第19話 私たちは
お姉ちゃんの持つお盆には、水と風邪薬、それに氷枕が乗っていた。顔にはしっかりとマスクをつけている。
どうして、と呟くと、私の喉からひどい咳が出た。
お姉ちゃんは私に近づくと、氷枕を手渡した。
「妹が辛い思いをしているのに、放っておけるわけないでしょう」
「でも」
「何もしないわけにいかないでしょ。
私たちは、今できることを、気をつけながらしていけばいいんじゃないの?」
そう言うと、お姉ちゃんは優しい顔で微笑んだ。
「今、あんたが頑張ることはゆっくり休むこと。人の心配をするよりも先に、ね」
お姉ちゃんはそれだけ言うと、私の部屋を出て行った。
今、できることを。
タイムスリップして以来、私がずっとずっと、繰り返してきた言葉だ。
熱のせいだろうか。意識が遠ざかっていく。
私がその翌日を迎えることはなかった。
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