第64話


デコイの魔法によってモンスターを一箇所に集め、ソフィアの魔法で掃討させた。


すると、森の奥から四人の魔族が姿を表した。


全身から爆発的なさっきを放ちながら、こちらへと近づいてくる。


「魔族…!」


「マジかよ!?」


「こ、こっちにくるわ!!」


ソフィア、ガレス、エレナが慌てふためき、身構える。


「やはり今回も魔族が首謀者か」


俺もいつ攻撃されてもいいように、視線を低くして迎撃体制をとる。


『無駄な問答はいらない』


『手加減もしない』


『今度こそ我らの圧倒的な魔力を持って…』


『跡形もなく消し去ってやる』


森から現れた魔族は距離20メートルと言うところまで接近してくると、足を止め、魔法陣を構築し始めた。


「何あれっ!?」


ソフィアが目を見張る。


無理もない。


信じられないほどの魔力が、魔法陣に注がれているからだ。


あまりの魔力濃度に、紫紺の残滓が空中に漂っているのが視認できる。


「おいおいおい!?なんか不味いんじゃないか!?」


「ものすごい嫌な予感がするんですけど…」


ガレスとエレナが半歩後ずさる。


そんな中、俺は3人の前に出た。


「おそらく、大量の魔力を注ぎ込んだ魔法を放とうとしている。3人とも下がっていてくれ」


「何をするつもりだ?アルト」


「障壁魔法で防ぐ。成功するかは分からないが、やってみるしかない」


「ちょ!?アルト!?」


「逃げましょう!!防げないんだったら、避けたほうが確実でしょう!?」


ソフィアとエレナがそういうが、俺は首を振った。


「攻撃範囲的に間に合わないだろう。それに、俺たちが散れば、村人たちに危険が及ぶ」


周囲には、モンスターに襲われ、怪我をしてその場から動けない村人がたくさんいる。


彼らにまで攻撃の余波が及ばないようにするためにも、俺たちがこの場に留まる必要がある。


俺たちが一箇所に固まっていれば…彼らは確実に俺たちを仕留めるために、魔法の攻撃範囲を狭め、局所的な威力を高めるだろう。


つまり、村人の命を救い、かつ魔族の攻撃を無効化するにはこの場で魔法を封殺する以外に方法がない。


「アルト!さっき無茶するなとあれほど…」


「無茶じゃない。百パーセントではないが、防ぎ切れる自信はある。心配してくれるのは嬉しいが、これしか方法がないのも事実だ。頼む。俺を信じてくれないか?」


「「「…」」」


必死で訴えると、3人が顔を見合わせた。


やがて。


「わかった。お前を信じようアルト」


「ったく、仕方がないわね」


「アルト。あなたを信じる。私たちもこの場にいるわ」


3人は、俺が魔族の魔法を防ぎ切れる方に賭けてくれたようだ。


俺は仲間の信頼を頼もしく思いながら、障壁魔法を展開する。


やがて、魔族が巨大な魔法陣を完成させた。


『これで終わりだ』


『一発で仕留める』


『これだけ巨大な魔法であれば、小細工など通用しない』


『肉片の一つも残さず消し飛べ。人間ども!』


魔法が放たれた。


轟音、衝撃波を巻き起こし、襲いかかってくる。


「うおおおおおおっ!!!」


俺は体内の全魔力を障壁魔法に注ぎ込んだ。

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あれ?気づいたら俺を役立たずだと言って追放したSランクパーティーが崩壊してて、逆に温かく迎え入れてくれたAランクパーティーがSランクに昇格していたんですが? taki @taki210

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