Disk 01 Bonus track かえるのうた
行きよりも帰りの方がコタロー君の足取り重いんだよね。
深夜勤明けは特にフラフラしてヤバめ。コンビニから二〇〇メートルもないのに家まで一〇分以上掛かるんだもの。やっぱり大学生活とコンビニファイターの両立はキツいみたい。でも今日は日曜日。講義がなくて良かったね。
レジ袋に高級品なイチゴミルク(レモンミルクより一〇〇円高い)とエッチな雑誌と一緒に入れられたけむりはコンビニ出る時、コタロー君に落とされたの。とっても疲れてるんだよね。仕方ないね。
あのね。ハナちゃんとけむりが知り合ってから、コタロー君ちょっぴり優しいの。以前は卯の花や魚の粗のパックと一緒にレジ袋にけむりを入れてたけど、けむりを抱っこしたハナちゃんが『お惣菜の匂いが染み付いてるよ? 別々に入れてあげて?』とコタロー君を窘めてくれたの。その上、けむりをお風呂に入れてくれたの。今度お洋服作ってくれるんだって。ハナちゃんありがとう。
話戻すけどね、コタロー君。けむりも女の子だからエッチな雑誌と一緒に入れられるのは複雑だな。あとキンキンに冷えたイチゴミルクの紙パックの結露が染み込んで気持ち悪いな。けむりはカエルだけどオリーブフロッグのぬいぐるみなの。忘れないでね?
フラフラ歩いていたコタロー君の足が止まる。あ。きっとお家の前だ。
ほら。ガチャガチャって音がする。
ノブを回してドアを開けたんだね。……また鍵を掛けなかったんだね。ビニール袋の中に入ってないもん。なんたらクエストの宝箱の鍵みたいな鍵。
「ただいまー」
誰もいなくても律儀に言うんだよね。頂きますもご馳走様もコタロー君ってちゃんと言うの。えらいえらい。
でもねコタロー君、お家にいる時も留守の時も鍵は掛けようよ。けむりはそこが心配。ちゃんと掛けようよー? 幾らこわれ荘でも泥棒入る時は入るよー? かち合ったら頭かち割られるかもしれないよー?
エンジニアブーツを脱いだコタロー君はけむりを窓辺に置くと伊達メガネを外して三つ編みを解く。長い綺麗な赤毛が自由を求めてふわっふわに広がる。長い溜息を吐きつつ手を洗うと、花柄のピンクの座椅子に凭れて眠ってしまった。
わー。コタロー君、眠いのは分かるけど一瞬起きてー!
レジ袋に結露したイチゴミルクとエッチな雑誌が一緒に入ってるー!
コタロー君起きて起きてー!
折角買ったのに水濡れで読めなくなっちゃうよー!
けむりが一生懸命念じてもコタロー君は起きない。すうすう、とおばあちゃんみたいに気持ち良さそうに寝息を立ててる。
もー。けむりは知らないよー?
けむりもお昼寝しちゃったみたい。お昼のサイレンに起こされたよ。
コタロー君に生活を合わせているから夜型になっちゃった。
座椅子では相変わらずコタロー君がすうすう寝てる。レジ袋の中の悲劇なんて全く知らずに。しかし突然びっくんと体を跳ね上げる。こわいよ?
びっくん、けむり苦手だなー。毎日見てるけど慣れない。
「……んー?」
コタロー君は寝惚け眼を擦って起きる。にょーんと伸びをした後に大きな欠伸を一つ浮かべる。
「んー……」
俯き頭を掻いたコタロー君は『お前も起きてたかー』と呑気に笑う。コタロー君は大切な赤いガラスのペンダントを外すと卓袱台に置いた。
体を洗う時と男の嗜みをする時、必ず外すんだよね。後ろめたいみたい。
男の人って大変だね。がんばれー。
コタロー君はレジ袋を弄ると落胆する。
「ああ……」
エッチなおねえさんの表紙がイチゴミルクの結露を吸ってべにゃべにゃだね。だから言ったでしょー。
項垂れたコタロー君は雑誌を裏返す。
「……んー。後ろのページはいけるかも」
切り替え早いね?
ページをめくる音が部屋に響く。のんびり厳選するのは良いけど早く済ませてー。ツッコミ入れてもけむりはとっても恥ずかしいし、それにこの後予定詰まってるでしょー。詞の作り直ししなきゃー。セグさん迎えに来ちゃうよー? お寿司食べるんでしょー?
「……そうだ。こんな事してる場合じゃない」
そうそう。ようやく気づいたね! えらいえらい。
「軍曹氏にすすめられたねじねじカップ使ってみよう」
もー。全然気づいてなーいっ。
コタロー君は立ち上がる。玄関の側にある台所の小窓に置いた銀色と赤のツートーンカラーのお道具取りに行くんだね? シャンプーと食器用洗剤の隣に置いた男の嗜み。
けむりに背を向けたコタロー君はお道具を取り上げる。
「時給五分の四のお値段。頼むよー」
深夜勤明けの楽しみに取っていたんだね。イチゴミルクも休日の楽しみだもんね。
「……でもなー。んー……五分の四だもんなー」
コタロー君はウロウロと部屋を歩き回る。
優柔不断だよね。するならさっさとシて。シないならさっさとやめて。
「んー……清水の舞台から飛び降りるか」
コタロー君は座椅子に腰かけるとボタンを外し、ジッパーを下ろす。
するとノックの音が響いた。『コーちゃん、ビワ持ってきたよー。お食べー』とコタロー君を呼ぶ嗄れ声がする。大家さんだー。
「わ。フミさん? わ、わ、わ」
嗜みを中断されてテンパってる場合じゃないよ。お道具置いて出ようね?
お年寄りの大家さんは耳が遠い。あとお年寄り故にすごくせっかちで他者の話全然聞かない。『コーちゃんいるんでしょー甘いよー旬だよー開国シテクダサイヨーネエ開国ー』とドアを連打しまくる。ゲーセンで太鼓のゲームに白熱する高校生みたいだよ。
「わ、わ。ヤバいヤバい。開けっぱ開けっぱ」
あれ? 追い込み連打が止まった?
でもそれに気づかないコタロー君はジッパーを上げ、ボタンをかけると台所の小窓にお道具を置こうとする。
「わ。わ。今出ますー」
するとカラリと台所の小窓が開いた。
コタロー君は絶句した。
ザルいっぱいのビワを貰ったコタロー君はハナちゃんを家に上げた。
「……あの、本当、ごめんね。大家さんが小窓を開けろってせがむから……それに鬼連打してたし」
ハナちゃんは白い蝶があしらわれたミュールを脱ぐと揃えた。
「い、いや……俺も立て込んでて……ハナちゃんが窓から顔を出したのは驚いたけど……窓の鍵閉めないのはいつもの事だし……その……アレ、見ちゃった?」
「…………ごめん」
あーあ。お道具見られたね。
「あの、気にしてないから。大丈夫だからね?」
男友達にバラされてヘラヘラ笑ってても女の子に見られるのは別次元だよね。ご愁傷様。
しらっちゃけた畳の上を優しい言葉を掛けるハナちゃんの小さな足が進む。一八〇センチ超の身長を支えるコタロー君の空母みたいな足とは違ってとっても可愛い足。レースのストッキングがプレゼントのラッピングみたいで可愛いね。若草色のマーメイドスカートも可愛いー。
「良かったら座ってね」
コタロー君は卓袱台の側の座椅子を勧める。卓袱台の上にはイチゴミルクとエッチな雑誌……ハナちゃん反応に困ってるよ?
エッチな雑誌をコタロー君は瞬時に片付け、ペンダントを着けながらめっちゃ早口で言い訳を並べる。
「一応俺も男だけど飢えても襲わないからちゃんと理性あるからアレもコレもファンタジーって分別あるから友達やめて欲しくないからこれは忘れて欲しいからでもハナちゃんの味方だって事は絶対に忘れて欲しくないからごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「うん。分かってるから。落ち着こう? ね、座って?」
逆に座椅子を勧められたコタロー君は長い溜息を吐くと座した。
ハナちゃんはけむりの服……出来たばかりの若草色のワンピースを持って来てくれた。ふわっふわでふりっふりな裾に白いレースがあしらわれてとってもとっても可愛いの。ベビーブルーのお花の刺繍まで入ってるー。着せて貰ったらサイズもぴったり。わぁ。お姫様になったみたーい。うふふふー。
「わ。素敵な魔法にかかったみたい。かわいいねぇ、けむり。良かったね。ハナちゃんありがとう!」
えへへー。コタロー君に褒められちゃった。
「どういたしまして。サイズが合って良かった。今日は家にある生地での試作だから色々手探りでごめんね。なのでプレゼントです。次は迷いなく作れそうだから一緒に生地選びに行こうね」
わーい。けむりも生地見たーい。
「これが試作なの? 造りとか糸の跡とか俺が着てる服と変わらないよね? とても綺麗」
「ヨイショしても次の材料費はちゃんと払って貰うよー?」
「それは勿論。けむりのワンピース、ハナちゃんの人魚みたいなスカートと同じ色だね……もしかしてハナちゃんのも手作り?」
「む。ご明察」
「わ。凄いなー。前からそれ似合ってるなー可愛いなー人魚みたいだなーって思ってたんだ。ハナちゃん、お店開けるね。作った服を着てお客さんに見て貰えるねー。可愛くて欲しくなっちゃうね。俺もハナちゃんの服があったら絶対に欲しいし、お手伝いしたいなー」
あー。ハナちゃん顔真っ赤になってるよー。コタロー君そーゆー事さらっと言っちゃうんだからもー。
「……うん。お世辞でも嬉しい。ありがとう」
「お世辞じゃないって。本当に可愛いよ。とっても可愛いよ。大好き」
コタロー君の褒め殺しに耐えきれずハナちゃんは両手で顔を覆った。
レジ袋に半分入れたビワを持たせてハナちゃんを途中まで送ったコタロー君は帰宅するとお風呂に入る。……お風呂って言ってもかなりワイルド。台所の流しの前にブルーシートを広げて頭を流しに突っ込んでシャンプーしたり体幹を洗ったり、ワークトップによいしょと腰掛けて流しに脚を突っ込んで洗ったり……。コインシャワー使いなよー。
お風呂を終えてブルーシートを窓の手すりにかけて干したコタロー君は押し入れからラジカセと草臥れたノートを取り出す。そしてシャープペンを卓袱台に置く。
えらいえらい。ちゃんとやるんだね。コタロー君はけむりだけが知ってる、秘密のお仕事を始めます。
セグさんから貰ったテープを二、三度聴き直した後、ノートを眺めブツブツ独りごちながら同じフレーズを幾度となく掛けては巻き戻す。タローさんから『ここ語句が長すぎて歌いづらいし、巻くと聞こえづらい』とダメ出し食らった所だね。
「んー……」
巻き戻し音がキャロキャロと幾度となく響く。セグさんのギターを聴きつつコタロー君は類義語を幾つも書き連ねては独りごちる。
さっさっさっ。シャープペンが走る度に草臥れたノートには幾つもバツ印が増える。
「んんー……」
難産だね。でもこうやって頑張るコタロー君を見るのけむりは好きだな。出来た曲を聴くのも好き。コタロー頑張れー。
「んー……ダメだ。集中出来ない。血が頭に行かない。さっきから全部下に降りてる。
長々お預け食らうとダメだー。夜勤前からもんもんしてるのにー」
ちらり、とコタロー君は本棚の隅に押し込んだエッチな雑誌を見遣る。
ええええー。ちょっと。脱線してる暇ないでしょー。マジ路線に戻ってー!
コタロー君はぐっと堪える。えらいえらい。
「あと二時間で取りに来ちゃうよー。直しも妥協に近いし元の出来もイマイチだし……集中出来ないー。苦しいよー。もんもんするー。発散できないー。発散したいー。もんもーんもんもーん」
コタロー君は頭を卓袱台に打ち付ける。
「……一服しよ」
紙パックを開封しストローを刺し、常温になったイチゴミルクをコタロー君は吸う。だけど何かを思い出したのか突然イチゴミルクを噴き出し咳き込んだ。
「ユキさん……俺イチゴミルク飲めなくなるよ……後ろめたくてもう飲めないよ……」
あーあー。悶々してるから変な事思い出しちゃったー。
胸を叩いて落ち着きを取り戻したコタロー君は畳にぶち撒けたイチゴミルクを見遣る。
早く拭いてー。畳が臭くなっちゃうよー。
しかしコタロー君はぶち撒けたイチゴミルクを喰い入るように見つめている。
……コタロー君?
ぱく、と口を開閉したと思いきやコタロー君は座椅子に腰かけると新しいページを繰る。そして凄まじい勢いで詞を書き始めた。
わー。けむりが大好きな一生懸命なコタロー君だー!
一時間も経たない内に原型の詞がページを埋め尽くした。コタロー君はテープを流してギターを聴き、語呂が悪い所や韻を踏めそうな所を丸で囲んでいく。そして類義語を沢山呟き腑に落ちたものを詞に当て嵌めて書き直し、エッチな言葉を幾つも呟き婉曲表現に昇華して詞に連ねていく。
二時間経とうとした頃には一曲丸々再生させ、ぼそぼそと歌って語呂や聴きやすさの最終チェックをしていた。
「んっけ。清書」
スーパーのチラシの裏に歌詞を書き写しているとノックの音が響いた。
「んー。んーぞー」
「ええ? また?」
囁くような渋い声が困っている。セグさんだー。
「んーが離せないんでー。んーめんなさーい」
コタロー君、日本語になってないよ?
ノブが回転するとドアが開く。前下がりのテクノカットのセグさんとコタロー君に生写しの(お兄さんだから当然?)タローさんが入る。
「いやいや。デストラ先生お仕事中でしたか」セグさんは苦笑する。
「いい加減鍵かけろ。夏物ここに置いとくぞ」ハイブランドの大きな紙袋をタローさんは押入れの前に置く。お下がりだー。いつもコタロー君の為にありがとう御座います。
畳にぶち撒けたイチゴミルクを踏んで悲鳴を上げるタローさんを他所にセグさんはチラシの裏を覗き込む。
「清書?」
「んーい。んーしお待ち下しー」
「……初回と大分違うね? 全部書き直したの?」
イチゴミルク塗れの靴下を脱いだタローさんも清書中のチラシの裏を覗く。
「マジか」
書きかけの歌詞に目を通したタローさんはブツブツと軽く歌う。『抽象的だけど大分尖ってるね。面白いなぁ。エッチだなぁ』とセグさんはニコニコ笑う。
「んー。ん待たせしましたー」
コタロー君がチラシを差し出すとタローさんは奪うように受け取りブツブツと続きを歌う。……何回も現場を見てるけど、こーゆー場合のタローさんってコタロー君の歌詞をめちゃくちゃ気に入ってるんだよね。
セグさんは『先生、コンビニファイターに作詞にお疲れ様です』とコタロー君を労った。『先生なんて大したもんじゃありませんよー。はあ。難産だったー』とコタロー君は自らの肩を揉んだ。コタロー君よく頑張ったね。えらいえらい。
「刺さるな、コレ」歌い終えたタローさんはコタロー君の額にデコピンを見舞った。
額を抑えるコタロー君はフニャッと笑った。
「俺も初回より深く刺さったな。聴いてて楽しかった」セグさんは満面の笑みを浮かべる。
「これでぶちかますか。次の話は改めて。寿司ろうぜ寿司」タローさんはチラシを四つ折りにすると丁寧にジャケットの内ポケットに忍ばせた。世界一大切なチラシだね。
セグさんはコタロー君に握手を求める。コタロー君は快く応じた。
「いつも一緒に仕事してくれて本当にありがとう。学生やっても仕事続けてくれるのは嬉しいよ」
「いえいえー。俺もジロさん(セグ)とアニキに仕事貰ってから大学目指せましたし、こーゆー仕事で食わせて貰えるってすごく有り難い事だと感謝してます」
「お互い様だよー。七年前、あんな機会がなかったら俺達もメジャーになってなかったと思う。あの頃は鳴かず飛ばずだったから。ってかコンビニ辞めても困らないのにどうして辞めないの?」
「……作詞下手で悪かったな」ホワホワしてるセグさんとコタロー君の間でタローさんは拗ねる。……コタロー君が拗ねてるみたいで可愛いなぁ。
「タロあってのシニストラだからね? ね? ファンの子みんな『ロウ、ロウー!』って喜んでるじゃん? みんなタロが大好きなんだからね? みんなタロを待ってるんだからね? ね?」機嫌を損ねたタローさんをセグさんは宥める。マイナーの頃の歌詞担当はタローさんだったけどコータロー君に書かせてから一気にメジャーへの階段を駆け上がったんだよね。……兄として複雑なんだろうなぁ。
「俺も大学に居るとロウの弟である事痛感するなぁ。女の子達が俺を指差して『あ。ロウだ』って言うからねー。アニキ、人気者だよね」コタロー君もタローさんをヨイショする。
「デストラ先生、モテるでしょー?」セグさんはコタロー君を突つく。
「まさかまさか。揶揄われてるだけです。おじさん苦学生はモテませんよー?」
「好きな子一人はいるんでしょー?」
「いやいや。若者だらけなので手ぇ出したらロリコンですよー」
「居るんだー?」
「居ませんてー」
「どんな子? どんな子?」
「だから居ませんてー」
うふふあははとじゃれあうセグさんとコタロー君に背を向けタローさんはいじける。……歌番組やライブではめちゃくちゃかっこいいのに、こーゆー所があるから可愛いんだよね。
「わ。わ。わ。わ。モテるのはアニキで俺じゃないから。俺はゼロックスだから。兄より優れた弟なぞいないから」イチゴミルクで濡れた靴下を砂壁に投げつけるタローさんの背をコタロー君はさする。
「歌詞賜ったし、お寿司行こうよ! 左古さんがわざわざ個室リザーブしてくれたんだから! ノドグロとシャコとイサキとウニ鱈腹食べたいって言ってたじゃないか」セグさんもタローさんの背中をわしゃわしゃさする。
「……梅タン塩とレバ焼き喰いたい」タローさんはぽつりと溢した。
「ええええ。急に? もうリザーブしちゃったって」
「わ。わ。わ。わ」
「豚トロワサビとオマール海老、シロセンマイ刺しとリードボー、カシスオレンジ、ボンジリ、牡蠣バター、豆苗サラダ、締めに熱い玄米茶飲みつつ白馬農場のしぼりたてミルクアイス食べたい」タロさんは畳の目を数える。
「店に迷惑かかるって」
「わ。わ。わ。わ」
「……食べたかった。タン塩……ミルクアイス……ミルクアイス……」タローさんは畳をほじり始めた。
すんすんと鼻を鳴らすタロさんを見兼ねたセグさんとコタロー君は互いを見合わせる。
セグさんは携帯電話を取り出すと左古さん(マネージャー)に連絡をとる。その間、コタロー君はタローさんをよしよしとあやしていた。
通話を切ったセグさんは『寿司屋はスタッフが行く事で纏まったから。俺達は俺達でHORN行こうね。ね? HORNで良かったよね?』とタローさんの背中をさする。するとタローさんはこっくり頷いた。
コインパーキングへ向かうセグさんとタローさんを送り出しコタロー君は出かける支度をする。レジ袋に財布と乗車カード、目薬、リップバーム、ハンカチ、そしてけむりを突っ込む。
エンジニアブーツを履くと家を出た。
ちょっと、コタロー君。鍵! また鍵をかけてないよー!
産みの苦しみから解放され我が子たる詞を褒めちぎられたコタロー君の頭はお花畑。……いつもお花畑だけど。らんらんと鼻歌を紡ぎ、軽い足取りでコインパーキングへ向かう。
んもー。コタロー君の馬鹿! いつか泥棒に入られるからね!
マチバリとイロメガネ 乙訓書蔵 Otokuni Kakuzoh @oiraha725daze
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