第20話 私にできることを

 目が覚めた時は、2020年ではなかった。


 カレンダーを見る。2021年、6月10日。お姉ちゃんが亡くなった翌日。


 私のタイムスリップは、約8か月で終わりを告げていた。


 なんだったのだろうか。中途半端に長い夢だったのだろうか。


 夢なら、どうしてこんな夢を見たの?


 お姉ちゃんの遺影に語りかける。このタイムスリップはお姉ちゃんの仕業だったの?


 だとしたらどうしてこんなことを。


 ——。


 蘇ってきたのは、お姉ちゃんの言葉だった。


 本来の世界線ではなかったやりとり。


 タイムスリップしていなければ聞くことのなかった、姉からのメッセージ。



『私たちは、今できることを、気をつけながらしていけばいいんじゃないの?』





 全てを知っていたところで、普通の小学生の私は、何も変えられなかった。


 起きるとわかっているパンデミックを食い止めることは叶わなかった。


 それでも、一つだけわかったことがある。


 今できることの積み重ねは、小さくでも、運命をズラすことができる可能性を持つということだ。


 みんながそれを知って。


 自分たちの小さな心がけが運命をずらせると信じて、行動に移したなら。


 きっと何かが変わるんだと思う。


 


 私は、積み重ねていこうと思った。タイムスリップをさせてもらった経験者として。今、できることを。


 夜明けはいつになるかわからないけれど。


 命のある私たちは、前に進んでいくしかないんだ。

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小学生がタイムスリップしてパンデミックを阻止しようとする話 ここプロ @kokopuro

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