春の麗らかな陽射しの下……冷たい刃物に刺される感触

 石濱ウミ氏の描く『北村ふしぎ探偵事務所』のレビュウをいざ書かんとするが……どこまで踏み込んで良いモノやら、筆が止まってしまっている。

 そう……本作品は「ミステリ小説」であり「ホラー小説」であり、登場人物たちの謎も踏まえた「ふしぎ小説」と云うべきカテゴライズを与えられるべき作品なのだろう。

 だからこそレビュウの内容については「ネタバレ」を含まぬよう、レビュワーによる自主規制が肝要となることを忘れてはならない。

 物語は第1章が終了し、第2章の序盤に入ったところでもあるので……私によるレビュウは第1章を読了した時点での感想にはなるのだが、この第1章がズルリと私を引き込み捉えて離さないのだ。

 詳細については前述の「ネタバレ」を伴う恐れがあるために割愛させて戴くが、石濱ウミ氏が春の情景を描く色彩の美しさと……第1章のラストに対比するように現れ出でる、恐ろしくも寒々しい色がずっと心の奥底に刺さったナイフのように残置している。

 かと云って、物語が重々しく昏い様相を呈している訳ではなく……主人公の北村氏の言動はユーモラスであり、喫茶店のマスターとの掛け合いにしても、もう一人の登場人物との会話にしても……生き生きとして言葉が躍り出すかのような錯覚を覚える。

 今後は四季の移ろいと共に、折々の季節に印象派の絵画の如き色彩の魔術を魅せて戴きたく、次章以降の展開を期待しながら待ち焦がれていることとしよう。