コンビニ惣菜と酒缶を手に、その人は月を指して言った。
- ★★★ Excellent!!!
休日の夜。したたかにバーで酒を飲んだ後、ひとりで二次会をと思い立ったヒロカワは公園へと向かう。しかし、そこには見ず知らずの先客・オオゾラがいて、どうやらいっしょに飲みたいらしく……かくて始まる月下のふたり飲み。他愛ない言葉を交わす中、唐突にオオゾラは言った。自分は月からやってきたのだと。
そんなふたりが無事(?)翌週に再会、お話は転がっていくわけですが。軸はヒロカワさんの、少々お酒と肴のお話多めながらも本当になんでもない日常なんですよ。そこにオオゾラさんというちょっと不思議な存在が加わることで、「なんでもない」が「なんでもなくない」時間へと塗り替えられていくんですね。けして派手な見せ場はないですが、ゆるやかに流れる川のごとく、いつまでも眺めていられる趣を感じさせてくれるのです。
物語的な緩急の緩を魅せるお話と、それを支えるSF(少し不思議)なキャラクター、味わいの二重をお楽しみください。
(「余韻ほろほろ」4選/文=高橋 剛)