主人公・貞治は突如として火事で住処を失くしてしまい、途方に暮れていた。そこで従姉弟の千沙から、彼女が娘と暮らすアパートに暫く泊まってはどうかと提案される。
旦那との離婚期を境にすれ違うようになってしまった千沙と娘の朱莉。居候させてもらう御礼として、二人の仲を取り持とうと決意する貞治だが──?
とても面白い作品です。
情景・心理描写もしっかりと描かれているし、どう物語が移ろいでいっているのかがよくわかります。展開も面白いし、序盤から物語がどこに向かうかという方向性(目的)もわかりやすく、行動の動機に引っ掛かりもないです。何より、広瀬先生の文章はとても読みやすいので、するすると読み進められるのが魅力ですね。
貞治と千沙の、男と女でもなく親戚でもない、その中間くらいにある年上の従姉弟との微妙な距離感がとても良き。
会話文の羅列と主語述語だけで構成されているような作品がランキングでは散見されますが、こういった作品も投稿サイトで多く読まれるようになって欲しいなと思わされました。