いたずらの里 第2回
朽葉
え?もう師走⁉今年は友未にとってひどく過酷な一年になってしまいましたが、皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか?でも、様々な出来事に出遭うにつけ、人も動物も、命にはみな幸せであって欲しいと、ますます祈らずにはいられない今日この頃です。
先月までは、まだ「昼間は何℃まで上る」というような予報も続いていましたが、それでも、去年に比べると、今年は秋らしい秋を味わえたような気がします。せめて年末年始だけは楽しく迎えなければ …
さて、いたずらの里第2回へのご寄稿、有難うございました。今回は前半戦、後半戦、合わせて10作ちょうどのご参加を頂きました。
https://kakuyomu.jp/user_events/16818093087756423840?order=published_at#enteredWorks
https://kakuyomu.jp/user_events/16818093088877923654
友未自身はいたずらするのも、されるのも大好きですので、第1回開催時のご参加作品数の少なさとも合わせて、「世の中の人って、皆いたずらなんか卒業されてしまっているのかな」と、取り残されたような寂しさもちょっぴり感じています。でも、そのおかげでどの作品にも二度ずつ目を通させて頂くことができましたし、皆様のいたずらに無料で秘かにくすぐられさせて(←この文法、合っています?)頂けました。今回は、その中でも、とりわけ友未を悶えさせてしまった三つのいたずら会心作をご案内してまいりましょう。
∮ 森緒 源さまは、この「里」シリーズ企画でもお馴染みの、ユーモアいっぱいの「愉快かビミョーな」(←森緒さま作品のタイトルの一部を引用)作者さまで、友未もこれまで、他の様々なコメディー巨匠の皆様のどの笑いともまた少し質の違った、川柳のように現実の中に可笑しみを見つけるユニークな達人として応援させて頂いていたのですが、今回のこの【SF小説 しん 浦島太郎】は、一転、まさにドタバタギャグコメディーの王道を行くと言ってよいおバカ作品でした。https://kakuyomu.jp/works/16816927861687250505
断言いたしますが、この物語を読み通してツッコミを入れたくなった回数が10回以下だった皆様は、おバカ作品はお読みにならない方が良いかと思います。友未は多分、20回くらいはツッコミたくなりました。これまで、二次創作やパロディー作品に対して食わず嫌いの冷ややかな視線を向け続けてきた偏見を一発で打ち砕いて下さったことに感謝、感謝です。
舞台は地球から25光年離れた高度な文明を誇り、優雅な生活をたしなむ星民が暮らすリューグ星。他の星に王妃の別荘を建てるため調査役を任されたたヒメ王女とウンミガメ係官が、「ウンミガメ初号機」を地球に送り込み、サンプルとして浦島太郎を騙して持ち帰る。王宮内のホールの中、映し出された超リアル3D仮想映像空間上のキャバクラ「リューグ城」でオーナーのオト・ヒメたちと楽しく過す太郎だが、別荘計画がいとも簡単に立ち消えてしまい、不要になったため無事?地球にポイされる、というお話でした。
文学性を云々すべき性格のお噺しでは全くありませんが、面白いエンタメは時に芸術を越えるのです。
ほんのさわりだけですが、参考までに「第4話 タイやヒラメの舞い踊り」からのワンシーンを。
〈 「じゃあ始めよ~!、私は愛でたいピンクのお肌、タイちゃんで~す!」
「うわっ!! キュン死~っ!」
「ヒラメちゃんで~す!特技は寄り目で~す!」
「可愛い~っ!」
「白キスで~す!…ん~投げキッス !! 」
「 てんてんてんてん…クリティカル Hit !! 」
「エビちゃんで~す!」
「…じつはトウが立ってるな !? 」
「私たちみんなで、リューグ城舞い踊り隊で~す !! 」
「待ってました~っ !! 」 〉
∮ 片や、名作「俳句スイッチ」シリーズの作者、
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887581815/episodes/1177354054887582129
これは傑作です。
きびだんごからお察しの通り、こちらは「桃太郎」にもとづく二次創作になるのですが、上記、「浦島太郎」とも、この「きびだんご」の含まれる同じ作者の昔話集「終わらないエンドロール」の他の笑篇とも少し異なる文学性にあふれた可笑しな悪戯作品でした。格調とでも呼べば良いのか、単なる「もふもふコメディ」では片づけたくない何かを感じます。随所にはさまれるちょっとしたひと言ひと言が実に美しいのです。
〈 峰の紅葉を散らして吹きおろす風が、今朝はよほどおだやかです。〉
〈
た。見上げた軒先には、皮を
〈 入りくんだ尾根に隠された谷間は、風もひやりとうそ寒く、誰も見たことのない
ような巨木が、あちこちで狭い空を仰いでいました。〉
〈 ミカンと一緒に、
〈 太郎とおばあちゃんがふり返ると、夕映えの道に長い影を引いて、柴を背負った
おじいちゃんが帰ってきました。〉
等々 … どの言葉も文章も爽やかで、野イチゴの実のように情感を宿して結晶しています。文章も極めて正確で、簡潔なのに、よく読むと語彙が実に豊かで、それでいて読み易い。後半のバトルシーンや、おじいちゃんの帰って来るラストシーンの懐かしさなど、構成的にも起伏があり、児童文学という用語を使いたくなりました。是非、子供たちに届けておきたいお話です … 、にもかかわらず、ほっこりおバカである点だけは保証致しましょう。森緒さまの抱腹絶倒大爆笑系に対して、来冬さまの作品には、子猫が「遊ぼ」と片手でちょっかいを出してくるような人懐こさが漂います。
なお、この作品は実は本来のご寄稿作品(同じ童話集 「終わらないエンドロール」の第三話「恩返しキツネ保険」)ではなかったのですが、こちらの方をどうしてもご紹介しておきたくなって選ばせて頂きました。この童話集には、もう一つ、第四話に収められていた「ゴーヤ峠の山姥」という必読作品もございますので、是非。
∮ 〈 徳島県立太刀野山農林高校いうたら、教師も生徒も主事さんも部活指導員も、みーんな狸、狸、狸の学校なんやけど、あの学校の狸生徒どもの仕出かす化かしやイタズラいうたら、ほんまにしょうもないもんばかりじゃ。〉
野栗さまの【馬瓶(うまがめ)の嫁はん】には読んだ瞬間☆☆☆を差し上げてしまいました。
https://kakuyomu.jp/works/16817330662451162290
すっかりお馴染みになったこの作者の数ある楽しい四国野球狸譚のなかでも、これぞ友未好みという文句なしのイチオシ短編です。上記、浦島太郎のおバカ笑いとも桃太郎のくすぐり笑いとも異なる、文学的ユーモアを抱きしめたくなりました。懐かしくとぼけた阿波弁の醸し出す現代民話ともいうべき大らかな可笑しみに、いつまでもいつまでも浸り続けていたくなる幸福さはどうでしょう。それに、今回のご寄稿作品の中では唯一、作者が悪戯なだけではなく、ストーリー自体に悪戯が描かれているお話でもありました。
「
〈 「あんな、狸ゆうてもな、こんだけかいらしいにして来よるでないで。見てみこのカボチャの服。イタズラしに来たわけでなし」 〉嫁はん、カッコイイ!
〈 「おまはんら何しよん、一緒に行ったらどうで?」
馬瓶の嫁はんは狸どもの背中を押すと
「芝生小の校長先生にその仮装見せたり。トリック・オア・トリート忘れたらアカンでよ」 〉
「トリック・オア・トリート」はハロウィンでご近所を訪ねた子供たちの唱える「お菓子くれなきゃいたずらするぞ!」という掛け声だとか。ご寄稿頂いたのもちょうどハロウィンの季節でとてもタイムリーな嬉しさでした。
∮ その他、いずれのご寄稿作品も楽しく拝読させて頂きました。中でも、【君が結界を破ったら】海来 宙さまは非常に気がかりな作品だったのですが …。
https://kakuyomu.jp/works/16818093086049567804
二話からなる物語で、二話目は、一話目から〈「君」が入った文をすべて消〉し去ってしまった(ちなみに「君」は悪魔です)ものです。ところが、一話目も二話目も本質的に何かが変ったと感じられなかったのが逆に不思議で、これは明らかに友未が作者の意図や作品の面白さを把握しきれていない証であるように思われます。ひとつには、作品の内容自体に不条理風味というか、謎めいたところがあったためかもしれません。ただ、何か面白いはずだ、という直感だけは拭いきれませんでした。
落葉寄せ運良きひと葉風と
ストックブック 友未 哲俊 @betunosi
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