(参加作品その9)毒蟲は土に蠢く (児島らせつ様)への応援コメント
烏川様
この度は、感想をどうも有り難うございました。
衒学趣味についての考察などを含め、楽しく、しかも緊張感を持って読ませていただきました。
「紙の本で読みたい」
感覚が古い物書きもどきの私にとって、最高の褒め言葉です!
人生を通じて、褒め言葉とはほとんど縁がないもので、素直に嬉しいです。
この作品は「やっぱ横溝正史だよなー」、「どうせなら、できるだけ史実に基づいた話にしてみるべ!」、「話が勝手に壮大になっていく展開はどうだ」、「生物専攻だったわけだし、生物毒は欠かせないっしょ」といった欲求を満たすべく書いてみた作品です。
また、下調べの段階で、最初から使うと決めていたカンタリジンが中世の伝説の毒薬カンタレッラと偶然結びついたり、これまた登場させようと決めていたイエズス会がカンタレッラを生み出したボルジア家と結びついたりと、さまざまな要素が芋蔓のように勝手に繋がっていくという不思議な経験をした作品でもあります。
正直言いますと、一次選考落選時とは内容がそこそこ変わってしまっています。機会を見つけて、いつかはどこかに再応募しようと目論んで、落選後も時間を見つけては改稿作業を続けてきたためです。
自慢にもなりませんが、諦めの悪さだけは人一倍のようです笑
ただ、自ら目指した方向性なので仕方ないことではある(ある意味本望ではある?)のですが、下読みの方を含めて、読み手の方々にはやや古臭い内容に映るようです。
私がすでにプロ作家で、数作目の作品として発表するならOKなのでしょうが、新人賞となると目新しさ、新鮮さに欠けるのかもしれません。
一般公募の道は険しいです……。
冗長、遅筆、寡作と三拍子が見事に揃った私ですが、今後も少しずつ書き進め、作品をアップしていきたいと思っています。
今回は本当に有り難うございました。
作者からの返信
児島らせつ様、コメントありがとうございます。
「生物専攻だったわけだし」というのは驚きました。作品の印象から、歴史関係を専門に学んでおられたのかな、と想像していました。
考えてみれば、私自身、ミステリ作品に自分の専門分野を組み込んだことはないので、作品内容から専門が推察できるとは限らないわけですが……。ファンタジーやホラーならば私もバンバン専門知識を取り入れて書いているわけですし、ならばミステリ作品でも出来るはず。いつかウイルスネタでミステリを書いてみよう、と良い刺激を受けました。ありがとうございます。
「やっぱ横溝正史だよなー」という話。言われてみれば横溝正史っぽい雰囲気もありますが、読んでいる時は、あまりそれは感じていませんでした。第18話の応援コメントで記したように、あの部分は確かに横溝作品や乱歩作品でよく見る王道パターンだと思ったり、他にわざわざ書かなかった点として、探偵役の「数日、ちょっと出かけてくる」というところで『悪魔が来たりて笛を吹く』を(東京が事件の舞台なのに事件の背景を調べに金田一耕助が神戸まで行く展開を)思い出したりした程度でした。
私は好きなミステリ作家として日本人ならば横溝正史、外国人ならばジョン・ディクスン・カーの名前を挙げていますが、どちらも私の思うガチガチの本格ミステリからは少しズレていて、伝奇風味が加味されているからこそ読み物として面白いのだろう、と感じています。その点、児島らせつ様の『毒蟲は土に蠢く』は、その伝奇要素がさらに大きくなった(ただし本格ミステリとしての土台は保ったままで)という印象でした。横溝作品と比べるならば、むしろ横溝作品にプラスアルファのイメージでしょうか。
とはいえ、なるほど、ある程度は横溝作品と似た部分もあり、だからこそ横溝好きの私の嗜好にドンピシャでハマったのかもしれません。
>私がすでにプロ作家で、数作目の作品として発表するならOKなのでしょうが、新人賞となると目新しさ、新鮮さに欠けるのかもしれません。
この分析も「なるほど」と納得させられました。確かに、斬新さや奇抜さを楽しむ作品というより、安定した(古来より使われてきた)要素を積み重ねることで出来上がった傑作、という印象です。でも、だからこそ安心感のある作品でした。
一読者としては「安心感」と言えますが、それって、本来ならば作家読みする場合に出てくる感覚なのですよね。「これまでの作品から期待していた通り、今回も同じ作風で面白かった!」みたいな。そうなると、児島らせつ様ご自身が分析しているように、既に作品を発表していることが前提となってしまい、確かに公募やコンテストで評価される項目ではなくなってしまう……。
難しいものですね。
それでも(たとえ斬新さよりも安定感がアピールポイントだとしても)、このようなしっかりした作品が評価されてこそのコンテストです。『いつかはどこかに再応募しよう』というのも、どんどん実行してみてください!
児島らせつ様は「小説家になろう」にも登録して、この作品も置いているようですが、あちらにも文芸系の出版社やレーベルが関わるコンテストはありますからね。そういうコンテストから作家デビューを目指すのも、ひとつの手ではないでしょうか。
本当に、WEBに埋もれさせて、眠らせてしまうのは惜しい作品。そう強く思いました。
烏川 ハル様
お読みいただきありがとうございました!
状況とキャラの台詞が紛らわしいとのことですので、改稿の際になんとかしていこうと思います。ちょいちょい直したりはしているのですが💦
実は元々マンガ描きで小説として書くのは初めてなもので、手探りで書いている状態です。
マンガだったらこのキャラはこの辺でこういう表情をしてて…とか一目で分かるんですが、しかしそれを文章にして全部説明するとなるとしつこくなりそうで…情報の取捨選択が難しいですね
おっしゃるとおり、1~3章までは少しのエピソードを交えつつキャラの紹介がメインのつもりで書いておりました。
だいたい4章まではドタバタ+日常系、5章で仲間揃ってから以降はシリアスめの出来事+人間ドラマという、とてもスローテンポな話です
初作品ゆえの闇鍋感がするなぁとは自分で思っております(;´∀`)そろそろまとめに入ってはいるんですが……。
重ねてになりますが、お読みいただき本当にありがとうございましたm(__)m
作者からの返信
天草こなつ様、コメントありがとうございます。
「誰のセリフなのか紛らわしかったり、少し状況がわかりにくかったりする部分も」というのは、あくまでも私の個人的な感覚であり、本文でも書いたように「難しく考え込まなくてもなんとなく想像はできる程度」なので、それほど気にする必要はないだろうと思います。そこを下手に修正すると「スラスラ読める」という長所も失われそうなので。
天草こなつ様もおっしゃる通り、漫画ならば作者が思い描いているものを一目で伝えられるのに、小説はそれが出来ないので難しいですね。実は作品を読んだ後で近況ノートの『「カラスとすずらん」登場人物一覧』を拝見したのですが、そこに掲載されていたイラストは、かなり私のイメージとは違うものでした。イラストを見るとみんなスッキリした顔立ちですが、私は勝手に、レイチェルはもっとほんわかしたイメージ(もうちょっとふっくら)、ジャミルはヤボったいイメージ(ここまで細くない)で読んでいました。ルカもとらえどころないイメージだから、イラストよりさらに細め(顔なのか体つきなのか線なのかうまく言えませんが、とにかくもっと細いイメージ)で考えていました。
とはいえ、これも私の個人的な感覚にすぎません。他の読者の方々のイメージと天草こなつ様ご自身のイメージと、どれほど同じでどれほど違うのか。一度アンケートを取った上で、さらに読者とイメージが違っていても構わないのであれば現状のままで良いでしょうし、そこで「読者と作者のイメージは合わせたい」というのであれば、その時初めて改稿の必要が生じるのではないでしょうか。
初作品ゆえの闇鍋感というのは、この作品からは感じませんでしたが、むしろ私自身が身につまされる言葉です。私も処女作に相当する作品は、最後まで頭の中でプロットを組んで、その通りに書いたはずなのに、いざ出来上がったものを見ると途中で大きく路線変更したかのような物語になってしまって……。いつか大々的に改稿しなければならない、と思いつつ、他の執筆を優先させて、まだ手をつけることが出来ないでいます。
初作品に対しては、誰でも同じようなことを感じているのでしょうね。
烏川 ハル様
(参加作品その8)、読ませて頂きました。
ただ今11月末日、いよいよ二大小説投稿サイトのコンテストの時期来たる! と、時間を執筆活動に使いたいこの時期に拙作の読了及びレビュー(事実上の)ありがとうございました。
前回同様お返しできる〝返礼〟は作者本人による〝短所の分析〟以外には無い、ということで、さっそく始めます。
まず、烏川 ハル様の分析には首肯するほかない、という事です。
>これは悪くいえば「メインヒロインのキャラの掘り下げが遅すぎる」ということになるのかもしれません。
>もっと前に、過去の彼女をより具体的に主人公に回想させておけば、その辺りの印象は変わりそうなので、その点は少し惜しいと感じました。
やはり本作『外交官・加茂三矢(ただし非公認)』のウィークポイントはメインヒロインにある、ようです。これをラノベ用語で解りやすく表現するなら〝萌えが足りない〟、という事になるのでしょうか。
本作執筆中から『ラノベヒロインの王道からかなり外れているな』というそんな気はしていました。ではどうしてヒロインの造形がこうなってしまったかといえば〝登場人物のキャラクターは最初に決めるのではなく書いているうちに決まる〟という書き方で書いているからです。つまり『書きたいもの』を書いた結果です。
一次選考を通してくれたスニーカー大賞には『よくぞ通してくれた』という思いしかありません(他へも出したけどことごとく一次落ちなので)。だけどそこまでなのもまた事実。
しかし、烏川 ハル様の分析から、本作には今ひとつだけ改善が可能な点がある事が見えてきました。
『過去の彼女をより具体的に主人公に回想させておけば』、つまり過去、小学校時代の萌えエピソードを最初の方に入れられれば見え方が変わるんじゃないか、という事です。
それを入れる箇所は話しの流れをぶった切らない場所、『プロローグ』に含めるのがいいんじゃないかと、そんな気がしています。
具体的には、
(誘拐⁉ 冗談じゃないぜ。桃山さんの存在自体が丸ごと想い出なんだぞ!)という主人公の心の叫びの後に入れる、トコまで思いつきました。ただし現状具体的中身はまったく思いついていませんが。
ただ、そうなると気になるのが文字数(頁数)です。現状でも既に14万5千文字。この上さらに書き足すと上限をオーバーするかも。その点公募に比べ小説投稿サイトのコンテストは上限が緩いように感じるので要研究ですね。(烏川 ハル様もいろいろ勧めてくれましたし)
ちなみに、これまで応募してきた公募の宛先はいわゆるKADOKAWA系で(ラノベという分野ではここが一番メジャーそうな気がしているから)、カクヨムに登録しているのもやはりここがKADOKAWA系で、タグをつけるだけで簡単に応募完了になるから、だったりします。ただwebは数字が可視化されているのであまりに各種数字が悪いと選考側も選ばないような気が近頃はしてきています。
実のところ今の今まで100パーセントに近い純度での「読者受けしそうなもの」は一度も書いたことがありません。(本作も異世界に行って『主人公スゲー!』とは言われるけど無双はしていない)そういう意味でどこまでプロにこだわっているのか、といった感じは自分でもします。もちろんそういうものをある程度研究し考えた事はあるけれど、どうも物語にならない。なんだかループで同じような事を延々繰り返しているようなストーリーしか思いつきませんでした。書いても一次も通過しないかも。でも一回も書かないのでは結論は出ないので一回くらいは書いてもいいかなとは思っています。
時に、烏川 ハル様の企画、【途中敗退者たちの集い】参加者からはプロが出ているとの事。これでけっこう験は担ぐ方なので瓢箪から駒を期待したいと思います。
それではお互いに幸運を!
作者からの返信
齋藤 龍彦様、コメントありがとうございます。
前回の『鐵道写真部始めました‼』でも思いましたが、私個人は、ヒロインの造形には問題ないと感じています。たとえラノベヒロインの王道から外れていようと、しっかりとキャラの魅力が描かれていれば、どんな方向性であれ読者には受け入れられるはず。
特に『鐵道写真部始めました‼』では、ヒロインの魅力がしっかりと伝わってきましたからね。それに比べると、今回はヒロインの魅力が伝わりにくい部分があり、それはヒロイン造形の方向性ではなく、記述の仕方によるものだと思ったので「もっと前に、過去の彼女をより具体的に主人公に回想させておけば」という感想を書かせていただきました。
作品の構成上、メインヒロインはずっとピーチ姫状態だから、語り手である主人公の見える範囲にいないのですよね。そうなるとヒロインの具体的な行動が描けなくなるので、具体的な描写が不足しがちなのは仕方ないと思います。
回想として、齋藤 龍彦様のおっしゃるように『プロローグ』に含めるのも良いでしょうし、むしろ私は、途中途中で随時挿入しても良いのではないか、と思ったほどです。確かに『話しの流れをぶった切る』というデメリットは出てくるかもしれませんが、ヒロインの行動エピソードが随所に出てくれば読者がヒロインを思い浮かべやすくなる(読者にとってヒロインが身近になる)というメリットもあり、そちらの方が大きいのではないか、と思いました。
>ただwebは数字が可視化されているのであまりに各種数字が悪いと選考側も選ばないような気が
確かに、コンテストによってはその傾向が強いところもありますね。真剣に受賞を狙って応募するならば、同じコンテストの前回や前々回の受賞作品のポイント評価だけはチェックしておくべきでしょう。
そこで高ポイント作品しか受賞させないコンテストならば、それは避けるべきコンテスト。低ポイント作品の受賞実績のあるコンテストが狙い目ですし、そんなコンテストも探せば案外出てくるものです。
>これでけっこう験は担ぐ方なので
企画内容では『前回の企画では16名の参加者がおられて、その中から後々コンテストで受賞なさる方々が2名』という簡単な書き方だったので、この場をお借りして、具体的に記しておきます。
まず「第34回太宰治賞」一次通過作品と「第1回青い鳥文庫小説賞」一次通過作品で参加してくださった七海 まち様が、2020年3月に「第8回角川つばさ文庫小説賞」で金賞を受賞。順調にシリーズ化されて、2022年2月には第5巻が発売予定だそうです。
続いて「第七回ネット小説大賞」一次通過作品と「第六回ネット小説大賞」一次通過作品で参加してくださった七沢ゆきの様が、2020年5月に「第5回カクヨムWeb小説コンテスト(キャラクター文芸部門)」で大賞を受賞。こちらもシリーズ化されて、現在2巻まで発売中だそうです。
齋藤 龍彦様も、是非これらの方々に続いてください!
(参加作品その7)鐵道写真部始めました‼ (齋藤 龍彦様)への応援コメント
烏川 ハル様
>一度も二次通過していないのが不思議なくらいの作品でした。
とまで言って頂き感涙にたえません。それくらいこの『参加作品その7』は、本作『鐵道写真部始めました‼』にとってこれ以上にないレビューになっています。
一次を通してくれた所はマシな方、本作〝第1話〟冒頭にスニーカー大賞応募時の〝あらすじ〟が残っているところからお察しですが、一次も通らない所の方が多いです。
あと2カ所に応募すれば主要レーベル完全制覇(まったく誉められない)です。
ところで本作は、烏川 ハル様が企画した【途中敗退者たちの集い・再び】参加作です。
この企画意図は『「コンテスト的に長所だけでなく短所もある作品を読んで、勉強したい」という気持ちもあり、』とのことなので、ここまで読み込んでくれた烏川 ハル様にお返しできる〝返礼〟は作者本人による〝短所の分析〟以外ないでしょう。
『短所とおぼしき部分を自覚しているのになぜそれを潰さないのか?』というと、それをやると今度は〝物語〟として成立しなくなるからです。
どこかこのままで認めてくれるところはないか、と思い応募を繰り返していますが結果は芳しくないです。
それはたぶんヒロインのキャラクター造形です。
本作のヒロインは主人公のことを「好き!好き!」と言って追いかけて来てくれませんし(むしろ主人公の方がしがみついている)、よって性的でもありません。男子と女子が会っているのに恋愛要素は希薄。(恋愛に発展する可能性を秘めた〝好意〟程度は描いたけど)おそらくはこんなところかと。
一次を通ってもいわゆる〝評価シート〟をもらったわけではないので完全にカンですが。
「これだからライトノベルは、」といった感情を抑え、上記の要素を含んだ別作でどうなるか、を試すほかないのでしょう。
根を詰めず、ぼちぼちとやっていこうと思います。
改めて、ご精読ありがとうございました。
作者からの返信
齋藤 龍彦様、コメントありがとうございます。
この作品が二次通過できない理由について、紹介文を書きながら私が考えたのは「コンテスト主催レーベルが求めていた作風やテーマと違うからではないか」ということ。でも「求められていたものと違う」を「たまたま」としか思えなかったので、紹介文の中で書くのは控えておきました。「たまたま」では「運が悪かった」になり、あまりにも漠然としていますからね。
そんなことを考えていたので、齋藤 龍彦様の自己分析を拝見して「なるほど」と感じました。私が漠然と考えた「コンテスト主催レーベルが求めていたもの」が「男子と女子が会っている以上は恋愛要素が必要」ということなのですね!
同時にもう一つ納得できたのが「だからこそ私はこの作品を『面白い』と感じたのだ」ということ。この作品はラブコメではありませんし、無駄な恋愛要素なんてなかったからこそ、テーマがブレず、面白く思えたのだと思います。
齋藤 龍彦様ご自身が分析しておられるように『恋愛に発展する可能性を秘めた〝好意〟程度』は含まれており、その程度の味付けがちょうど良い、と感じました。齋藤 龍彦様も『それをやると今度は〝物語〟として成立しなくなる』と言っておられるように、ラブコメにしてしまうと物語が崩壊する、と私も思います。
主人公の相手役という意味のヒロインではなく、物語のヒロインという意味では、メインヒロイン以外にサブヒロインも二人出てくる。しっかりとキャラ立ちした三者三様のヒロインが登場するだけで、物語に華が彩られています。別に主人公を好きにならずとも、それだけで十分ではないか、と私は思いました。
私は常々「ヒロインたちは主人公の嫁ではなく読者の嫁」と考えており、だから主人公とは恋愛的に結びつかなくても、複数ヒロインを登場させるようにしているのですが……。重要なのは私個人の感性ではなく、一般のラノベ読者がどのような読み方をしているかですね。
なろう系の流行や「小説家になろう」前身サイトで流行った作風から想像して、今は「読者が主人公に共感する」が行きすぎて「読者が自分を主人公と同一視する」という読み方が多くなったのではないか、と心配しています。その場合「読者の嫁」=「主人公の嫁」となりますからね。私の「ヒロインたちは主人公の嫁ではなく読者の嫁」という信条は成り立たなくなります。
この作品に話を戻すと、もしも『本作のヒロインは主人公のことを「好き!好き!」と言って追いかけて』を入れるのであれば、まず主人公がヒロインに惚れられるような説得力が必要になるでしょう。そうなるとヒロイン以前に主人公のキャラクター造形が変わってくることになりますが、この主人公だからこそ新しい部活にこだわった、とも考えられますし、主人公のキャラクター造形を変えた時点で、確かに『〝物語〟として成立しなくなる』。そこまでして作品を崩壊させるくらいならば、「男子と女子が会っている以上は恋愛要素が必要」という読者や編集レーベルは、もう最初から相手にしない方が良いと思います。
>どこかこのままで認めてくれるところはないか、と思い応募を繰り返していますが結果は芳しくないです。
ラノベ読者のうちどの程度の割合が「男子と女子が会っている以上は恋愛要素が必要」と考えているか、私にはわかりません。また、これまで本作品がどのコンテストに応募されてきたかわかりませんが、もしも今までラノベのコンテストしか応募していないのであれば、応募先を変えてみてはいかがでしょうか?
内容的に荒唐無稽でもないので、この作品は「ラノベ」というより「ライト文芸」寄りではないか、とも感じました(私自身「ラノベ」「ライト文芸」をはっきり定義できないのですが)。
私は小説投稿サイトのコンテスト中心で、長編の一般公募は全く出していないので、一般公募は全くわかりません。でも小説投稿サイトのコンテストならば、この作品をもっと評価してくださるところもあると思います。
例えば「小説家になろう」や「ステキブンゲイ」で齋藤 龍彦様のお名前を検索しても出てきませんから、それらは利用しておられないですよね?
「小説家になろう」ならば、ネット小説大賞。複数の出版社が関わるおかげで、低ポイントでも文芸路線でも受賞枠があるコンテストなので、今時のラノベ読者には受けない作風でもチャンスがあるはず。「受賞できますよ!」とは保証できませんが、それなりに評価されるのではないかと思います(たまたま一次選考の下読み審査員が評価してくれない可能性もありますが、何回か応募すれば別の下読みにも当たるので、この作品を3回応募すれば確実に1回か2回は一次通過する、と断言できます。この作品ならば二次選考も通過できるのではないか、と期待しています)。
「ステキブンゲイ」はラノベお断りのサイトですから『「これだからライトノベルは、」といった感情』があるのでしたら、まさにうってつけ。ただし、基本的に日頃は「読まれない」サイトなので、趣味で小説を投稿するサイトとしては全くオススメできませんが……。あそこのステキブンゲイ大賞というコンテストは(少なくとも「第一回」は)、通過割合的には三次選考が他のコンテストの一次選考に相当する感じだったので、この作品を出せば確実に二次は通過して三次か四次くらいまで通過するでしょう。そんな甘い形で二次通過以上になっても嬉しくないかもしれませんけどね。
「ノベリズム」のノベリズム大賞も面白いと思います。第一回の開催が一年以上前なので第二回があるかどうかわかりませんし、私自身は第一回も応募していないので、かなり無責任な話になりますが……。おそらくラノベメインのサイトでありながら、文芸系のプロ作家が大賞を受賞。日頃ネットで運営に不満を書き込んでいるような口さがない連中でも絶賛するような、ガチの選考結果でした。サイト内のポイント評価は当然のように一切無視で、さらに大賞以外の金賞・銀賞には「大賞が文芸系だから」ということで作風的にバランス良いものが選ばれていた点も、褒められていました。受賞しても紙媒体での出版ではなくサイト内の商業連載というのは応募者にとって欠点かもしれませんが(なお大賞だけはよその出版社でコミカライズされますが、あえてコミカライズしにくい文芸作品が大賞に選ばれたこともガチ選考と噂されている一因です)、逆にだからこそ商業化しやすく、落選作品の中からもいくつか商業連載に切り替わったものがありました。いわゆる拾い上げですね。
私自身、広く情報を集めているわけではなく、自分が利用している小説投稿サイトに限った話です。偏った情報の中でいくつか具体的なコンテストをお勧めするのは、かなり無責任でお節介な話なのでしょうが……。
せっかく面白い作品に出会ったのに、これがカクヨムの中だけで埋もれてしまうのは勿体ない。そう思って、つい書いてしまいました。
齋藤 龍彦様が、どのようなスタンスで執筆なさっているのか、私にはわかりません。色々と公募に応募しておられる以上、小説家デビューの気持ちがあるのは確実でしょうが、それがどれほど強いのか。日頃の執筆の中で、どれほど「書きたいもの」があるのか、それと「読者受けしそうなもの」が合わなかった場合、どちらをどれくらい優先させるのか、という点ですね。
プロ作家になるためには「読者受けしそうなもの」は重要だと思います。でもそれとは別に、趣味の執筆としては「書きたいもの」こそ大事。少なくともこの作品は私にとっては面白い方向性だったので、是非この方向性を続けて欲しい(別の方向性で書くとしても、この方向性も残して欲しい)と思いました。
(参加作品その1)高縄原(四谷軒様)への応援コメント
とても丁寧な「一言」をありがとうございます。
歴史ものは……そうですね、おっしゃるとおり、「みんな知っている」という問題がありますので、そこがネックといえばネックかもしれません。
で、私の場合は、逆に「知っている」からこそ、4000字という字数の制限を抱える中で、字数を稼げる(=説明がそんなにいらない)と、歴史ものに手を伸ばしました。
のちのち、その旨味から逃がれられず、歴史ものばかり書くことになることを知らずに……^^;
結果が分かっている=安心感、というのは確かにあるかもしれません。
Aさん、あるいはAという家が後々残っているので、ああ、こりゃあ勝つな、と思われることはあります。
そうすると、「如何に」勝つのかで魅せなければならないという命題と表裏一体かな、とも思います。
何だか偉そうなことを言っていますが、まあ私なりに、前回の武蔵野賞以来、抱いてきたことを述べてみました。
ちなみに、今回の武蔵野賞では、国木田独歩「武蔵野」(←今回初めて読んだという酷い作者です(笑))に載っている合戦を書くという手段に出ました。
果たしてどうなることやら……^^;
ありがとうございました。
作者からの返信
四谷軒様、コメントありがとうございます。
小説の方の応援コメント返信でも「歴史ものならば説明がいらない、というのが歴史もの執筆のきっかけ」みたいな話を書いておられましたね。
でもそれを旨味と感じてその後歴史ものばかり書けるのであれば、もともと向いていたのではないでしょうか。自分の得意分野を引き出してくれた、と思えば、良いコンテストになりましたね!
長い時間、自作品にお付き合いくださり、そしてこのように紹介してくださりありがとうございました。
このシリーズは、そもそもたった1人のラノベ好きの親友に見せるために書いたものです。シリーズ3作目になります。
中学・高校時代に物語を書いたことがある、しかもちゃんと完結させた、というのを信じてもらえなかったので(笑)、
「じゃあ、ちゃんと1本の話を書くから書いたら読んでね」
と念を押し、高校時代に書いたSFモノを異世界を舞台にした話に作り替え、リメイクしたのが1作目。(そしてそれが長かったのでもう少し短い話、と別作品をリメイクしたのが2作目)
親友はラノベ好きなので異世界ものじゃないと読んでもらえないと思ったんですね。自分はその当時、全く読んだこともないのですが。(書いた時点ではweb小説サイトの存在も知らなかったです。)
そしてその2作を読んだ親友が、
「普通、異世界モノって異世界と現実世界を行き来するんじゃなくて、行きっぱなしなんだけど。だから、ちゃんと異世界を旅する物語を書いてみれば?」
とアドバイスしてくれたので、その『異世界を旅する』というお題のもと、リメイクではなくイチから作ったのがこの『漆黒の昔方』になります。
別サイトの方の感想も見てくださったそうで、ありがとうございます。
中盤のソコは、読んだ方々はどうだったんでしょうね……?
そう言われると、私も気になってきました。タグが悪いのだろうか。
ちなみに親友はイッキ読みでしたし、細かい感想は言わなかったのでよくわからないです。
別サイトで感想をくださった方々はオール完結後、シリーズの順番に読まれていたので、恐らく28話(北へ(5))の驚きの方が大きかったのだろうと思います。
単独で読んだ場合、ここは特に何でもないシーンなのですが。
仰る通り、序盤が長いのが致命的な欠点ですね。
改稿するならこの辺をどうにかしないといけないのですが……あああ、多分、構成から何から全部変えないといけなくなるので、無理……。
そういう、作者の私から見ても不備の多い作品を、たくさんの時間を使って最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
自主企画に参加した作品は長編もすべて完読されるのですね。
そうとは知らず……ああ、本当にお手数をおかけしました。申し訳ありませんでした。<(_ _)>
改めて。
自主企画に参加させていただき、ありがとうございました。
他の方の作品の分析などもとても参考になりますので、引き続き拝読させて頂こうと思っております。
この素敵な企画を心から応援しています。
作者からの返信
加瀬優妃様、コメントありがとうございます。
>「普通、異世界モノって異世界と現実世界を行き来するんじゃなくて、行きっぱなしなんだけど。だから、ちゃんと異世界を旅する物語を書いてみれば?」
これがWEB小説全盛の現代における異世界ものの一般認識であるならば、なかなか興味深いですね。
私自身、転生・転移ものを書いておきながら、そうしたジャンルに少し気持ち悪さを感じていたのですが……。私が「気持ち悪い」と感じる理由の一つが「現実世界から異世界へ移動するところから話が始まっているのに、現実世界へ戻らずに終わるからだ」と気付かされました。
それでは物語の始まりと終わりが対応していない、という気持ち悪さです。現実世界へ戻らずに終わるのであれば、物語のスタートも異世界から始めて、転移・転生については途中で回想程度で済ませるべき。そうすれば最初と最後(プロローグとエピローグ)がキッチリ対応するからスッキリする、という考え方です。
昔買ったライトノベルの中には異世界召喚ものもありましたが、実際そこでは、きちんと現実世界へ戻ってくる形でした。だから、それが普通だと私は思っていたのですが、時代が変わったのでしょうね……。
その点、この作品は、最初に異世界へ呼ばれた理由がはっきりしているので「目的を果たしたら現実世界へ帰還するのだろう」という安心感を抱きながら読んでいました。古き良き商業ラノベの香りを感じた、と言って構わないでしょう。紹介文ではネタバレを避ける意味で敢えて書きませんでしたが、だから実は一番の驚きはラストでした。「ああ、ここで終わってしまうのか」と。
確かにこの作品だけで一つの冒険は終わっているので立派に完結作品なのですが、上述のような観点から惜しいなあ、と思ってしまいました。でもこうしてコメントとして作品の成立経緯を教えていただいたことで「それならば仕方ない」と納得した次第です。
おわりにへの応援コメント
読者として読んだ上での分析が詳細で、とても勉強になりました。
視点の話や描写についてなど、簡潔に説明されていてわかりやすかったです。
自主企画おつかれさまでした。
作者からの返信
加瀬優妃様、コメントありがとうございます。
今までは作品リストとしてまとめる際「なるべく良い点だけを挙げていこう」と心掛けてきましたが、今回は「自分の勉強のため」と割り切って(「自分も同じようなことをしないように」と覚えておくために)マイナス面も含めて、かなり言いたい放題だったと思います。特に『マイナス面』というのは、あくまでも自分の価値観に照らし合わせた上での「気に入らない部分」ですからね。むしろ商業的あるいはコンテスト受賞を目指す意味では逆行している点もあったかもしれません。
そんな感じなので『分析』というほどではありませんでした。それでも「勉強になった」と言っていただけたのは嬉しいです。
視点の話なども、以前に創作論的なエッセイでは具体例を含めて記したことであり、今回はその手のエッセイとは違うのでそこまで書けず「私自身はこれでわかるから良いが、この程度の書き方で読者に意味が伝わるのだろうか?」と少し心配になる点もありました。「わかりやすかった」と言っていただけて、安心できました。