第9話 スタジオトーク その4

「はい。という事で全てのVTRが終わりました。どうですか?大島治夫先生」

「いやー、ラジオで大活躍から交通事故。そしてそれが転機となってテレビ番組にというのも、また凄い経歴ですね。まさに怪我の功名というやつですね」

「本当に私は、運が良い人間なんだなと思います」

「いやいや。道汚さんは大変な努力家だと思いますね。やっぱりね、真面目に努力する人間は神様が見てるって事なんだよ」

「アイドルの野村茜ちゃんは、どうですか?」

「ラジオの占いで、しし座が最下位になったその日に交通事故って凄いですね」

「お願い!モーニング!の占いコーナーは、良く当たる事を私自身の手で証明してしまいましたね」


スタジオは、爆笑に包まれた。


「それでは、本日最後のサプライズゲストをお呼びしたいと思います」

「あれですよね。この流れ的に富井誠さんが呼ばれるんじゃないですか?」

「さあ、一体誰が来てくれるんでしょうね。それではどうぞ」


ここで画面は切り替わり、CMが流れる。スポンサー企業である牧野製薬の栄養ドリンクのCMが流れる。

そしてCMが終わり――。


「さあ、最後のサプライズゲストはこの方です。どうぞ、お入りください!」

「ええええええーーーー!?か、母さん!?」


現れたのは、堂島道汚の母、堂島茂子だった。

カメラが堂島道汚の驚いた表情をアップで映す。


「今日はですね。堂島道汚さんに、ずっと疑問だった答えをお母様の茂子さんに直接答えてもらいたいと思います」


司会者の梅田美紀が言う。


「ズバリ堂島道汚さんの道汚の汚は、どうして汚という字になったのでしょうか?」


スタジオ中が堂島茂子に注目する。


「本当は道雄の雄という字にするつもりだったんです。ですが、役所に名前を提出するときに道汚と間違えて書いてしまって提出してしまったんです。名前変更の手続きをするのもややこしいから、今もこのままでいる事にしたんです。でも結果的に、この名前が道汚の武器となり、こうやってテレビで活躍している姿をすると、お父さんも間違えて良かったと天国で思っていると思います。道汚、ごめんね。変な名前にしてしまって。いじめられる日もあって辛かったよね。でもあなたは立派に生きてくれている。私はとても誇らしいです」

「母さん……。今まで女手一つで、大事に育ててくれて本当にありがとう……。ありがとう……」


スタジオ中が涙で包まれる。

堂島道汚は、これからも続いていく。

そして番組のエンディングが流れた。


「はい。カットー!いやー、よかった!!道汚ちゃん、完璧だよ!!パーフェクト!お疲れ様!」


番組プロデューサーの富井誠が言う。


「お疲れさまでした!」

「これは高視聴率取れるぞ!!放送を楽しみにしててね」

「はい。ありがとうございます」


2021年3月14に放送された【その男、堂島道汚】は視聴率42.7%というとんでもない数字を叩き出した。


これからもベテラン司会者、堂島道汚の伝説は続いていく。

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その男、堂島道汚 富本アキユ(元Akiyu) @book_Akiyu

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