そのおうち時間は虚しさだけを募らせる

もう自分の手元には愛しいものは何も残っていない。
あるのは本物に似せて作られた偽物だけ。
淋しさと虚しさが充満するおうち時間。

ただ生き続けるために生きること。そこにどれほどの価値を見出せるのでしょうか。
生きていることは、生の感触があるから、そして終わりがあるからこそ意味があるのだと気づかせます。

遠い光を求める主人公の最後の決断は現代人なら同感を得るはず。
しかし別の観点で見れば……。
ひやりと冷たいものを感じるラスト。
それまでの主人公の心情を嘲笑うようなこの温度差が効いています。

二千字にも満たない物語の中に生死や価値観に対する問いかけが詰まった一編です。