第7話

「そうでもあり、そうでもない。ただの代理だよ、私は。それにしても夜鷹は中々のやつを連れてきたなァ……。でも、やはりどいつもこいつも中二病患者だ。」

「訳を、聞かせてください。なんで私が連れてこられたのか。ヒナの話を聞くと、私たちのような歳の子数人が同時にこの世界に来てる。なのに私だけ後追いだった。」

「ヒナって言ったっけ、貴女。貴女ではただ無惨に殺されただけだったからね。」

淡々と、おぞましい事を言ってくるな、こいつ。

そう思い、なんとか立ち上がって臨戦体勢を取ろうとするも、消耗でよろけてしまう。

「そう警戒しないでくれ。もう終わりが近いんだこの戦いは。そもそももう生き残りはこの3人だけだったが、流石にあの荒くれが改心も、人の心に触れようともせずに最後の1人になるのは避けたかった。かと言って、もう1人は戦う意思が無い。もとより自分は何をしてもダメだと思っている。」

「!?」

ヒナの肩が跳ねる。図星だったのか、より一層鴉を強く睨みつけている。

「こいつみたいに傲慢すぎるのも良く無いが、あまりネガになりすぎるのも考えものって事だ。中二病って知ってるかい?思春期特有の根拠のない自信からの背伸びが目立つ時期だ。」

その単語自体はよく聞く、周りでもよくイジりなどにもつかわれているのを覚えている。

「カナデと言ったかな、君は。君は来たばかりだからわからないだろうけど、ヒナと一緒に来た子の中には典型的な中二病、所謂邪気眼系のような子もいたさ。普段聞かない音楽を聴いて時代の先端を行ってる気になってたり、多少ニュースがわかっただけで世界を知った気になったりした子だって居る。そういう人たちを、戦わせないといけない状況にして交流させるのが目的であるだった。」

疑問がふと浮かぶ、じゃあなぜあんな物騒な文言があったのか。もう少し言葉はあったんじゃ無いかと

「文言を歪めたのは、さっきの赫魅ちゃんだよ。まあわたしのこのやり方自体はちょっと頭悪いと思うかもだけど。これまでこの世界を通った子達は無事平和的に全員で帰れた。その過程で魔法の類は使えなくなっていく、ただ、今回はペースが早かった。それにあの傍若無人っぷりでは周りは止められないと思って私が出張ったのさ。」

「それじゃあ才の話って。」

「あぁ、それは嘘じゃ無い。だけど、みんなが求めてるような全知全能、万能となれるようなそんなものではないよ。」

取り敢えず私にこれ以上攻撃の意思はないし、移動しようか、そう言われて私はヒナと肩を組み森を出ることにした。

森を出ると、見覚えのある草原へと出た。初めてこの世界に投げ出された時の場所だ。

「まぶっ……。」

「そういえば夜鷹は夜行性だった、こんな快晴具合じゃ眩しいのは当然だ。普段昼は森の枝で休んでるからね。案外木の上は歩けたのはそういうことさ。」

鴉と呼ばれた女性は、あの荘厳な言葉を発したとは思えないくらい柔和な表情になっていて、同じ人文だとは到底思えなかった。

「さて、もうちょい説明させてもらうけど、君たちが得られるような才は、みんなが思ってるほどファンタジーじみたものではない。だが、今後の世の中を生きるには役立つものだ。言ってしまえば、この戦いはあくまで心構えを作るための前座だ。簡単に言えば中二病のような空回りの時期を引きずるであろう子達を、他の同世代の子達と引き合わせコミュニケーションを取らせるためのものだ。イキってるまんま新生活デビューなんて、溜まったものじゃないだろうしね。さて、その話を踏まえた上で君たちは何を望む?」

説明が終わったかと思えばいきなり問いが飛んできた。

「私は……わからない。だけど、見に余るような才能はいらない。みんなと笑えることができれば、それで。」

「ヒナ……。」

「色々諦めが早かったからね友達を作ることも何もかもすぐ諦めたから、常に学校ではぼっちだった。だけど、次は諦めたくない。繋がりたい、みんなと。」

「なるほどね。合格としようか。」

そして、私たちの体は突如として中空に浮く。

「貴方たちとまた出会えるのを、楽しみにしてるよ。」

鴉の姿が徐々に遠くなり、そして


私は、自室のベランダにいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鳥と魔女と中二病な私たち 村崎 紫 @The_field

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ