第七話 おばあちゃんのきびだんご
一 クネンボみかんの巻
昔むかし。
西国のはずれに、
その山のふもとに、太郎という小さい坊やが、おじいちゃんとおばあちゃんと三人で暮らしておりました。
峰の紅葉を散らして吹きおろす風が、今朝はよほどおだやかです。
おじいちゃんは、朝から山へ柴かりに出かけました。
おばあちゃんは川で洗ってきた洗濯ものを、庭先で干しています。
干し柿も美味しいけれど、ここから
クネンボみかんは
「太郎や」
洗濯ものを広げているひとの横顔には、やさしい笑い
「なあに? おばあちゃん」
「お前はまだ小さいんだから、一人で山に行ってはいけないよ」
小さい太郎は目を
「どうして、わかったの?」
たったいま山に行きたいな、と思ったばかりなのに。
「太郎の顔をみれば、みんなわかる」
おばあちゃんは細い
たすきで
「ぼく、クネンボみかん、取りにゆきたいなあ」
まるっこい膝を縁側の端からたらして、太郎は
「明日、おじいちゃんと行っておいでな」
白い手のひらが、濡れた生地をぱんぱんとはたきます。
「だっておじいちゃんてば、みかんよりキノコにすべえ、とか言うんだもの」
太郎は、桃のような頬をふくらませました。
つい
「おじいちゃんは、
「ねえ、おばあちゃん。ぼく、一人で行っちゃダメ?」
はだしでトンと庭におりると、太郎はおばあちゃんの前掛けの端をつかみました。
「もう六つだから、迷子になんかならないよ。いつも一人で遊んでいるのは、つまらないんだもん」
太郎のうちは村はずれで近くに遊び仲間がいないのです。おじいちゃんもおばあちゃんも毎日忙しくて太郎の相手をしてやる暇がありません。
「そうだねえ」
子犬のように一心に見上げてくる太郎に、おばあちゃんはやわらかく眉を寄せました。
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