鬼の目にも涙

時は室町、ところは鬼が出ると噂の山の中。語るは葛籠負いし奇妙ななりした旅の僧。

僧に興味を引かれた男は、麓に案内するまでの短い旅路を共にする中でとある鬼の話を聞く。それはこの山に住む鬼とはまったく別の、地獄の鬼。親より先に死んだ子らを責め苛む賽の河原の獄卒と、誰にも死を悼まれずに石を積み続ける鬼子の話だった。

鬼の目にも涙とはよく言ったものだが、それは地獄の鬼には許されぬ。鬼子に情けをかけた鬼もまた、共に地獄に堕ちたという。
――では果たして鬼とは、地獄とは。

仄暗い和の雰囲気が香るにも関わらず、読みやすい文体で短い中でも世界観にどっぷりと浸れる本作。
和風な作品やお伽話が好きな方は、読むことを強くお勧めします。