主人公の立場、信念、覚悟、思考。何をとっても面白くないわけが無い。
甘木先生の文章力あっての理解度であることは重々承知の上なのだが、展開も伏線の張り方も綺麗すぎて、そんなんチートやんと。おもろいやんそれは。
新たな登場人物の差し込み方も嫌味が無いし、バックボーンもしっかり明瞭で入り込める要素しかないし。
ひたすら主人公がこき下ろされるダークファンタジーは見てて辛いものですが、本作のジルバギアスくんは意外に結構幸せそうなんですよね。まぁ、それがまた本人の罪悪感に拍車をかけるのですが……。
とにかく、そのおかげで我々読者側はそんなに…といっても普通にしんどいっちゃしんどいですが、そこまで陰鬱な状態を“長く”強いられないんですよね。
読みやすい。ダークファンタジー特有の読み応えは確実にありながらも。
気持ちのいい読後感と形容していいのか分かりませんが、作品としての完成度は火を見るより明らかです。
僕はこの作品でダークファンタジーを知りました。本当に感謝したい。
独特なテンポがある。特有の読みさすさがある。
だが、内容は途轍もなくダーク。
これこそがダークファンタジーだと言わんばかりに、序盤で叩き付けられる内容に圧倒される。
その後は多少読みやすくはなるが、その凄まじい切れ味は残っている。
自分の場合は、カモのローストと手帳のカバーのシーンが印象に残っている。
自分の中では、この世界の魔族の二面性を象徴しているように感じられて、「あぁ、コイツらは敵なんだ」ということを瞬時に理解できた。
読んでいて胸糞悪くなるシーンもあるが、一山幾らの作品と違って不快感は抱かない傑作なので、受け入れられる人達には絶対に読んでほしい。
本当に面白いから。