ちゃんとネームドも退場する

各種族の特性の足し引きが上手い。ちゃんとデメリットが負担になってるのがリアリティを生んでる。話の流れも強引じゃないのも良い。実力主義の種族で功績を積んでいってるため納得できる。急に考えを述べただけで絶賛されるとかでもなく、積み重ねがあるからね。それにキャラクターの個性が豊かで書き分けが出来てる。その上で各キャラクターがそれぞれ違う魅力があるのは素晴らしい。ニチャール以外の固有名詞もオリジナルティがあるので小説に集中できる。変にリアルの名称だされるとイマイチ小説に没入出来ないからなぁ。それにちょくちょく復讐のための憎悪に燃料焼べてるのが上手いね。感情は記憶とともに劣化していくから、主人公を焚きつけつつリアリティもだせてる。


ここからネタバレあり。


主人公の目的を達成するためには4つ成し遂げないといけないことがある。
1、夜エルフの諜報網の破壊。これがない限り先ず人類に勝ち目はない。最高機密レベルまで(魔王城突貫のための人員、物資諸々の収集)知られてるなんか目隠しして手札さらしながら戦争してるようなもんやぞ。魔族が本気になれば勇者とかの各個撃破や技術者狙い撃ちとかも余裕でされる。新しい戦術や技術も筒抜けとか何やっても勝てなくなるから。
2、エンマたちアンデッドの破壊。こいつらがいる限り人類に明日はない。現在の戦争で戦力補充しつつ能力開発もしてるので下手すると魔族でも負ける。主人公が魔族ぶっ殺したあとアンデッドとかにされたら手の施しようがなくなるので。絶対対魔族用の手段も考えるのでこいつらを破壊する前に魔王を殺すと即座にそれを戦力としてくる可能性がある。
3、魔王城の中枢連中を殺すこと。まぁこれは言うまでもないかな。国の精鋭連中かつ頭なのでこれがなくなるとまぁ混乱するだろうね。失敗しても国は混乱する。正しその場合は主人公の目論見は破綻するけど。
4、ポータルの破壊。これも言うまでもない。これ以降の魔族を強化させないために必要。
とまぁかなり難しい。
個人的には自治領はかなり良い作戦だと思った。自治領を防波堤にすることで同盟側の損害を減らし、自治領で新たな戦力を作成。更に魔族側の固有能力や文化の流出まで出来るので。

疑問点は主人公の目的かな。ちょっと設定に囚われすぎてる気がする。自身や故郷の復讐のために魔王を殺す。これは分かる。現在の圧倒的な力関係を崩すためにポータルを破壊する。これも分かる。で、その後どうするの?魔族の血統能力だけでも割と勝ち目薄いし、結局泥沼の戦争になるだけでは?魔王を殺し、人類側の反撃を望んでるのは分かったけど、それって手段じゃないの?人類側の損害や絶望を無くすだけなら魔王になって融和派でもつくって停戦した方が早いけど。ポータル破壊してある程度戦力が均衡しないと無理なのは無理だけどね。結局魔王殺した後の展望が何も見えないのがよろしくない。手段が目的になってる。そして人間側が有利になったら確実に今魔族がやってることやるけどそれはどう思うの?立場が逆転するだけで主人公が思うほど人間高潔じゃないと思うけどなぁ。
主人公が魔族側に絆されるのはある意味当然。自分を支えてくれる存在に好意を感じないのとか機械じゃないんだから。自分に好意的な存在を害するのは難しい。復讐との狭間で揺れるのも人間らしくて良い。初志貫徹を望む人もいるけど、より良い道があるならそちらにいくべきだ。最初の思いや考えが絶対正しい訳ではないのだから。自らの望みを達成するために最善をつくすべきなのだから。

面白いが主人公の人類側への執着から魔王殺害後の人類たちにどうなって欲しいのか、物語の根幹に関わる部分で不明瞭な部分があるので☆2です。まぁまだ作者さんの都合で明かしてないだけかもしれないけど。それが分かれば文句なしで面白い小説。


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