「姫は儚く脆いもの。
愛され、護られ、騙されるもの。
その魅力は魔性であり、もしかしたら毒かもしれない」
物語の紹介文で、これほど「見事」と唸った作品はありません。
この作品は姫十夜のタイトルに違わず、十人の様々な姫に纏わるお話を集めたもの。
その中には儚く脆い姫もいれば、戦乱を強く生きた姫もいる。騙されたことにも気づけず恋に溺れ続けた姫もいれば、己の価値を見出し道を切り開いた姫もいる。

壮大な長編にしようと思えば幾らでもできるのに、どのお話も短く纏まり、またその畳み方が決して雑にならず、むしろ美しさを感じるのも魅力の一つ。
短い文字数と童話のような小気味の良いテンポで語られるにも関わらず、最初の数行で読者にその世界観を語るのも素晴らしい。作者の文章力の高さが成せるわざだと感じます。

私のお気に入りは塩の姫と紫陽花の姫。前者は姫の成長と、商人との絆が非常に好みでした。後者はあえて名言しないことで話のオチをつけ、そういうことかと読み手としてニヤリとさせられましたので。

もちろん、前述したように他の姫もいずれ劣らぬ綺羅星のごとく魅力的なお話ですので、読めばきっとお気に入りの姫が見つかるはず。

ただし、書き手の皆さんは――【朝日が見えたら、お別れ】です。姫が楽しみにしている物語を紡ぐために。

姫と聞いて、誰しもが物語のお姫様を想像するだろう。
美しくも、王子に守られ、最後は幸せが待っている。
だが、ここにある物語は、それぞれの姫君達の物語。
幸せが待っている姫もあれば、嘆きがあり、儚さがある。

どの姫の物語も、作者様が選び抜いた言葉で幻想的に綴られて、童話のような世界に惹き込まれます。

オススメです。

お姫様の物語と聞くと、身分違いの恋をしたり溺愛されたり追放されたり……最近はそんなイメージがあります。西洋風な煌びやかで華やかな世界で凛として逞しく美しく生きる、そんなお姫様たち。でも本作のお姫様はひと味もふた味も違います。作者様の想像力の豊かさと美しい言葉選び、そして少ない文字数の中にこれでもかと詰め込まれた世界観に魅了され、あっという間に最新話まで読了してしまいました。各話独立した物語で、気になるお姫様から手に取れるのも読者の嬉しいところだと思います。私は特に苦菜の姫と紫陽花の姫のお話が好きです。お姫様は十人登場予定とのこと。残りのお姫様と出会うのを楽しみにしながら、続きの夜を待ちたいと思います。

皆さんは「姫」と聞いて何を思い浮かべますか？

作者様のあらすじに、とても意味深長な言葉が連なっています。
なるほど……姫と言ってもいろいろなんだな、と。

短編集なので、内容には触れません。
でも、私は第一夜を拝読して、すぐに引き込まれていまいました。

本作には十の物語があるそうなのですが、第三夜以降の公開は六月になるとのことです。

続きを待てない方は、東京と仙台で行われるコミティアにぜひ足をお運びいただきたいと思います。