「冬眠」したらデバッグモードになったので開発画面でスキルを自作しました ~管理者よ、お前一度もテストしてないだろ! 冬眠スキル使った瞬間にデバッグモードに入ったんだが?~
13、どんなにすごいアイテムにも使用期限がある
13、どんなにすごいアイテムにも使用期限がある
「ゴブッ、グハハハハ、キ、サマ、タチハ、終ワリダ……」
ただの血だまりだと思っていたオーク村長が声を上げた。
「あ、まだ生きてる」
ゾォンが使っていたアースメイスが乗っかったままであるため、まるでメイスが喋っているように見える。
「コノ、呪符デ、魔王サマを呼ブ! グボァ、コ、コレ、デ……」
"この呪符"と言われても、トーキ達には見えない。たぶん槌の下にあるのだろう。
「呪符!? そんな値打ちもんを使うなんて!!」
「これ、ゼニィさんや、よだれよだれ」
槌に飛びかかろうとするゼニィを押しとどめ、ヨダレをぬぐうように指摘するトーキ。
その間に、ゾォンはメイスに近寄り、柄をコンコンと叩く。
「ゴブッ、ヤメ、ヤメロ! ツ、使ウゾ! コ、後悔サセテヤル!」
「あぁ~、もったいない」
ゼニィのうらやむ声に後押しされるように、村長は呪符を起動した。
※=================-□×
この呪符で取り交わす情報は、ほかの人から読み取らたり変更されることはありません。しかし、この呪符のセキュリティ証明書には問題があります。
(レ)このセキュリティ証明書は、信頼された証明機関から発行されています。
<!>セキュリティ証明書は有効期限が切れたか、まだ有効になっていません。
(レ)このセキュリティ証明書には、連絡しようとしているユーザの名前と一致する有効な名前があります。
続行しますか?
[はい][いいえ][証明書の表示]
=====================
「ホ、ホヘ? セキュリティ、証明書? コ、コレ、ドウシタラ……?」
メイスの下から聞こえる戸惑いの声に、ゾォンは一瞬首を傾げ、そしてメイスを持ち上げた。
「オ、オォ?」
そして再度落下するメイス。
「ブギャァッ!」
今度こそ、村長の声は聞こえなくなった。
「よ、容赦ない……」
「では、討伐証を集めますか……」
オークの討伐証明は、ゴブリン同様に左耳である。
「残っていればね……」
大半のオークが"ミンチより酷い"状態になっているため、討伐証明が採取不能な個体が多い。
なお、オークは豚の顔をしているが、肉はまずくて食えない。
「ほぅ、オーク村長を倒したのか」
集落上空から降る女の声に、三人は跳ねるように上を見上げた。
背から羽を生やした褐色肌の女性が、滞空している。頭部から生えた1対の角が、彼女は人間でないことを主張していた。グラマラスなスタイルに際どい露出の服を身に付けたその女は、腰まである灰色の髪をなびかせつつ、悪魔のような翼をはためかせ、地面に着地した。
「自己紹介をさせていただこう。私は魔王軍三傑衆の一人、チューボッスだ」
「酸欠の中ボス?」
「チューボッスだ!!」
「オーク村長から地代と人頭税の取り立てに来たのだが、全滅しているとはな」
「肩書は偉そうなのに、随分地味な仕事なのね……」
"人手不足なんだよ!"と怒りつつ、チューボッスが腕を組む。
「まぁいい、代わりにお前たちから取り立てさせてもらおう」
チューボッスの言葉にゼニィが身震いしつつ叫ぶ。
「無理! 私の一番嫌いな言葉が"支払い"で二番目が"税金"なの!」
「"納税"は国民の義務」
「いや、俺達魔王の国の国民じゃないから、義務はないだろ」
ゼニィは、ゾォンの言葉で蒼白になり、トーキの言葉で笑顔へと、コロコロ表情を変える。
チューボッスは、トーキの言葉で納得したように手を叩いた。
「確かにお前の言う通りだ」
そしてチューボッスは不敵な笑みを浮かべた。
「つまり、お前たちは我が国の国民を脅かす外敵なわけだな?」
チューボッスの雰囲気が変わり、急激に殺気が膨れ上がる。
「やっぱりそうなっちゃうか!」
トーキの言葉で、ゾォンがメイスを構え、トーキが──
(スキル打つのに構えとか要らないしなぁ……)
一瞬迷い、とりあえずそれっぽい構えを取ることにした。その頃ゼニィは……
「あ、あいつ、お宝持ってトンズラしやがった!!」
既に姿が無かった。
「魔王様の秘術を見るがいい!! 顕現せよ! 無双鎧!!」
チューボッスの周囲を立体魔法陣が回転し、空間を超えて出現した漆黒の鎧が、彼女の体を覆い隠していく。
魔方陣が消えると、チューボッスは禍々しい全身鎧を纏った悪魔へと変貌していた。
「二人仲良くあの世に送ってやろう」
チューボッスは、その指先から紫電を発しつつ、トーキとゾォンに宣言する。
「二人はいつでも仲良し」
ゾォンがそれに反論した。
「い、いや、そう言う意味ではなくてだな、二人一緒にあの世に送ってやると言う意味であって……」
ゾォンの斜め上の反論に、律儀に応じるチューボッス。だが、その説明にもゾォンは首をかしげる。
「二人はどこへ行くのも一緒。アナタに送ってもらう必要はない」
ゾォンが頬を染めつつ述べる。が、チューボッスは困惑している。
「あの、ゾォンさん、そのくらいで……」
「つまり、二人とも殺してやるという意味で──」
チューボッスがよりストレートな表現で述べた瞬間、目にも止まらぬ速さでゾォンが接近し、メイスを横薙ぎで振り抜いた。
「ぬぅ!」
チューボッスはそれを手でガードする。ギャギャギャッという金属同士が擦れるような衝突音が響く。
メイスでぶっ叩かれた反動で横滑りするチューボッス。だが、無双鎧には傷一つ付いていない。
「トーキに手を出すのはゆるさない」
「ふはっ! いいぞ! かかってこい!!」
お互いに向けて突進する両者。速力を乗せ、上段からメイスを打ち下ろすゾォン。それをチューボッスが無双鎧の拳で迎撃する。
ゴォンという釣鐘を撃つような音を響かせて両者が激突する。周囲に衝撃波が広がる。
「ぎゃぁぁぁ……」
衝撃波に吹き飛ばされたトーキが、悲鳴をあげつつゴロゴロと転がる。
「オラァァァァァァァァァ!!」
「ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない」
チューボッスは両手で拳撃の連打を繰り出し、ゾォンは超重量のメイスを、その重さを感じさせない速度で振り回し連打を叩きこむ。
両者の連撃が連続的に衝突し、周囲に激しい破壊をもたらす。オーク集落に残った建物が次々と倒壊し、木がなぎ倒され、地が割れる。
そして限界が訪れた。
──ビシッ
ゾォンの持つメイスに亀裂が走り、直後の激突で粉砕された。
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