「冬眠」したらデバッグモードになったので開発画面でスキルを自作しました ~管理者よ、お前一度もテストしてないだろ! 冬眠スキル使った瞬間にデバッグモードに入ったんだが?~
3、冒険者登録といえば、お決まりのイベントが……
3、冒険者登録といえば、お決まりのイベントが……
山道を下り、森が開け、丘を越えたトーキは、その丘の上からイナカンの街を望む。
「本当に意外だ。意外過ぎる……」
イナカンの街、名前に反して意外なほどの都会さに、トーキは驚きを隠せなかった。
周囲は外壁で守られ、内部には数千に及ぶであろう建物がひしめく。街の中央部を川が通っている。
なぜか既視感がある、まさに"The 異世界の街"である。
街にはあっさりと入れた。門番も居たが、特に止められるようなことも無かった。門番の仕事は、街にモンスターが入り込まないようにすることだからだ。
前世ではもっと人の多い街にも行ったことはあった。しかし、生まれ変わって十数年、すっかりそのあたりの感覚を忘れていたトーキは、イナカンの都会さに目を回しそうだった。
(こんなことでは首都とか行ったら、人酔いで死にそうだなぁ……)
改めて門番に道を聞いておいてよかったと思いつつ、トーキは"冒険者酒場"にたどり着いた。
"冒険者酒場"は平たく言えば"冒険者ギルド"である。依頼者はここに依頼を持ち込み、冒険者はここで依頼を受けて冒険へと旅立つのだ。
トーキは、自身の緊張感が高まるのを感じた。冒険者ギルドでのお決まりイベントと言えば、
美人受付嬢 → 登録で絡まれる → 相手をあしらう → 一目を置かれる
である。※トーキ調べ
ちょっと火で燃やせる程度の自分では、ベテランに絡まれたなら順当にやられてしまうだろう……。
「だが行かねば」
自身の野望のため、トーキは数回深呼吸の後に冒険者酒場へと足を踏み入れた。
扉を開き、中に入ったトーキに周囲の視線が一斉に……、集まることは無かった。皆、普通に酒場で飲食している。今は丁度昼時であるため、昼食客で賑わっているようだ。
「いらっしゃい、お一人様かい?」
給仕をしているらしき愛想のよいお兄さんが、扉の前で立ち尽くすトーキに声をかけた。
「あ、いえ、冒険者の登録に……」
あー登録ね、と納得したように呟いたお兄さんは、店の隅、壁に取り付けられている掲示板のような場所を指さした。
お兄さんに礼を述べ、トーキは掲示板までやってきた。掲示板には依頼書らしきメモが、数点ピン止めされていた。
どうしたものかと見回したトーキは、掲示板の下に小さいテーブルがあり、その上に厚手で色の悪い紙が置かれていることに気が付いた。
紙には"冒険者登録申請書"と書かれている。
「これに記入するのか?」
紙の横には、投票箱のような箱があり、"登録箱"と書かれている。紙と箱を見比べるトーキ。
「もしかして、この紙書いて、ここに入れるだけ……?」
数秒間逡巡し、トーキは紙に必要事項を記入し箱に入れた。必要事項といっても、名前と出身地程度だったが……。
掲示板に残っている依頼書メモを見る。"常設"と書かれた薬草採取依頼があった。この薬草ならドイナカンに居た頃にも集めた覚えがある。
薬草採取に向かうべく、酒場の出口に向かおうとしたトーキの前に、妙齢の女性が立ちはだかった。
「うわっ!」
「ふーん、きみ、新しい冒険者?」
意表を突かれたトーキは、驚きで声を上げてしまったが、女性は気にせずトーキをマジマジと観察する。
(女の人に絡まれるとは思わなかった……)
女性は綺麗な赤髪を後ろ手1つにまとめており、非常に整った容姿をしていた。服装はいたって普通な亜麻の上下なのだが、それでは隠し切れないスタイルが魅力を放っている。
もしかしてこのお姉さんと対決展開? いや、まさかいきなり気に入られた展開!? などとトーキがドギマギしていると、
「うん、きみは無いな」
それだけ言って、女性は去って行った。
それきり、誰にも気に留められることなく、トーキは酒場から外に出た。
「なんかすごく失礼なことを言われた気がする!」
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