最終話




「〇〇さん行っちゃいましたね」

その美容院の店員の一人が今、その男が店から出て行ったのを見てその男担当の人に声をかけた。


「そうだね。行ってしまわれたね」


「いいんですか? 元に戻しちゃって?」


「それは俺が決めることじゃないよ。彼が決めることだ。でもね…」


「?」


「彼はきっとまたここに戻ってくるよ。一週間保たないんじゃないかな。顔を真っ青にしてやってくるはずだ」


「どうしてわかるんです?」


「いや、何、少し考えればわかることだ。嫌いな自分に戻ってやり直し?出来ないからこの美容院に頼ったんだろ?それなのに今からやっても出来るはずがない。彼は自信がなく我慢強さもない小心者に逆戻りしたんだ。絶対に自分が嫌いになってまたここに戻ってくるはずだ。

まあ、俺は全く一向に構わんけどね。それだけお金がやってくるわけだ」


「先輩はろくな死に方しないと思いますよ」


「大丈夫、金が貰えるなら少しくらい賭けをするさ。最後に一つ言うにはさ。

『自分』を捨てた者には、永遠に『自分』を好きになることはないんだ。」




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美容院 縁の下 ワタル @wataru56

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