第44話〜大好きなキングサリへ

話し終えたSARIは背中を若いスタッフに向けて出口へ行こうとした。


「…ふぅ、これで終わりかな?俺はもう帰らないといけないのです」

「ちょっとまだ聞きたい事が!」


しかし若いスタッフがSARIを止めた。その事に彼は少しふくれっ面になってスタッフとまた話し始めた。


「俺の姪っ子が待ってるんだ、そうやって止めないでくださいな」


SARIは写真を見せた、そもそもこの時代に写真はとても珍しいものになっていた。若いスタッフは目を光らせた。


「アルビノ…ですか?」


そこに映っていたのは少女だった。白い肌に白い髪、まつ毛も白い。笑顔でこちらを向いているこの子は可愛いといえるだろう。


「そう、先天的にメラニンが欠如する遺伝子疾患。それに綺麗なだろ?姉さんの目の色とそっくりだ」

「なんだかそれって…」


スタッフはその特徴を知っていた、それは今までの話に出てきたとある人物と一致していたのだ。


「そう…炎華にそっくりなんだ。そして俺はこの子を絶対に守るって誓ったんです、もう二度と大切な人を失いたくないって」

「それは…素敵ですね」


彼が付けている昔ながらのペンダントが揺れた。いつもの無気力な彼とは違い、決意に満ちていた。


「話しすぎたか。俺は早く行かなくちゃならないんですよ」

「待ってください!その子の名前は?」


SARIは去ろうとしていたがまたもやスタッフに引き止められていた。この好奇心旺盛の塊に捕まった彼は苛つく事なく対応した。


「お前しつこいか…菜々花ななか、ナナカマドからとったらしいよ」

「花言葉は私は貴方を見守る、だってさ。良い名前だよな」

「本当に素敵ですね。こんな話を聞けるなんて私感激です!」

「…」


SARIは今度こそ去った、後ろにいるスタッフにぎゃあぎゃあ呼び止められても去ったのだ。そしてテレビ局から少し右にいった所に最新型の車型の乗り物があった。


「いつもすいませんね、義兄さん」

「こっちのセリフさ。泉水くんの給料でウチは贅沢出来ているんだからね」


車の扉が自動で開き、泉水は中に入った。隣には菜々花もいた。


「泉水が帰ってきましたよ〜菜々花」

「いず叔父さんお帰り、収録お疲れ様」


素っ気なく手を降っている姪に彼は少し戸惑いを覚えた。


「最近ちょっと冷たいぞ」

「菜々花も大人になったから。いず叔父さんも子離れっていうか姪っ子離れしたらどう?ついでにその超大きいピアスも。」


彼女はスマホの機能を導入したメガネをかけながらそういった。今は多分、ゲームをしているのだろう、爆発音と銃声が聞こえる。目線が忙しそうだ。


「つれねぇな。いつから俺の可愛い菜々花ちゃんはそんな小悪魔になったんだ?このこの〜」

「もうそんな歳じゃ…あはは!」

「仲が良いねぇ〜。そんじゃ、帰りますか」


車は自動運転で走行し、健は通販で買ったドリンクを飲んでいた。そして菜乃花と泉水は笑いあっていた。


「成長は早いなぁ、全く」

「それはお互いさまですぅ〜」


誰かがほくそ笑んでいた。その時に自動車の揺れで泉水が身につけている古いペンダントが揺れた。花か霊か、はたまた医者か。それとも幻か、そんなのはどっちでもいい。

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King、平民 坊主方央 @seka8810

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