第10話

 ふ~ん、この世界に意外と異世界人っているんだ。

 これで私を含めて4人目だよね。


「エロ駄女神に何か言われてる?」

「えっ、領主様はここに来るのに女神にあってるのですか? チートとか貰ってるんですか?」


 私の場合、貰ってるんだけど意図せずして付けられた様な物だけどね。

 ロイにしてもユリアナさんにしても不老長寿のユニークスキル貰ってるんだよね。


に会ってないの?」

「えぇ、女神にはあってませんね。一応貴族に産まれましたから魔力は高く魔法は使えますが、特に飛び出た才能もありません。

 陛下やイミューズ卿の様な異世界人の称号もありませんね」

「それって転生だからじゃないかな? 私やロイ……じゃなくて陛下は転移、ユリアナさんは召喚だから」


 勝手な私の解釈だけどね。あながち間違って無いと思う。

 でもロイもユリアナさんも黒髪の黒い瞳で顔も日本人なんだけど私は……。結構身体のあちこち弄られてるんだよね。

 顔付きは私の化粧した時の顔がスッピン状態になってるし、スリーサイズも前世とは違う。


 最も違うのは、私の胸はもっと大きかった! サイズダウンしてる。無駄毛の処理をしなくて良いのはありがたいけど、彼処にも毛がないし……。

 マルコフは何も言わなかったけど、正直この世界でマルコフとしか関係がないから何とも言えない。これが当たり前なのかな?


 まぁ、少なくてもエロ駄女神は私と一緒だった。ユリアナさんは、……何か微妙だったんだよね。

 



 数時間後、派手に告知していた影響もあったのかも知れないが、人は集まっていた。農村部だけでなく、街の人達も結構見かける。


「なぁ、これ幾らだい?」

「あぁ、領主様が100アルンだって言ってたな」

「ここにあるの全部売ってくれ!」


 じゃが芋を置いてあるブースから大きな声が聞こえてきた。

 一応、農村部の人達には売値をつける様に前もって言っていた。じゃが芋は小さいのは5個、大きいのは3個盛りにしている。


「全部かよ! すまねぇメイドさん、ちょっと来てくんない?」

「はい、聞こえておりました。全部で15皿になりますので1500アルンになります」


 農村部の人達は計算は勿論の事、読み書きが出来ない人が殆どだ。


「おぉ!!、後ろにいたのかよ」

「驚かせたのなら申し訳ございません。さて、お客様。これだけの量をどうやってお持ち帰りに?」

「いや、大丈夫だ。収納袋を持っている」

「左様でございましたか。要らぬ事を申し上げました」


 思っていたより上手くまわっているみたいだ。直営店の方もそれなりに人が集まっている。

 それも女性服の売場だ。


 先程のじゃが芋を出していた男は売上を持って酒売場へと足を運んでいる。

 

「坊や、熱いから気を付けて食べるんだよ。もっと食べたかったら、お母さんに言って買って貰うんだよ」


 農村部の横の繋がりは半端ない。今も1人の女性が子供に自分が買ったタコ焼を分け与えている。

 少年はカフェに座っている女性の元へと走って行ってタコ焼屋を指差している。少年の声は聞こえないけれど多分ねだっているのだろう。


 母親らしき女性の服装は農村部のそれではなかった。噂を聞きつけてやって来たのが伺える。


「なかなか良い感じですね。其なりにお金が動いています」

「この賑わいも2、3日です。その後は我慢が続くと思いますよ。

 後は、農村部の人達が勝手に物を売りに行かないように注意を促してください。この敷地内だから、売買が出来るという事を知らないと思いますから」


 このマーケットの中は商業ギルドに加入している私達がいるから農村部の人達は商品を売る事が出来る。

 これが売れるからといって、もし荷台等に乗せて街に売りに行くと商業ギルドの取り決めの違反者として罰金が課せられる。


「そうですね、マリアさんに伝えておきましょう」

「ん、マリアさん?」

「えぇ、騎士爵の娘さんで農村部の男性と結婚している人です。読み書き、計算が出来るので農村部の纏め役を任せております」


 ふ~ん、そんな人がいるんだ。だったら領内限定で農業ギルドみたいなのを作るのもありかもしれない。





 マーケットが出来て6日目の夜にアルフレッドが領主邸を訪ねてきた。


「領主様にはご機嫌麗しゅ───」

「貴族の挨拶なんて要らないよ。どしたの?」


 私が応接室に入るなり立ち上がって挨拶をしてくるアルフレッドを止める。


「───! 貴族女性の概念が壊されていますね。目のやり場に困ります」


 今の私の格好はキャミソールにショートパンツ姿で、ナイトブラの肩紐は丸見えだった。

 服の種類に至っては前世とはあまり変わりないからね。材質がシルクか木綿、もしくは魔物の革といったぐらいでデザインなんかも似たり寄ったりだったりする。

 そのくせ、パーティードレスに至っては中世ヨーロッパ並のゴテゴテした物になっている。


「アルじゃなかったらこんな格好で出てこないんだけどね。同じ日本人じゃん。

 ……あれっ? もしかして、アルってチェリーなの?」

「……」

「陛下が言ってたよ~。無言は肯定とみなすって!」

「ち、違います! 前世で1回だけ……」


 顔を赤くして俯いてしまった。苛めすぎたか……。


「ふ~ん、こっちじゃチェリーなんだね。

 子爵の息子だよね、当て女は宛がわれなかったの?」

「あ、兄貴達はあったみたいだけど。僕は余程の事がない限り家督を継ぐ事はないですから……。

 そ、そんな事より、お願いに伺いました。あの場所で継続的にカフェをやらせてもらいたいのですが」


 やっぱり当て女って実際にあるんだ。其なりにイケメンなのにねぇ~。何がいけないんだろう?

 初日の挨拶なんかもジョークを交えた軽い感じだったし、見た目はそれなり……。

 考えられるのは────


「ヘタレチキンか!」

「い、いきなりディスられたんですけど。次が決まってるのでしょうか?」

「えっ、何? ごめん、話し聞いてなかった」

「だから、あの場所で継続的にカフェを出来ませんか?」

「ん、良いよ。何かそれなりに流行ってたみたいだし、そっちで採算が取れるなら続けてくれても構わないよ」


 そう、意外とカフェが流行っているのだ。仕事の休憩に男達が集まったり、おやつ時に子供を連れてくる母親が来たりしている。

 反対に屋台の方が後半飽きられたのか、客足は鈍っている様に見えた。


「正直どれぐらい利益出てるの?」

「売上は昨日までで100000アルン程ですね」


 ん~、それだと1ヶ月で単純に400000アルンぐらいで、セバスチャンの人件費を差し引くと半分の200000アルン?

 そこから材料費を引くと100000アルンぐらいか。


「きつくない? 1ヶ月の利益として100000アルンぐらいしか残らないでしょ。

 場所も無料で貸すって訳にいかないから利益の1割を貰うとしても、自分の生活費残らないんじゃない」

「そんな事ないですよ。

 ずっとこのままの売上が続かないとしても売上で月300000アルンは見込めるかと。

 そこから材料費を引いても150000アルンから200000アルンは残ります」

「セバスチャンの人件費は?」

「セチャは実家から給料を貰っています。別に僕は勘当されたとかじゃありませんから。

 それにここだとセチャの実家があるので、住む所に困らないのです」


 そう言えば、セバスチャンさんって家名あったよね。確かなんちゃらトーフォルンだったっけ?


「セチャはヘンリートーフォルン男爵家の家長です。兄が家督を継いでいたらしいのですが、トライデント元伯爵と揉めまして……、家族全員が殺されました。

 それでセチャが家督を継いだのですが、執事を辞めないと言って、まだ家督は譲っていませんが息子のシュルツ卿が実務を行っていますね」


 元伯爵って事は今は伯爵じゃないって事か。

 今度詳しい事、サイモンさんに聞いてみよう。


「取り敢えず、事情はわかったわ。じゃあ、テナント料は利益の1割で1ヶ月単位で契約しましょう。

 辞める時は1ヶ月前に言ってね。急に辞めちゃうとお客さんが困るからね」

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急に異世界に転移したと思ったら、エロ駄女神の陰謀でした 神楽蜜柑 @saeko-kagura

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