21 杯目 演習
SIDE
何とも怪しげな通告であった。この数日間、我々うどんを愛する学生集団の問いかけを完全に無視し続けてきた
「どう思う?」
通告の後、我々は直ちに相談を始めた。
「信用なりませんね。その場しのぎの大げさな主張をして煙に巻くつもりでしょう」
「第一、時間帯がおかしいです。何を言うのか知りませんが、午後六時半から始めたら今日の活動時間が終わるでしょう。今日は日曜ですから、明日からの平日はまた先週と同じように、日中は紘目氏に直接意見できない日々が続き、我々が表立って行動できるのは週末になってしまいます」
「それに、これは紘目氏は知らないはずですが……僕たちには明日はないですよね。明日からは一学生に戻って、恐るべき期末試験を受けなければなりませんから」
そう、何よりも深刻なことに、我々には時間がないのだ。今日の進展如何にかかわらず、撤収し、家へ帰らなければならない。同朋のうち最も早い者は、明日の二限目にいきなり最難関科目が待ち構えているのだ。何と非人道的な時間割であろうか。
「『最終的』という表現は、それ以降僕たちとは話し合う気がない、あるいは話し合ったところで意見を変える気はないという意思表示ですよね」
コシロー氏が言った。それを受け、みな一様にうなずいた。私も同意見だ。
「時間を早めるよう求めてみましょうか。希望は薄いと思いますが」
「いや、それはやめておこう。こちらが切羽詰まっていることを悟られると、足元を見てくる可能性がある。情況は非常に厳しいが、残りの三時間、できるだけのことをしよう」
そう言って私は、来たるべき最終声明の想定と、それに対応する質問事項の策定を同朋に切り出した。
この主張にはどう返すか、論理の穴はどこか、そもそも穴しかないじゃないか……鋭い突っ込みにあふれた勇ましい文言が飛び交う、大変に白熱した討論を続けるうち、あっという間に三時間が経ってしまった。
午後六時半、秒針が真上に来ると同時に、玄関のドアノブが音を立てた。
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