ヒーローは自室にいる

探偵はバーにいる――もとい、この物語の主人公(ヒーロー)は自室にいる。
そりゃもう、ずっと自室にいる。
何なら、話の半分以上が自室で展開されているという徹底っぷりである。

しかしこの物語のすごいところは、それだけ主人公が閉じこもっているのに、しっかりホラーとして話が展開するところだろう。
閉じこもっている状況が、ホラーにおけるクローズドな状況として見事に成立しているのである。
登場人物も少なく、しかも主人公が直接顔を合わせた人物というと更に限られる。
だというのに、それが逆に個々の人物の個性を浮き彫りにさせているようにも思ってしまう。

また、主人公が頑ななに外に出たがらないトラウマともいえる理由の描写が生々しく、思わず「頑張ったな……」と言いたくなってしまった。

等身大の主人公が(引きこもりながら)、怪異に立ち向かう本作。
どうやって立ち向かうの? と気になったそこの貴方は、ぜひとも読むことをお勧めする。

その他のおすすめレビュー

透峰 零さんの他のおすすめレビュー236