おやきよ、永遠なれ
11/4(金)11:00
静かな山合いの県道31号からさらに33号へ。
安曇野方面に向かう途中、道の駅「ぽかぽかランド
ネットが使えないので、こういう想定外の問題に直面するのも、おやき狩りの旅の難しさと言える。
う~む、さすがに三日目。新フレーバーとなると苦しくなってきた。
仕方あるまい。
残すはBIG3のうちのツートップ「あんこ」「野沢菜」だ。
これまでの道中、出来てから少し時間が経ったものや、保温機であたためられたものを食べたりしたが、是非ともツートップは焼き立てが食べたい。
安曇野に行くなら、あそこで買うのだ。
安曇野おやき村。
2011年に旅行をしていた際に、寄ったところだ。
牧場風のログハウスがある農園のような広大な敷地の中に、払い下げの古い遮断機や電車の車両が置かれていたり、看板イラストの子供たちがおやきを食べていたり、動物の絵もあったりと、なかなかシュールなところだ。
自家製おやきだけでなく、県内のおやき業者の製品が一手に集まり、冷凍品の持ち帰りだけでなく、その場で食べるなら敷地内にある薪のストーブで、アツアツに焼いてくれるというありがたいサービス付きだと記憶している。
余談だが、この2011年の旅行はゴールデンウィークに母親と行った。
ペットが居たので我が家を不在にできず、土日とみどりの日(筆者註:現在の昭和の日)を合わせた二泊三日で父親と妹が、憲法記念日からこどもの日までの二泊三日を私と母親の二手に別れ、同じ一台のデジカメを持参し、どちらが楽しい旅をしてきたかRCA端子でテレビに繋げてスライドショーをしながら晩酌をしたのだった。仲良し一家である。
話を戻す。
まだまだ、車内には食べていない予備のおやきがある。しかし、それらは夕飯以降の出番として、ここ安曇野おやき村で敢えてBIG3のツートップに登板してもらい、アツアツの出来立て焼き立てを堪能しようと思う。
目的の場所は、道の駅「池田」から、すぐ近くだったはずだ。よしよし。
同日13:00
すぐ近くの道の駅、ハーブセンター池田に到着した。
しかし、肝心のおやき村が見当たらない。
あんな目立つシュールな施設、見逃すはずがないのに。
間違いなくこの県道51号沿いだと記憶していたのに。
そこにあったとおぼしき場所は、なんかデッカいスーパーになってる気がした。
嫌な予感がする……。
ここで登場するのはまたもスマホだ。情報を収集してみる。
地元の建設会社さんが食品事業部として運営していた「安曇野おやき村」。
職員の高齢化に伴い、事業を廃止し平成24年をもって村を閉鎖していた。
これも時代の流れである。
平成24年ってことは、お邪魔した翌年には閉鎖していたのだ。
薪ストーブで持てないくらいにアツアツに焼けたおやきの香ばしい味が、忘れられない。R.I.P安曇野おやき村。
ところが、ここからほどなく県道306号線に道の駅「安曇野松川」という所があった。そこで仕切り直ししよう。
予想通りか、神のご加護か。
直売所で、農家のおばぁが作った手作りの総菜たちの中におやき発見。
おやき界のツートップ「野沢菜」「あずき」だ。
おやき村が閉鎖の憂き目にあったので、どうしてもBIG3への遺恨が残っていた。
手作りで、いかにもな田舎おやきが食べたかったのだが、まさにそれといった風情で、これはどう見ても美味そうではないか。
今日は常におやきの女神が微笑んでくれるようだ。
早速ゲット。
皮は厚めで堅く、焼きの最中に自然に割れたと思われるヒビが何とも言えない。
しかし、念願のBIG3だが、食べるのはいったん置いておく。まだ温かいものの、やはり出来立てと呼べるには少し冷めていたので、なんとか再加熱する方法を確立させてから頂戴したい。
そこで今朝、道の駅「おがわ」で買った青菜を食べることにした。
この青菜、ネットで調べても全く出てこない。
長野県の野沢菜のように、有名なのは山形
また、自生する野草で食することができるものを総称して「青菜」と呼ぶこともあるようだ。
う~む、長野県で青菜と言ったら、もしかしたら、のざ……
仕方ない。野沢菜も混ざっているのかもしれないが商品名も「青菜」だし、何らかの「青菜」を標ぼうしているのなら、それはもう「青菜」なのだ。
細かく刻んだ青菜に細切りのニンジンも含まれている。味噌ベースの味付けと、シャキシャキとした歯触りが最高だ。
そして、安曇野と言えば、大王わさび農場さん。
なんとなく気づけばもう5回くらい来てる。
穂高神社を参拝して、大王わさび農場さんに寄るのがワンセットだ。
もちろん、今回もお邪魔することにした。
これも予想の
わさびの葉、茎、あとニンジンとなんらかのキノコ(味音痴)をわさび醤油かなにかで味付けしてある。嫌味のない辛さ。これも大変な美味。
腹ごなしに、わさび農場を散策していたら小腹が減るという、妙ちきりんな状況になったので、運転前におやきを追加することにした。
ホントに腹もちが良くない、おやきは。
中身が野菜ばっかりだから仕方ないといえば仕方ない。
今朝いろは堂さんで購入した「切り干し大根」もいただこう。
これもBIG3と言えるが、野沢菜とあんこを購入し登板を控えている今となっては、もはや中ボスクラスだろう。
最後に道の駅「ほりがねの里」で物産センターをのぞいてみるも、さすがにもはや新たなフレーバーは見つけられず、安曇野でのおやき狩りを終了することにした。
同日16:20
明日の午後には友人たちと合流し、彼らを乗せる予定だ。
なので、最低限の礼儀というか世間体としてセルフスタンドで愛車を洗車しつつ、スーパーで晩酌を買い、さらにコインランドリーで溜まった洗濯ものを片づける余裕まで生まれた。
この国道147号沿いには、上記の店舗がたくさんあって難儀はしなかった。
おまけにホテルまでが割と近かったおかげで、時間はたっぷりとあった。
この旅の間は満腹にもならず、気を抜くと常に小腹が空いている状態。
コインランドリーで洗濯乾燥を待ってる間に「ひじき」を食べてしまおう。
うん……ひじきだね。
醤油味のひじきだよ、これは。
想像通りのひじきで、想像以上にひじきだった。
あまりに奇をてらったフレーバーだと、皮との相性だったり、フレーバーそのものの存在感の強さが際立って、おやきと呼ぶには微妙なものもあるので、長野県の業者の皆様には是非ご一考願いたい。
ようやっと夕闇があたりを覆い、良い頃合いだということでホテルに突入。
車内にあった大量のおやき達が、今宵の晩御飯だ。
ホテルにチェックインして、夕飯1個め。
まずはとろ~り「チーズ」。
前日の夕方、長野駅構内MIDORIさんで購入したもので、出来立てアツアツでなければチーズは固まっていたことだろう。では、なぜこんなにとろ~りしているかというと、今日お邪魔したルートインホテル安曇野
小麦粉のおやき皮にとろ~りチーズ。これはつまりチーズフォンデュだ。
しめじとベーコン、黒コショウが入っており、中身も美味だ。
決してカルボナーラではない。立派な「チーズ」だ。
次は「ふきみそ」。
ふきと言うと春のイメージだが、それは天然もので、ハウスものなら冬も出回っているメジャーな野草らしい。
これも白みそと和えてあるが、長野さんは白みそ文化なのだろうか。だが、ふきのかすかな苦みを甘い白みそが打ち消してくれて、絶妙なお味だった。
昨日、道の駅「おぶせ」で断念したものの、長野駅でゲットした「栗あん」。
「りんご」「かぼちゃ」に次ぐ甘いスイーツ系おやきの登場に、デザートには最適でほっとする。
そして、BIG3のツートップのまだ「あんこ」も控えている。これは嬉しい。
明けて11/5(土)。
いよいよ最終日だ。
今日も朝ごはんの時間だ。
これから食べるおやき達を手に、電子レンジまでいそいそと向かう。
まずは昨日、鬼無里のいろは堂さんで購入した「野菜ミックス」。
主にニンジン、キャベツは確認できる。あとは茎か葉のようなシャキシャキ物体。ちなみに旅の後で調べたらもちろん野沢菜も入っていた。
しかし、商品名が野菜ミックスを謳っている以上は、野菜ミックスなのである。
次は「あざみ」。
キク科の野草で、どこにでも生える
部位はあちこち食べられるが、根っこだけはアクが強いみたいだ。若芽を天ぷらにしたりしていただくとのこと。
中身は茹でたあざみを白みそで和えてあったものだ。白みそ率高し。
さてさて。
朝ごはんの最後に満を持して登場するのは、BIG3の巨頭、ベテラン中の大ベテラン、大御所「野沢菜」師匠だ。
この企画も4日目。これがようやく食べられたという感動で、美味さもひとしお。
やはり長野県が生んだソウルフードの奇跡の融合体、野沢菜おやき。
こんな旅の縛りが無ければ、野沢菜師匠だけを何個も食べたというのに一回きりというのが悔やまれる。
しかし、正味四日間もおやきしか食べていないとどうだ?
寝起きの身体が少しばかり軽いような気がするではないか。
具材が野菜や野草ばかりでひとつ200kcal弱。甘いものとお肉はわずか。
お通じと肌艶は良くなった。
さあ。いよいよ残りわずか。
この日は東京から友人がやってきて、美食と温泉という、全く別の旅になる。
13時着の特急あずさ、松本駅で彼らと合流するそれまでが、おやき狩りだ。
朝8時にホテルを出て、国道158号で
松本駅に向かう予定もあるので、あまり探索もできず、来た道を戻る。
現在時刻は11時。いったんおやつだね。
途中で休憩がてら、いよいよツートップの片割れ、あんこを食べてみる。
商品名は「あずき」だけども。
……うん、あったかいほうが絶対よかったな。
これこそレンジのあるホテルで食べるべきだったわ。
車で走るうちに松本駅に到着。
ちょっと早く着いちゃったな。
入場券だけ買って駅構内をブラつくが、もう4日間のうちにクセになってしまった、おやき探しをしてしまうのだった。
そうしたら、最後の最後にダメ押しで「牛すじ」発見。
しかもレアなお肉系だ。
黒こんにゃくの細切り、たまねぎ等の野菜に牛すじが入っている。東京のもつ煮のような白みそではなく名古屋のどて煮に近い、赤みそのような濃いめ味付け。
キーマカレーとトンちゃん焼き以来のお肉に、身体が大喜びする。人間は狩猟民族なんだな、やっぱ。私はベジタリアンにはなれない。
そして13時。定刻通りに特急あずさは松本駅に到着した。
これにておやきしか食べてはいけない企画終了。
ありがとう、長野県。ありがとう、おやき。
また来ます!
食べたおやき33種類(購入順)
キーマカレー
イタリアン
こねつけ
しめじ
かぼちゃ
釜めし
じゃがバタ(泣きのじゃがいも含む)
たこやき
きんぴらごぼう
キャベツ
とうふ
ぼたごしょう
もろこし
トンちゃん焼き
行者にんにく
山菜ミックス
なす
まいたけ
あざみ
栗あん
ねぎみそ
チーズ
ひじき
りんご
おこわ
切りぼし大根
野菜ミックス
青菜
おから
あずき
野沢菜
わさび
牛すじ
――以上は、2016年11月に実施した旅行を基に、某・掲示板で掲載していた日記を加筆修正、再編集してお届けしたものである。
当時の時事ネタなんかもそのまま掲載されており、やや小恥ずかしくもある。
既に無くなった店舗や露店もあるだろうし、今は生産中止になっているフレーバーもあるかもしれない。これも旅の記録と言えるだろう。
また、当時は新型コロナウィルスなどという単語もなく、日本中を自由に往来できた時代だった。
いつの日かウィルスが抑制され、この文末も過去の記録として日本中を自由に行き来している時代にまた読めることを願ってやまない。
長野県にいる間はとにかく「おやき」しか食べてはいけない旅行の話 邑楽 じゅん @heinrich1077
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