姫という言葉に秘められた可能性

「姫は儚く脆いもの。
愛され、護られ、騙されるもの。
その魅力は魔性であり、もしかしたら毒かもしれない」
物語の紹介文で、これほど「見事」と唸った作品はありません。
この作品は姫十夜のタイトルに違わず、十人の様々な姫に纏わるお話を集めたもの。
その中には儚く脆い姫もいれば、戦乱を強く生きた姫もいる。騙されたことにも気づけず恋に溺れ続けた姫もいれば、己の価値を見出し道を切り開いた姫もいる。

壮大な長編にしようと思えば幾らでもできるのに、どのお話も短く纏まり、またその畳み方が決して雑にならず、むしろ美しさを感じるのも魅力の一つ。
短い文字数と童話のような小気味の良いテンポで語られるにも関わらず、最初の数行で読者にその世界観を語るのも素晴らしい。作者の文章力の高さが成せるわざだと感じます。

私のお気に入りは塩の姫と紫陽花の姫。前者は姫の成長と、商人との絆が非常に好みでした。後者はあえて名言しないことで話のオチをつけ、そういうことかと読み手としてニヤリとさせられましたので。

もちろん、前述したように他の姫もいずれ劣らぬ綺羅星のごとく魅力的なお話ですので、読めばきっとお気に入りの姫が見つかるはず。

ただし、書き手の皆さんは――【朝日が見えたら、お別れ】です。姫が楽しみにしている物語を紡ぐために。

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