地獄はいったい何処にあるのか? 鬼の居る場所がそうならば
- ★★★ Excellent!!!
昔話風の文体で、琵琶の音にのせられて最初から最後まで歌いあげられるような筆致で描かれる、旅の僧の語りが印象的な短編。これが長編の一話目であってほしいと思うぐらい、更なる続きを読みたくなる作品です。
和やかな昔話のようであり、これから何が起こるのかわからない深淵を覗き込むような。そこはかとない不気味さと、美しさが交差します。
鬼が出るという山に向けて足を踏み入れようとするは、変わった出で立ちの僧が一人。室町の戦乱の世の中で、旅の僧の存在は珍しい事ではないけれど、一人の男が声をかけてきて……。という導入からはじまります。
男に向けて語られる話と、その物語の主人公たる子供の事、そして鬼という存在について。
ああ、これは!と思わせる見事な構成と話のオチ、残酷だけどどこか物悲しくて妖艶な雰囲気もあったり。和の雰囲気溢れる物語がお好きな方、必見です。