ある日、空から天使の死体が降ってきた。

首から上が破損した天使の死体。それを前に奇妙な落ち着きを見せる男。
なんてグロテスクなのだろうか。欠損した死体の表現が、ではない。死体を前に特段の感慨を抱かず、理性を保つ男の姿が、あるいはそのまま独白を続ける彼の神経が、言いようのない「気持ち悪さ」を内包している。理不尽、違和感、狂気と言い換えてもいい。
この作品で語られるのは世界に対する姿勢である。受動的であるか、能動的であるか。天使というのは天空に属する存在であって、私たちの世界の外から来訪するものである。その死体が降ってくるという異常事態は、あるいは世界に遍在するあらゆる突発的事象に対するメタファーであり、それに直面して、人は本性を見せるのだ。
騒ぎ立て警察に通報し写真を撮るという受動を採るか。
じっくりと観察し触れ結局死体とは関係のない自己世界に浸る能動を採るのか。
あなたはどちらだろうか。