『お祖母さまはいったいどうして行方不明となられたのか』(KAC20214:ミステリーorホラー)
pocket12 / ポケット12
『お祖母さまはいったいどうして行方不明となられたのか』
わたしにはどうしても確かめたいことがあります。
それはお
先週のことです。わたしがいつものようにお
どうやら夜おそく家を抜け出され、そのままお帰りにならなかったようなのです。
わたしの知らせを聞いたお
しかし、懸命な捜索にもかかわらず、三日経ってもお
お
ですが、わたしにはどうも納得がいきません。
確かにお
しかし今回、お
それというのも、お
中から開けることはできず、わたしかお
わたしがその点を警察の方々に指摘すると、彼らはおおかた鍵を掛け忘れたのだろうとおっしゃいました。しかし、わたしは確かに鍵を掛けたと記憶しているのです。まだ子どもであるわたしの言い分など彼らには取り合ってもらえませんでしたが、絶対に間違いありません。
いったいお
もうひとつ気になることがあります。
お
わたしの両親はわたしが小学校三年生のときに事故で亡くなってしまいました。ですから、わたしは現在、唯一の
幸いにして両親が
お
去年の暮れにお
畑仕事に
介護をなさる上で、理不尽な目にも多々お遭いになったことでしょう。ですが、わたしには決して弱音を吐くことはありませんでした。まことに尊敬すべきお
しかしそんなお
はじめは当たり前のことだと思いました。なにしろ長い間連れ添われたお
違和感を覚えたのは、警察による捜索の中止をあっさりと受け入れてしまわれたときからです。お
しかしお
近所の方々は相当ショックだったんだろうとおっしゃいましたが、わたしにはどうもそれだけのように思えません。
お
その二つの点を
ですが、それは到底信じられないことです。あのお優しいお
しかし、その可能性が高いというのもまた事実です。
では、もし仮にお
むろん、あそこしかないとわたしは思いました。
わたしの家には今は使われていない地下室があるのです。居間の
わたしはお
学校から急いで帰ったわたしは、迷わず居間へと足を進めました。
畳をのけて、地下室への扉を開けたと同時にわたしを
冷たい汗が身体を
ショクダイオオコンニャクの匂いは、
わたしの理性が、この先へ足を進めることを拒否するかのように、静かに
逃げ出したいと思いました。このまま扉を閉じて畳で
しかし、そういうわけにもいきません。
ここで文字どおり
覚悟を決めたわたしは、懐中電灯のはかない光を頼りに、そっと階段を降りていきました。
地下特有のじめじめとした
そして見つけたのです。
変わり果てたお
心臓が止まるかと思いました。
昼食を抜いていたことも助かりました。そうでなければ、きっとその全てをぶちまけていたことでしょう。
お
目を
右足が曲がってはいけない方向に曲がっていました。
頭部から背中にかけて赤黒いシミで染まっていました。
虫がたかっているのか、無数の羽音がうるさく響いていました。
階段をあやまって滑り落ちたということはありえません。
明らかに、お
もちろん犯人はひとりしかいません。
暗い影が、蛇のように背筋を這い上がっていくような
ですが、いつまでもここで放心しているわけにもいきません。
とにかくお
しかし、それも遅かったようです。
とつぜん視界が真っ白になりました。地下室の電気がつけられたのだと気づいたのは、間も無くのことでした。
わたしは、恐る恐る背後を振り返りました。
階段の前にたたずんでいたお
手には農作業で使う
蛇に
ああ、わたしはこれから殺されてしまうのでしょうか。
そう思うと、お
編み物をなさっているお祖母さまの姿、その
もう決して戻れない穏やかな日常が次々と浮かんでは消えていきました……。
わたしを現実へと引き戻したのは鉄を打つような甲高い音でした。
それは鉈が床に落下した音でした。
お
何も見なかったことにしてくれとお
むろん、わたしには首を縦に振る以外の選択肢など残っておりません。
先に部屋に戻っていなさいというお祖父さまの言葉に従い、わたしは重い足を引きずるようにして地下室を後にしました。
部屋に戻ったわたしはそのままベッドに横になりました。いちどお
しかし、それは一晩だけなのです。
明日からはまたいつも通りの生活に戻らなければいけません。
お
果たして、わたしは正気でいられるでしょうか。今までのような普通の家族として過ごしていけるのでしょうか。
わかりません。
ですが、ひとつだけ確かなことがあります。
お
それだけが確かな事実であり、それゆえに、わたしの取れる選択肢は初めからたった一つしか残されていなかったのです。
(了)
『お祖母さまはいったいどうして行方不明となられたのか』(KAC20214:ミステリーorホラー) pocket12 / ポケット12 @Pocket1213
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