設定や世界観の面白さは他のレビュー投稿者の方々がおっしゃる通りなので、私からは別の切り口から本作の魅力を伝えさせていただきたいと思います。
まず、本作は一話一話が非常にスマートな文章で構成されています。
一話における文量が約2000~3000文字であるにも関わらず、心情や情景描写が過不足なく纏められているので、あえて「読みやすい」という言い方を使いませんでした。
読み手側の負担とならないよう不必要な表現、文章を削りつつ、自身の書きたい事も書く……この両立は中々難しい事だと思うのですが、本作の作者様はものの見事にやってのけています。情報が欲しいと感じたタイミングではしっかりと文章が書きこまれていますし、ここまで読者に寄り添った作品は中々お目にかかれないのではないでしょうか。
世界観の面白さで言えば、物語の進行と合わせて変化していく世論や人々も見どころのひとつ。とりわけ本作ではサブキャラクターやモブ、背景の使い方が巧いのもあり、メインキャラクターと接する中で彼らの中にある思想や考えが見えてくるのも面白いところです。
そんな彼らがメインキャラクターを担う人物たちと接し、互いに影響を与え合っていく……地の文やセリフから伺える血の通ったやりとりからは、彼らもまたこの世界で生きているのだという事を感じられる筈です。
そしてそれが作品の世界観構築に繋がっているというのは、見事と呼ぶ他ありません。
長々とレビューを書かせて頂きましたが、最後にひとつだけ。
後半を超えたあたりで描写される戦闘シーンは必見ですよ。
転生者の帰還もので世界が受け入れて順応している作品は数あるけど、この作品のように順応していない世界を描いている作品は少ないです。だから斬新で正直読み始めは期待してなかったけど、面白かったです。
しかし、だからこそ細かいところが気になってしまう。
転生庁という転生者を排除する管轄が能力を行使しない転生者を識別出来ない描写が描かれながら、一般市民がどう思っているのか描写が書かれていません。
危険人物であり、即殺戮が正義と常識が謳っていながら能力行使しない転生者が分からない。それなら市民側も転生庁を無能扱いする者、普通の人間じゃないかと人権を主張して歩み寄る者に別れるだろうが、そこを突く描写が6話まで読みましたがありませんでした。
作品自体はとても面白い場所を突いていますが、細かいところが本当に惜しい作品です。
「転生者が受け入れられていない社会で起こり得る問題」というテーマの細かいところまで工夫して見せていたら物凄い作品になっていたと思います。
でも、マジでオススメ。
まず、著者様が仰られるように設定が多く難しいと思われる方もいるかもしれませんが、丁寧に読めばキチンと説明されています。それも、説明口調ではなく物語の中で明かされているのでテンポが悪くなるなんて事はありません。それでも、設定集ページを設けてくださってるのでよりわかりやすく理解を深められます。
物語に関してですが、ネタバレにならない程度に。
魔王を倒した勇者はその後どうなるか?という物語を見た事がある方がいると思います。結局、人外の力を持つ勇者は危険として排斥されていく運命なのですが、それは転生して力を得た者が現世に戻ってきたらどうなるかという問題にも繋がるかと思います。
この世界では、そんな常人よりすごい力を得てしまった方との共存というのがテーマなのかなと感じました。
そして私がこの物語で最も凄いと感じたのは、『次の瞬間にはもしかしたらどうなるかわからない』という緊迫感が序盤にあり、惹き込まれるという事です。
現時点での序盤に感情移入し、その後は問題提起を突きつけられ……という所までしか現在は公開されていませんが、今後この物語がどのように進みまとまっていくのか非常に楽しみです。
そして一点だけ気になった矛盾というべきなのかな?と思ったのは、お湯を沸かすのはヤカンで電気ポッドやケトルなどは知らなくてもVRは知っているという点です。
今後、その辺りの説明ももしかしたらあるのかもしれませんが、現時点ではそこが少し気になりました。
昔、「ある人の書いた文章」が人々の心を動かし、世界的な事件を引き起こしました。
故に同じく「文章を書ける人」は危険であり、現れた際には早期発見・監視及び、有害と判定された場合は、即刻排除。
この作品が扱う題材を私なりの解釈で置き換え、「物書き・読者」の皆様にお伝えすると、こうなると考えました。
個人単位での認識はともかく、世論――世界的大多数の認識が、元の世界に再び転生してきた"再転生者"への忌避。
過去にあった被害、常人とは違う力、一度異世界を介したが故のズレた常識。
それらを踏まえて恐怖するのは理解も納得も出来ますし、"未知の脅威"に対して最も安心できる方法を作中で取っていると、読んでいても頷けます。
ですが「転生者を匿ったら指名手配犯になりました」では、作中の一般論を踏まえた上での個人的認識の違いが、うまく描かれていて面白いです。
"転生"……この一言だけで避けず、"転生"に対する一つの認識を得るとして、この作品を読む価値は有ると思います。
長くなりましたが、このレビューが「転生者を匿ったら指名手配犯になりました」の人気を博す一端となれるよう、願っております。
※4話まで読んだ感想です!
第一印象で感じたのは、固すぎない文章形式です。
文芸のように地の文を多用してないし、なろう系のように会話文だけではない。
バランスが良いと呼べばいいかな。
例えるなら、緩やかな川の流れを彷彿させる文章です。
読みやすく詰まることもない。流れに乗って読むことができる。
更に一つの話数に2000~3000文字程度、気軽に読めます。
キャラの設定は、4話時点では不明なことが多いかな。
多分これから分かってくると思う。
再転生者の過去も気になる。
なぜ、死んだのか。そこが物語の鍵かもしれない。
雰囲気的にはスローライフと呼べばいいのかな。
ジャンルに"現代ドラマ"って表記があるから、ヒューマンドラマだと思う。