学校で元一番の彼女は、俺と同棲している

宮原翔太

 プロローグ

「一樹。朝だよ」


 俺が寝ている上に何やら重いものが乗っかってきた。

 俺の上に乗っかってきたのは俺の彼女——牧之原まきのはら心優ここなが俺を起こそうと寝ている俺の上に抱き着くように乗っかってきた。


「お、重い」

「何が?」

「心優が」


 少し笑いながらゆっくり俺の着ている寝間着の中に右手を入れてきた。


「手、冷たい」

「心は暖かいよ」

「ほんとか?」

「ほんと」

「じゃあ、手を出して」

「嫌」


 そういうと左手も寝間着の中に入れてきた。

 布団に入って暖かいはずなのにどんどん体が冷えていって徐々に寒くなってきた。


「心優さん。そろそろどいてくれない?」

「どうして?」

「重いから」

「愛が?」

「体重が」

「私そんなに重くないもん」

「そうか? 昨日意外と食べてたでしょ」

「——ねぇ、そろそろ拗ねるよ。私が拗ねると大変なの知っているでしょ」

「知ってるよ」

「だったらどうすればいいかわかるでしょ?」

「心優の望みは」

「フフ。何にしようかな」


 嫌な予感がする。

 心優の望みを聞けばなんとかなるのだけど、その望みがたまにとんでもない望みの時がある。別に何か高価なものを買って欲しいってことは無いけど、いくら同棲していて彼氏彼女の関係でも少し叶えづらいものの時がある。

 だから大変なのだ。それを心優自身も自覚しているのだから心優は変態なのかも。


「今回はケーキ一つで許してあげる」

「わかった」


 俺たちは今こうして同棲しているけど、あくまで高校生で学生だから学校に行く必要があるけど、今日は土曜日だから今こうして心優が上に乗っかっている。平日だったら俺だって時間になれば起きる。


「てか、そろそろ降りてくれない」

「え~。もう少しこのままでいいじゃん」

「そろそろ苦しい」

「しょうがないな」


 渋々俺の上から降りて布団の中に入ってきた。


「起きないの?」

「だって寒いもん」

「エアコン付けてないの?」

「うん」

「リモコンは?」

「ここにある」


 心優側にあるサイドテーブルからリモコンを取って見せてきた。


「見せなくていいから付けてよ」

「は~い」


 リモコンのボタンを押してエアコンの電源を入れる。


 エアコンを付けて30分くらい布団の中で心優に突かれていた。

 確実に俺の弱いところを突いてくるからくすぐったくて仕方なかった。

同棲する前はそんなことなかったのに、同棲を始めてから心優のSっ気が強くなった気がする。

 同棲する前はたいしてSっ気があったわけじゃないのに。


「心優。起きるぞ」


 俺を突いていた心優がいつの間にか寝ていた。

 そりゃあ寝ちゃうよな。部屋は寒いうえに布団の中なんて暖かいし、心優も起きたばっかりだからな。


「うん」


 布団から起き上がった心優とベッドから降りて、寝室を出て顔を洗いに洗面所に行く。

 顔を洗って寝室に戻って私服に着替える。

 心優と同棲を始めた当初はさすがに恥ずかしくて寝室で着替えられなかったけど、心優に「一緒に着替えない?」と言われて、着替えたのがきっかけで一緒に着替えるようになった。

 彼氏彼女の関係と言うより夫婦と言った関係になりつつある。

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