第43話〜15年の真実
「…へっ?」
16年も遅刻?16年前なんて俺はまだ生まれてすらいないし…ど、どういう事だ?意味が分からない。
「私は当時探したんだよ。飴岩という苗字は珍しいからすぐに見つかったが…そこに
「当時って…いつですか」
「2005年の5月15日の鬱陶しく晴れた日」
その日付には見覚えがあった。それは3度目に炎華の部屋にいったときのあの変な日記。
「それ、日記か何かありますよね?」
「…泉水くんはエスパーか何かなのか。君は一体なんなんだ?」
「俺は飴岩泉水、まだ何者にもなってない可能性の塊ですよ。んで、炎華が死んだのが2005年の5月15日なら俺はまだ生まれてすらいない、なのに俺は去年夢を通じて炎華に会っていたんです」
俺は2005年の8月28日生まれで彼女はその3ヶ月前に死んでいた、つまり14歳差だったって事だ。だから今の言葉を知らなかったんだ。
「奇跡と言うべきか偶然と言うべきなのか。それは君、タイムスリップじゃないか」
「何故俺はタイムスリップしたんでしょうか」
「それは知らない、私はバックトゥフォークやアンドゲームには出ていないからね」
なんだか話していくうちに心を俺に開いてる感じがする、表情も玄関で見た時よりも柔らかくなってるし。
「それにあの炎華に似た赤い髪の女の子も何なんでしょう?突然襲われたし…」
「それは必然だったの…君は、君は
源次郎が俺の肩を掴んだ。力が強く、地味に痛い。彼のさっきの辛気臭い顔は汗に塗れて俺の目を見ている。
「み、尊ってだれですか?!というかですね!?手を離してください!痛いです!」
「すまない、君が私の最愛の娘達を覚えていたからつい」
この老人は余程自分の娘を愛していたらしい。ともかく、俺があってきた謎の現象をこの人なら教えてくれるかもしれない。鍵となるのは幻中一家の過去、そこ何かあるかもしれない。
うーん我ながらにして雑な推理だな、
「あの、一から話してくれませんか?幻中一家の過去を。それで今まであった謎が解ける気がするんです」
「承知した」
彼は話し始めた。
「今から34年前に家内と結婚した、まだその時は夫婦円満だった。そしてその2年後に尊を出産した。可愛い赤毛の女の子で目は私にそっくりだった。そして…その3年後かな。その時に炎華が生まれた」
「家内は娘を見て泣いたんだ、自分の娘の炎華は先天性フラワーチェンジ症候群を患っていたからさ。で、そこから夫婦仲は崩れっていた。治療方法もないが進行を抑えるのが人の血肉をあげるという方法だけだった。
難病ってこともあり莫大な育児費も掛かり、そして人の血や肉を可愛い我が子に与えなければならないと考えると私達にとって、非常にストレスだった。その二年後には離婚したよ。
家内はあまりのストレスにより自分の娘達をビンタした、あの時から精神に異常をきたしていたのだと思う。私も少々精神を病んでいたがね。そしてその1年後ぐらいに家内の虐待とネグレクトが発覚した。
その時の家宅捜査だったか。尊が炎華に食べさせるために自分が我慢した結果、餓死をしていたんだ…私が…気にかけていれば…そうしたら…限界だった家内に親権を渡した時にもっと抗議すれば…私は裁判所のヤツらを絶対に忘れない。
そして私は炎華を引き取り、何とか治療方法を見つけようとした。それも無駄だったが」
まるで罪を犯した罪人のように話して言った。俺はそんな悲惨な事があったのか、とそう思った。
「それも無駄だった、私以外みんな死んでいってしまった。これ以上は何も知らない」
「…話してくださってありがとうございます」
俺は彼に感謝した。そしてその中に気になる事があった。
「その尊っていう人は炎華の事を気にかけていた。あの化け物も…!そういえばガリガリだったしあの化け物が尊なのかもしれません」
「これは私の推測だが…尊は死んでも炎華を守ろうとするあまり君を敵だと認識し、そして襲ったのかもしれない。」
俺、そういえば炎華の姉に植木鉢を投げつけてたよな…やばくないか?
源次郎は立ち上がり、窓のカーテンを開けた。そこには夕日で照らされた木々が風でユサユサと揺れていた。
「君と最期に話が出来てよかったよ、これで心置き無く墓に入れる」
「そんな不吉な事言わないでくださいよ、とっても元気じゃないですか」
「死と生、水と炎、夏と冬、反対になればなるほど近くなるものだよ」
こうして俺は源次郎と話し、家に帰った。帰る時に森をふと見てみるとペンダントが誰かに触れられた気がした。
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