バルキッシュ、ジ……え、何? の掴みが最強のお手軽短編小説

このお話は「意味のないものが嫌いだ」という主人公のモノローグから始まります。そして、タイトルでもありこの作品において非常に重大なキーワードでもある「バルキッシュジンジーグラウド」、この言葉自体には、特に深い意味はありません。これは作者の造語なので、検索したところで何も出てきやしません。絶対僕と同じことして「???」ってなった人、たくさんいる。

まずタイトルの掴みが強いです。「え、今なんつった?」とついつい興味を惹かれてしまうその文字列は、それこそ掃いて捨てるほど溢れ返るweb小説の作品群の中でも異質な輝きで読者の目を集めます。

作品内には、バルキッシュジンジーグラウドを含め聞き慣れない単語が多数登場します。当然その全てが無意味な言葉でありながら、読みながら口にすると妙にハマるというか、語感が素晴らしく良いんですよね。そんな非日常的な言葉も手伝い、とっても頭に残って中々離れないお話が出来上がっています。

そして、それらの言葉が織りなす二人の奇妙で淡い関係の変わり方が良いです。あんまり語るとこの作品の魅力を削いでしまうので控えますが、心に刺さると言うよりは、硬いもので頭を思い切りぶん殴られているような感覚の残る読後感でした。

しばらくは虚ろな目で「バルキッシュジンジーグラウド……」と呟くマシンになること必至です。僕はなりました。読みやすい文体の上に字数も少なめなので、おススメですね。

バルキッシュジンジーグラウド。

その他のおすすめレビュー

谷野 真大郎さんの他のおすすめレビュー26