「冬眠」したらデバッグモードになったので開発画面でスキルを自作しました ~管理者よ、お前一度もテストしてないだろ! 冬眠スキル使った瞬間にデバッグモードに入ったんだが?~
9、"製作パート"って、どうしても主人公の独り言が増える
9、"製作パート"って、どうしても主人公の独り言が増える
「燃費悪い」
パイロショットの効果検証のため、トーキはゴブリン狩りにやってきた。パイロショットの威力は充分で、1発でゴブリン1体を余裕で屠れた。
これは俺の時代が来たか!と喜び勇んだのも束の間、2発撃つと、100mを全力疾走した後のようなものすごい疲労感に襲われた。
数分休憩を取れば回復するのだが、その間にゴブリンを次々撲殺するゾォンを見ていると、トーキは何とも言えない悲しい気持ちになった。
燃費が悪いのは当然といえば当然である。パイロショットは、トーキが実現可能なリソース限界を突き詰めた設定で行使しているからだ。
トーキが6体、ゾォンが20体のゴブリンを討伐したところで、二人は街に戻った。
二人の"愛の巣"に帰宅したトーキは、ObjectorのVET画面を開いて唸っていた。トーキには一つ新たな気付きがあった。
近くに人がやってくると、VET画面にある"Domainツリー"という部分に、Creatureというオブジェクトが増えるのだ。遠ざかるとCreatureオブジェクトは減る。さらに、どうやらトーキ自身もCreatureオブジェクトの一つとして、"Domainツリー"の中に存在しているようなのだ。
「Creatureが人を表しているのかな?」
Creatureを開いてみると、皆それぞれに違ったコードが記載されている。トーキと同じく"エクサパイロ"が記述されている人も居た。
「これは他人のスキルが見えているのか」
ならば! ということで、早速ゾォンのCreature画面を開いてみた。
『"女子を覗き見"の検索結果を表示します』
「いきなり何してんのフォルトゥナさん!? しなくていいから!」
フォルトゥナの遠回しな妨害を掻い潜り、トーキはゾォンのCreature画面を確認する。
「……?」
意外にも、ゾォンのCreature画面に記載されている処理は1種類だけだった。
"Creature_Activate"という処理で、その中ではただ一つ、"BodyGainFullExEx"という命令文だけが記述されていた。
トーキは少々意外に思いつつも、それを丸ごとコピーし、自分のCreature画面に貼り付けしてみた。直後、トーキはぶっ倒れた。
「ぬ、ぐぅ……」
どういうことか、いや、理由は分かった。純然たるリソース不足なのである。パイロショットを2発撃った後をはるかに超える倦怠感ゆえに、トーキはぶっ倒れたのだ。どうやら"BodyGainFullExEx"はトーキには使えないようだ。
息も絶え絶えの状態で"BodyGainFullExEx"のコードを削除したトーキは、そのまま数分間、安静に過ごした。
「ゾォンのスキルは、俺には使えないということは分かった」
改めてObjectorのVET画面を見つつ、トーキは独り言を呟く。
『リソースが不足しています』
フォルトゥナがトーキに現実を突きつけてきているが、トーキは聞こえないふりをする。
ちなみに、ゾォンの凶暴性を抑えられるのではないか、という淡い期待の元、ゾォンのCreature画面にある"BodyGainFullExEx"を消そうと試みた。しかし、他人のコードは編集できないらしく、消すことができなかった。
トーキは魔法系スキルの適正が高い、と思われる。"BodyGainFullExEx"でぶっ倒れたのは"格闘"の適性が低いからだ、と思っておく。
『リソースが不足しています』
フォルトゥナが何か言っているが気にしない。トーキは自身の精神の均衡を保つために、そのように断定した。そうに決まっている。
であるならば、魔法系スキルで何とかするべきである。
「新魔法スキル、作っちゃうか」
ということで、トーキは新しい魔法スキルを開発することにした。と言っても、完全新規で作り出すのではなく、他人のコードを拝借し、それらを組み合わせて作り出すお手軽開発だ。
「異世界の魔法チートといえば、やっぱり現代物理知識の応用だよね」
トーキは魔法スキルを組み合わせ、"鉄砲"を再現することにした。
まず道行く人から見つけたのは、土を操作する"アースキネシス"のスキルだ。
この魔法スキルを使用すると、詠唱に応じた距離に、地面から三角錐型の石が飛び出す。
コードを確認したところ、形状や大きさも細かく設定できそうである。
次に見つけたのは、爆裂スキルの"エクスプロジョン"だ。
この魔法スキルは、距離も威力も全て固定。詠唱も不要という代物だが、トーキには発動できなかった。どうやらリソース不足らしい。
ただ、こちらもコード上では、爆発の規模や発生位置などを細かく設定できそうであった。威力や規模を落とせば、トーキでも発動できるであろう。
さらに、空気を操作する"エアキネシス"も入手した。
この魔法スキルは、詠唱に応じた距離に空気の塊をぶつける。
こちらもコードで調整することで、様々な形状に空気を固定化できそうである。
土操作で弾丸を成型し、空気操作で銃身を生み出す。そして爆裂で弾丸を射出。それぞれの規模は小さいためリソース消費は最小限。しかし射程は数十mは超えるだろうし、威力も期待できる。
トーキは庭の石相手に、早速試射を行った。
「顕現せよ、バレットショット」
トーキの声に応え、地面から飛び出した土塊が、じりじりとゆっくり弾丸型に成型される。
続けて空気が固まりゆっくりと銃身が成型され……、直後に発射された銃弾は、庭石を半分に打ち砕いた。
威力は強力、弾速も射程距離も充分である。しかし、
「遅い、発動が遅いよ! 助けて、神界の仮面天使様ぁぁ……」
name: 神界の仮面天使
【処理中に顕現設定をOFFにし、すべての処理が終わったら顕現の再描画をするとよいと思います。DomainオブジェクトのRevelationUpdatingをfalseにしてみてください。】
「ということで、顕現せよ、バレットショット」
発動直後、弾丸が見えたかと思えば射出され、庭の石は粉砕された。
「速い! 速過ぎて見えない! いや、いいことだけど!」
こうして、トーキオリジナル魔法、バレットショットが完成した。
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