「目的のためには手段を選ばない」が故の葛藤を鮮やかに描く物語

魔王を倒すという目的の為、魔王の息子になった勇者が手段を選ぶ余裕もないままに戸惑い、苦しみながら、強さを求める様を描いた物語。

と書いてしまうと、一見非常に暗く重苦しい作品のように見えるのですが、その重いストーリーを、個性的でありながら所々滑稽だったり、妙に欲望に忠実だったりする登場人物達が、時にはコメディっぽく、そして時には人間ドラマっぽく彩っていく様子は実に色彩豊かで、全体を通して読むと苦難の連続であるはずなのに、妙に可笑しみを感じる場面が多いのが、本作の一番の魅力。

とにかく個々のキャラクターの魅力が光る作品です。

迷いながらも着実に前に進む強い主人公を始め、単に善悪の役割を付与されている訳ではない個々のキャラクターの一面を少しずつ読み進めながら、主人公たちを取り巻く波乱の運命を見守る作業はとても刺激的なので、気になった方はぜひ一度読んでいただきたいなと思います。

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