第7話 いたずらをしたら、仕返しを食らった

 土曜日。朝8時30分。

 私、牧之原心優は目覚めた

 今日は休日で学校が休み。だからこんな時間に起きても布団の中でゆっくりしている。

 今日出かける用事無いし。

 ちなみに一樹は私に背を向けて寝息を立てながら寝ている。

 私に背を向けて寝ているから私の好きな一樹の寝顔が見れない。


「一樹の背中大きいな。まあ、男の子だからな」


 一樹の背中を見ていたら背中に抱き着きたくなってきた。

 布団の中でゆっくり一樹の背中に近づいて、そっと手を一樹の前に通して一樹に抱き着く。


「ん~。たまらない」


 一樹に抱きつくと一樹から漂ってくる匂いがたまらない。

 もうこのままずっと居たいと思えてくる。

 なんだか5分近く抱き着いてくると、なんだかいたずらをしたくなってきた。

 一樹と私の身長は大体一緒ぐらいだから、こうやって寝ていると私のつま先が一樹の膝に当たるくらい。

 このまま私の足を一樹の足に、私の足を絡ませて一樹が起きた時に動けなくなったときに、一樹はどんな反応をするんだろうな。

 少し絡めてみよ。

 足を一樹の足に縫うように絡めて、一樹の足の身動きを取れないようにしっかり固定して、しっかり抱き着く。

 足を絡めるだけじゃつまらなくなってきたから、せっかく一樹の胸に私の腕があるから、一樹の寝間着の中に手を突っ込んでもぞもぞしてみたくなった。


「よいしょ。……ん? 一樹ちょっと太った?」


 同棲を始めてすぐの時に一回だけ、今日と同じように一樹の寝間着に手を突っ込んで、一樹の体を舐め回すように触ったことがあったけど、その頃は引き締まった体をしていた。

 実際私も同棲前と今だと少し体重が増えた。

 間違いなく運動不足。

 中学の頃は学校まで歩いていたから食べ過ぎても問題は無かったけど、今は電車通学だし土日もほとんど家にいるし、例えで出かけても公共交通機関を使うから大して運動にもならないし。

 健康には気を付けた食事をしているはずだし、同棲前と変わらない量の食事なんだけどな。

 いろんな考察を考えるやっぱり運動不足が表に出ているだろうな。

 高校の制服が入らなくなったわけじゃないからいいけど。



 一樹の体を触り続けていると、一樹の体が震えあがった。

 どうしたんだろ?


「こ、心優。…くすぐったい」


 どうやら一樹の弱いところに私の手が入ったらしく、くすぐったいらしい。


(黙ってよ)


 確か一樹は脇の下あたりが弱かったな。

 今ちょうど私の手は、一樹の弱いところにあるからくすぐったいのだろう。

 尚且つ、強めに触っているのではなく、柔らかく触っているからもの凄くくすぐったいのだろうな。


「……心優」

(もうすぐ限界かな。もう少し待ってみよ)


 わさわさ。

 両手両足を私に固定されているから、抵抗したくても抵抗が出来ない。

 正直、抵抗が出来なくして、一樹をこうやっていじくり回すのがとっても楽しい。


「そろそろ限界です」


 限界か? もう少し大丈夫かな。


「本当に限界?」


 試しに耳元で囁いて聞いてみる。


「ギブアップ?」

「ギブアップ」

「……どうしようかな」

「どうしよかなじゃなくて」


 一樹はそろそろ限界かな。

 これ以上やったら私にやり返しが来るかもしれない。


「どっちを離してほしい?」


 離す前にちょっといたずらで、触っている手か動けなくしている足かを聞いてみる。


「手の方を」

「嫌だって言ったら?」

「心優のことが嫌いになるかも」

「……え」


 一樹は私の攻撃に耐えながら言っていたけど、かなり真剣な声だった。

 私は固まった。

まさか、私の事を嫌いになるなんて言うもんだから。


「嫌いにならないで」

「嫌いにならないで欲しいなら、この手を離して。……凄くくすぐったい」


 私は渋々、一樹の脇から手を離した。

 一樹に嫌われたくないし、このまま続けたら本当に嫌われそうだから。


「離したよ。嫌いにならないで。……それとも、もう嫌いになった?」

「どうだろうね」


 相変わらず一樹は意地悪。


「……ケーキで良い?」

「物で釣ろうとしてる?」

「そういうわけじゃないけど…。……一樹はいつも、物で釣ろうとしてるでしょ」

「そ、そんなことないと思うけど」

「嘘だ! いつも私が機嫌を悪くすると、物で機嫌を直そうとするじゃん」

「………」

「なに? 何も言い返せないの?」


 一樹が何も言わず黙ってしまった。

 だって、本当の事だし。

 でも、それに釣られて毎回私は機嫌を直しちゃうんだよな。


「……それとも私が怒っていると思ってる?」

「す、少し」

「私はそんなことで怒るほど器が小さい女じゃないよ」

「…それを聞いて少し安心はしたけど、……心優は少し気にしているのかと思ってた」

「そっか。もし私がそんなことで怒るのだったら、私は一樹に面と向かって言ってる性格だから、そんなに気にしなくていいよ」

「ありがとう」


「ありがとう」って一樹は言ってくれたけど、きっと気にしているんだろうな。

 一樹って私が「気にしなくてもいいよ」って言っても、結構気にしているって見ればわかるくらい気にしている。

 実際私も一樹が「気にしなくていい」って言われると余計気にしてしまって、本当はどうしたらいいのかって考えるようになってしまう。

 結局、どうすればいいのかわからないのだけど。


 ・・・・


 一樹の体を怒られながら触っていると、時間が10時になろうとしていた。

 結局、一樹に仕返しを受けて、私の一番弱いところを責められるという結果になった。

 もう、なんて酷いことをするんだろう。

 一樹からの仕返しを受けて、一緒になって動画を見て過ごして10時になった。


「お腹空いた」

「まだ何にも食べてないもんね」


 9時頃起きてから布団の中でいろいろやっていたから、この時間まで何にも食べていないから、お腹が空いてくる。


「何か食べる?」

「今食べたら、すぐお昼だよ」

「そうだけど…」

「それに、今食べてお昼食べたらもっと太るよ」

「うるさいな。俺、そんなに太ってるか?」

「同棲し始めた時より少し大きくなっている」


 一樹のお腹に手を回して、つまめるようになったお腹の肉を摘まむ。


「ちょっと。やめてくれ」

「だって、摘まめるんだもん。摘ままないと損でしょ」

「損ってなんだ。そういう心優だって摘まめるだろ」


 一樹がお腹に回していた私の手を握って、向きを変えて服の間に手を入れて私のお腹を摘まんできた。


「ちょっと。……エッチ」

「心優も同じだろ」

「私も同じことしたけど。……女の子の体を触るなんて。相手が私じゃなきゃ犯罪だよ」

「大丈夫。心優以外はしないから」

「そうだね。一樹にそんな勇気はないもんね」

「ひど。……まあ、確かにその通りだけど」

「でも、そういう勇気は昔よりあると思うよ」

「そう言ってもらえて嬉しい」


 付き合い始めた時の一樹は女の子に手を出そうとする勇気が無かったから、その時のことを考えると「成長したな」って思う。


「……あのさ。そろそろやめてくれない? ちょっとくすぐったいの」


 一樹と話している間をもずっと一樹は、私のお腹を摘まんで来ていた。


「え~。凄く気持ちいんだもん」

「やめてよ。…てか気持ちいいとか言わないで」

「だって、心優のお腹すごくすべすべしてて、触り心地がいいんだもん」

「それなら、私の腕とかでいいでしょ。なんでお腹なの」

「普段触れるような所じゃないし」

「だからって、こんなにじっくり触らなくてもいいでしょ」


 私のお腹を摘まんだり、手のひらで優しく撫でまわしたりして、じっくり触ってくるから若干恥ずかしい。


「そんなにじっくり触ってるか?」

「触ってるよ! 若干くすぐったい」

「だって…」


 だってじゃなくて。

 確かに普段触れるような所じゃないにしても、少し触り過ぎな気がする。

 でも、これが胸だったら、もっと恥ずかしかっただろうから、お腹でよかったって思うけど。


「だってじゃなくて。……あと、5分だけだよ」

「本当に⁉」


 嬉しそうに声を上げて、お腹を触ってきた。

 もしかしたら、私が寝ている隙に後ろからお腹を触ってくるのかもしれない。

 別に一樹に触られる分にはいいけど、さすがに恥ずかしいな。

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