この小説の魅力を、一言でお伝えできるわけがねぇ

まずはじめに断っておくと、僕はSFというジャンルにあまり明るくありません。ですのでこれから書くレビューは、僕の無学さが露呈する恥ずかしいものになってしまっている恐れがあります。自分は賢い人間だという自覚のある人は、こんなのを読むよりも先に作品の方をお読みになっていただいて、それから、僕よりもいいレビューを書いたらいいと思います。なんだか煽っているような書き出しになりました。そんなつもりは全くないんですけども。

他のレビューでも触れられていますが、モブという存在の概念や設定がしっかりと作り込まれていて、非常に説得力がありました。僕からあまり仔細を語ることはしませんが、この辺りのディテールの精密さは1ー1を読めばすぐに感じられると思います。ライトな読み味をしていながら、創作物における「メイン」「モブ」という役割について、しみじみ考えさせられる作品のように思います。創作の世界の話だけでなく、我々が過ごしてる現実世界なんてものも自分の認識でしかないわけで……などなど、なにか色々哲学的なアレすら考えちゃいますね。そのくらい、引き込まれるお話でした。自分としては「レポート」の設定が結構、おもろ〜、となりました。詳しくは、作中でね。

百合子が他の漫画作品の世界に出張することによって、作品全体を通して物語の背景が目まぐるしく移り変わっていきます。丁寧な描写に難解さはなく、読んでいて退屈しません。様々なジャンルを行き来し、その都度、分析し演じる百合子だからこそ感じる「あるある」的なモノローグには笑わされます。そんな百合子ですらしんどい現場は、思わず読んでいるこっちが苦い顔になっちゃうくらい描写にキレがあり、それでもやり遂げてしまう百合子の凄まじいモブ根性には、脱帽ですね。

それから、この作者さんの作品を好んで読まれる方であれば、十中八九「おっ」となるであろうシーンがあります。作品の題材的に、大方、察しはつくかと思いますね。わりと後半ですので、うきうきしながら読むと良いんじゃないでしょうか。意味がわからなかった人は、この人が書かれている小説を全部読んだら良いと思います。読めよ。ほら。

似たような感想が続きますが、この作者さん特有の過激な言い回しが良いですね。クセになります。とある人物の口調は、ただただ過激なだけでなく、その根拠や背景がきちんと描写されていて、なるほどなぁって唸っちゃいました。

ネット小説どころか紙の小説すら年単位で読んでいなかったので、最後まで読めるかなぁって思っていたんですが。そんなものは杞憂でしたね。とても面白かったです。しかしながら、面白いだけでは終わらない、たくさんの魅力に溢れる小説です。

僕はこれを夜更しして読んでいたら一睡もせずに会社に行くことになりました。賢い皆さんは、予定のない日にゆっくり読むのがよいでしょう。言われんでもそうするってか。そりゃそうだ。まぁ読みやすいし、急がなくても、2時間くらいあったら最後まで読めちゃうんじゃないでしょうか。損はさせません。ぜひ。

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