【10】
目覚めた。明るい。朝だ。
携帯のアラームを止め、身体を起こす。
夢を見ていたような気がする。楽しい夢だったような気がするが、内容をうまく思い出せない。
まあ、いい。夢なんて、そんなものだろう。
布団をのけて、ベッドから起き上がる
さあ、一日を始めなければ。
「おお、サトルっ」
公園のベンチに座っていたアキラが、自分を見るなり笑顔で駆け寄ってきた。
「おいおい、まだ20分前だぞ。早すぎるだろ」
「なんだよぉ、サトルも早く来てるじゃんか」
「ハハ、そうだな」
「あっ、そうそう」
アキラはゴソゴソと、バッグからペットボトルを二つ取り出した。
「さっき買っといたんだ。メロンソーダと、クリームメロンソーダ、どっちがいい?」
「さっきって、いつ買ったんだよ」
「10分くらい前かなあ」
「なんでそんな早く買ったんだよ。ぬるくなっちゃってるじゃんか」
「ホントだ。うわっ、カバンの中びしょびしょになってる!うわー!」
呆れ顔でアキラを見る。まったく、要領の悪いヤツだ。
「まあいーや。で、どっちがいい?」
「どっちって、どっちも同じだろ。結局メロンソーダだろうが」
「違うよ!クリームなんか邪道だ!普通のメロンソーダの方がうまいに決まってるだろ!」
クリームメロンソーダを手渡される。どうやら選択権は元からなかったようだ。
まあいいさ、とキャップを開けて飲んだ。少しぬるかったが、中々美味い。懐かしい味だ。
「どうしようか。どっか、ファミレスとかでいい?」
「ああ、いいよ。金欠だしな」
「いよっ!失業者!」
「うるせえ!お前よりはマシだぞ!今月からなんだから!」
「ハハハ!分かってるよ」
二人で、公園を出た。公園で待ち合わせなんて、中学生の時以来だったんじゃないだろうか。
「なあ、ペンネーム何にする?」
「もう決めるのかよ。後でいいだろ」
「そうだな。あっ、それよりさあ。俺、ずっと気になってたことがあるんだけどさ」
「何だよ?」
「グングニルってさ、剣じゃなくて槍じゃね?」
「・・・いいんだよ!細かいことは!」
「うわっ!いてっ!やめろよぉっ!」
逃げるアキラを追いかけて、走った。周りから怪訝な目で見られたが、そんなことは、もうどうでもよかった。
灰色一面の空の向こう、雲の切れ間から、僅かに青空が覗いていた。
♰ STILL DREAMING ♰ 椎葉伊作 @siibaisaku6902
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