の加藤先生が入った。
「みんないるか~」
教室の全体を見渡すように生徒の出席を確認した。
「ルーム長。これ配っておいてくれ」
先生が教室に来るときに一緒に持ってきたかごの中に入っているプリントを出して、教卓の上に置いてルーム長に配るように指示を出して教室を去っていた。
加藤先生はいつも出席を確認してすぐ職員室戻っていく。
「配り物があるのか」
加藤先生が教室から出てすぐ光一がそう言い放った。
光一は俺たちのクラスのルーム長だから加藤先生が置いて行ったプリントを1限目が始まる前に配らなくてはならない。
「頑張れルーム長」
「行ってくる」
渋々とプリントを配りに教卓の方へ歩いて行った。
世界史、数学、日本史と授業を受けて時間は12時。お昼の時間になった。
「終わった~」
腕を上に伸ばしながら言う。
「終わったね~。まだ午後があるけど」
「うわ~。……午後って確か全部文系だった気がする」
「あ~そうだった。しかも6限目が英語だった」
俺と心優は理数系は得意だけど、文系は苦手で特に英語は一番苦手。
だからその日の6限目が英語なのが俺たちにとって一番嫌な時間。しかも英語の教科担任がクラス担任の加藤先生だから帰るわけにはいかないし。
授業で使った教科書などを片づけてカバンから財布を出して食堂に行く。
俺たちが通っている学校の食堂は学校の食堂と思えないくらいの大きさで、全校生徒と先生の半分が座れるくらいの大きさがあって、カンター席から6人席までの席がそろっている学校の食堂と思えないくらいの大きさだ。だから席の心配をして早く食堂に行かなくても席に座れるから焦って食堂に行くことが無いから教室でゆっくりしていられる。
「あそこにしよ」
「いいよ」
心優が指定した席に財布と一緒に持ってきた水筒を席において学食を買いに行く。
今日の学食の日替わりはアジフライ定食。でも、俺と心優が選んだのは心優がチキン南蛮定食。俺がロースかつ定食にした。ただ、アジフライにしようかと悩んだけどロースかつの方が勝った。心優は何の迷いもなくチキン南蛮にしていたけど。
食堂のおばちゃんから注文した学食を受け取って水筒を置いた席に持って行って、座る席の前に学食を置いた。
「「いただきます」」
テーブルに備えてあるカトラリーケースから箸を取り出して切ってあるロースかつの一つを取って食べる。
学食のロースかつはサクサクでとっても美味しい。
「一つも~らい」
「あ!」
心優がロースかつの真ん中を一つ持って行って「サクッ」っと音を立てながら食べた。
「美味しい。一樹に私の一つあげる」
自分のチキン南蛮を一つ俺のお皿に乗せた」
「ありがとう」
「美味しい?」
「美味しいよ」
「よかった。そういえばさっきアジフライと迷っていたよね」
「アジフライもおいしそうだったから」
「確かにおいしそうだった。私は今日チキン南蛮しようって決めていたから迷わなかったけど」
心優が学食を迷わなかった理由は事前に何にするかを決めていたかららしい。でも、心優もアジフライが美味しそうに見えたんだ。
食堂で学食を食べて1時間のお昼休憩の後、古典、現代文、俺たちが一番苦手な英語を受け、時間が午後4時になった。
授業が終わったと同時に教室にいた生徒が一斉に立ち上がり帰る支度をする人、部活に行く人と分かれて行動を始める。
「疲れた~」
心優がそう言いながら机に体を預けて言った。
「疲れたね。なんで6限目に英語があるんだろう」
「もう嫌になっちゃう」
俺と心優はどの部活にも所属をしていない。
部活に所属している人は4時30分から基本的な部活は始まる。だから部活がある人、特に運動部は着替えをして準備をしないといけないから、授業が終わったら慌ただしく教材をしまって教室から出て行く。
「じゃあな」
「また明日」
「ばいばい」
光一はサッカー部に所属しているから慌ただしく教室から出て行った。
大変そうだな。この学校のサッカー部は全国大会に常連な程の実力があるから時間に遅れると怒られるんだと。しかも光一は中学からサッカーをやっていて上手いから選手に抜擢されているほどだ。
授業が終わって光一を見送ってから10分くらいすると、教室には数人で固まって話をしている人や、日直が黒板を消す人だけになった。
「私たちも帰るか」
「うん」
教材を片づけて少しスマホを触っていた俺たちはスーパーによって家に帰る。
今日はアジフライらしい。俺がお昼に迷っていたからと心優もアジフライが食べたかったかららしい。
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