佐々木の憂鬱
相 合唆
第1話
北海道の中堅都市の市役所
今日は木曜日の15時。業務がなぜか手につかない。目は、入り口の方に彷徨う。
スーッと、60代後半か70代の、じじいが入ってくる。
白髪まじりの、貧相な、中肉やや小柄の、どこにでもいるじじいだ。
誰の目にも入らない石ころの様なじじいだが、佐々木は、一瞬の熱い眼差しを送り、唾を飲み込み、席を立つ。
じじいは、佐々木に一瞥を向けることなく、市役所のトイレに入る。佐々木は、それを追いかける。
トイレの個室に入ると、佐々木は、じじいに1万円を握らせる。
じじいは、受け取り「せっかちじゃから、パンツは脱いで来たんじゃ。」と、
佐々木は、ベルトを外しながら、(分かってるんだ、分かってるんだが。)と、
〜回想〜
2ヶ月前、慌てふためきながら、じじいが市役所に相談室に来た。佐々木は当番であった。
じじい、「なななな、何とか、この電話を代わってくだせえ。」
携帯電話からは、おいこらてめえの怒号が溢れ出していた。
梲(うだつ)が上がらないじじいを敬遠したいが、勢いに呑まれて、佐々木は、意味が分からずじじいの携帯電話に出る。
どうやら、じじいは闇金から金を借りていた様だ。経験が豊富な、クレバーな佐々木は、闇金のニイちゃんを、説き伏せ、じじいを救った。
じじい「本当にありがとうございます。私の名前は、竿好男(さお よしお)と言います。お礼をしたい。是非お名前を。」
佐々木「佐々木です。」
じじい「下の名前は。」
佐々木は、不審に思った。なぜフルネームを。
じじい「いや、イクときに、下の名前を言った方が、ええじゃろからして。」
(こいつはキチガイ)と、佐々木は瞬時に判断し、丁寧に追い払おうとする。
じじいは、佐々木の心情を察知し、必死に、説得する。
「ワ、ワシの唯一の、自慢なんじゃ。」
と、ジジイは、相談室の個室でズボンを脱ぎ始める。
(蹴り倒そうか。)佐々木は迷った。
相談室で老齢のじじいを蹴り倒すと、後々厄介そうだ。
佐々木は止まった(とどまった)が、しかし、蹴り倒した方が、良かった。
「いい加減にしないと、怒りますよ。」と、佐々木は丁寧ながら低い声で圧した。
「み、見るだけ、一回見るだけでも、わしのけつマンコを見てくれれば。なら、大人しく帰るから。」
じじいは、涙目で訴えてきた。
「一回見るだけですよ。」
何で、自分がじじいのけつの穴を見なくちゃいけないのか。いや、見たフリしてやり過ごすか。佐々木はそう判断し、じじいに話を合わせる。
ズボンを下ろすと、じじいは後ろをむき、屈んで
「ほいっ♡」と、
佐々木は、目を背け「はい、見ました。じゃあ、お帰りください。」と、
「いや、佐々木さんは、見ておらん。わしぐらいになると、けつマンコが視線を感じるんじゃ。視線来ん。」
(チっ)佐々木は、仕方なくじじいのけつを見た。
(薔薇が咲いている!?)
佐々木は、見入った。
じじいのケツに薔薇というギャップが、佐々木を日常の中の非日常に引き摺り込む。
〜回想〜
悦子先生「薔薇綺麗でしょう。」
佐々木「はっ、はい。(先生の方が・・・もっと綺麗・だな・・)」
佐々木は、小学校の花壇係。副担当の悦子先生と、花壇の手入れを行う。少し早熟な佐々木は、肉感的な悦子先生との作業を目的に、この係となった。
佐々木「痛って。」
薔薇の刺に引っかかって、人差し指に傷がつき、少し血が滲んだ。
悦子先生「あら。大丈夫?(薔薇は)気をつけて、優しく扱って(あつかって)ね♡。・・・パクっ。」
(アッー。)
佐々木の指が、生暖かい悦子先生の唇に覆われる。身動き取れない佐々木。しかし、指の先に全神経が集中され、最初の形容し難い成熟したメスの粘膜の感覚が、佐々木の未熟な脳に刷り込まれる。
そして、未熟な下半身が不意に勃起した。
・・・・・・・
じじいのピンクの花弁が悦子先生の唇に重なり、花弁の奥の漆黒の穴が、パクパクと何とも言えぬ感で誘う。
じじい「(薔薇は)気をつけて、優しく扱って(あつかって)ね♡。(肛門 パクパク)」
佐々木は、不意に、勃起した。何故悦子先生の言葉を知っているのか。
小学校時代から夢見た、悦子先生の口唇が目の前に。
「・・・登別市役所からのお知らせです。新型コロナの・・・。」
職場のアナウンスが流れる中、一心不乱に、悦子先生の唇に重ねて、じじいのケツマンコを堪能する佐々木。
・・・・・
「今日は、ただじゃが、次からは、1万円じゃ。」
激しい後悔に、苛まれ(さいなまれ)、嘔吐く(えずく)佐々木に対して、じじいは、身支度を整えながら、当然の様に伝える。
「あと、下の名前を教えるのが条件じゃ。では、また。」
そう言い残すと、じじいは足早に去って行った。
(二度とあるか。)佐々木は、早く忘れたかった。
・・・・・・
「うっ、うっ、やっくん(佐々木の下の名)。わしイク。・・・い、一緒じゃぞ。」
にしめた色の、手拭いで口を押さえながら、じじいから声を掛けられる。
佐々木は、無言で、しかし抽送を早めて、じじいを絶頂に導く。
「やっくん。・・・」
じじいの声を合図に、果てる途中から、佐々木は、またとてつもない後悔の念に、憔悴し始める。
じじい「・・・年度末はお世話になりました。次年度もよろしく。」と、トイレを後にする。
(今年度で、終わりだ。糞爺。)と内心毒づく佐々木。
しかし半年続く、この関係はまだまだ続くのであった。
~完~
佐々木の憂鬱 相 合唆 @ookuwa
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