美容院

縁の下 ワタル

第1話


「髪が伸びてきたな」


最近、目が隠れるほど髪の毛が伸びてきた。そろそろ散髪屋なり美容院なりに行く頃合いだろう。

しかし、俺は髪を切りに行くということに億劫になっていた。

理由は二つほど存在する。

一つは行きつけの散髪屋がないこと。最近、ここら辺に引っ越ししてきた大学生である俺には行きつけの散髪屋が存在しない。自分が慣れ親しんだお店じゃないと、どうにも店員の腕、話しやすさが心配になってくる。

二つ目はお金だ。

「一狩り行こうぜ」でお馴染みのあのゲームソフトとそのためのハードを購入し、かなりの出費が出ている。その中で散髪屋の2500円とか3000円は俺の財布にかなりのダメージを与えてくるのだ。

なにより怖いのは親に無断でゲーム機を購入したことがバレることだ。特に母は俺が手数料のかかるコンビニ銀行に一、二回行っただけで、「最近、◯◯◯銀行よく使いますね」と小言を言ってくるほど敏感である。そして、通帳は母が管理しているため、必然的に口座の引き出し金額は確実に見られてしまうのだ。

説教はもう俺が大学生であるためにないとしても、小言の一つ二つは言われるに決まっている。

出来ればそれは避けたいところ。

であるけれども、結局のところ俺は散髪屋なり美容院なりに行くことにした。

髪の毛の鬱陶しさと周りからの視線を気にしないではいられなかったのだ。



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