生きることの無根拠さをうたう
- ★★★ Excellent!!!
語り手の感性と言葉遣いによって生み出される独特な世界に引き込まれ、面白く読みました。
小説としてはとにかく読み味がとてもよい。
語り手であるサチコの語る言葉には根拠がありません。
メタ的に言えば彼女の感じたこと、考えることに説得力を持たせるための物語上の仕掛けが何もない。
それはこの作品をストーリーとして捉えようとしたときには瑕疵とみることもできるのかもしれません。
ですが、彼女の語るひどく空虚な言葉と、それによって描かれる世界の像に、かなりリアルに「生きるということ」が映し出されている気がしました。
実際にはそこに何もないのだとしても、人は何かを(サチコの場合には主に「音楽」を)信じるし、死にそうになったりしながらもなんとか生きていく。
だから、この作品のタイトルには西武ライオンズの応援歌なんかが掲げられているのかな、とか思ったりもして。