《追補編》十の災いとは

十の災いについて述べたが、それについて詳細もリストも記載しなかったため、本項にて記述する。

特にまとめやオチなどは用意していないが、原点の引用とともに個人的な難癖や解釈だけ載せさせていただこう。



①ナイル川の水を血に変える


モーセとアロンは主が命じられたとおりに行った。彼はパロ(ファラオ)とその家臣の目の前で杖を上げ、ナイルの水を打った。すると、ナイルの水はことごとく血に変わった。

ナイルの魚は死に、ナイルは臭くなり、エジプト人はナイルの水を飲むことができなくなった。エジプト全土にわたって血があった。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記七章より)


水が赤く変わるというと、赤潮が思い起こされるでしょう。赤潮はプランクトンの異常発生によって水の色が変わる現象ですが、色は原因となるプラクトンの色素によって変わるため、たまたま血のような色に変わったということも考えられます。

それを裏付けるのが、「魚は死に」という記述でしょう。プランクトンが増大することによって、水中の酸素濃度が下がり、魚が死ぬことは赤潮の代表的な被害です。

それとも、本当に川の水が血に変わったのでしょうか。そして、その栄養価の異常な高さにより魚も死んだと。そんなことをする神とはどこの邪神なのでしょうか。



②蛙を放つ


見よ、わたしは、あなたの全領土を、かえるをもって、打つ。

かえるがナイルに群がり、上って来て、あなたの家に入る。あなたの寝室に、あなたの寝台に、あなたの家臣の家に、あなたの民の中に、あなたのかまどに、あなたのこね鉢に、入る。

こうしてかえるは、あなたとあなたの民とあなたのすべての家臣の上に、はい上がる。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記八章より)


カエルの大量発生です。カエルが大量発生するのは冬眠から覚めて、繁殖場所に移動する場合に見られるといわれています。カエルが自分の家や寝床に入ってくるのはぞっとしないことですが、原始的なエジプトの住居ではありえることだったのでしょうか。

そういえば、ヒキガエルに似た邪神もいるようですが、まさか関係はないでしょう。

神のすることにしては、随分セコい災いのようにも思えますが、これものちに引き起される災いの布石だったのかもしれません。



③ぶよを放つ


アロンは手を差し伸ばして、杖でちりを打った。すると、ぶよは人や獣についた。血のちりはみな、エジプト全土で、ぶよとなった。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記八章より) 


3つ目にして、雑になってきた感も否めませんが、ぶよの大量発生です。

そもそも、ぶよとは大量発生することが多い昆虫です。条件は清潔な河川があることだといわれています。モーセやアロンでなくとも、適当に予言して適当に当たるなんてことあっても不思議ではありません。

とはいえ、ぶよを自在に操る相手がいたら厄介で仕方ないでしょうね。



あぶを放つ


さあ、わたしは、あぶの群れを、あなたとあなたの家臣とあなたの民の中に、またあなたの家の中に放つ。エジプトの家々も、彼らがいる土地も、あぶの群れで満ちる。

わたしはその日、わたしの民がとどまっているゴシェンの地を特別に扱い、そこには、あぶの群れがいないようにする。それは主であるわたしが、その地の真ん中にいることを、あなたが知るためである。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記八章より) 


害虫シリーズ第三弾です。ぶよの次はあぶかよ、というマンネリ感がありますが、これも脅威です。刺された経験のある人ならわかると思いますが、患部は激しく腫れて痛み、医者にかからなければそれが長期的に続きます。

あぶもまた季節によって大量発生する昆虫です。温暖な気候であれば活発に動き回ります。

言うまでもなく、あぶを自在に操るような邪神には近づかないようにしましょう。



⑤家畜に疫病を流行らせる


見よ、主の手は、野にいるあなたの家畜、馬、ろば、らくだ、牛、羊の上に下り、非常に激しい疫病が起こる。

しかし、主は、イスラエルの家畜とエジプトの家畜とを区別する。それでイスラエル人の家畜は一頭も死なない。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記九章より)


あらゆる家畜に疫病をもたらすなど不可解な印象を受けますが、この言葉で指定されている家畜はすべて偶蹄類を差していることに気づかないでしょうか。それらの家畜に起きる疫病としては口蹄疫が知られています。

エジプトの家畜とイスラエルの家畜でどのような区別が行われているかは定かでありませんが、疫病への免疫があったということでしょうか。予めワクチンを打っておくような知識はこの時代にはないはずですが……。



⑥腫れ物を生じさせる


あなたがたは、かまどのすすを両手いっぱいに取れ。モーセはパロの前で、それを天に向けてまき散らせ。

それがエジプト全土にわたって、細かいほこりとなると、エジプト全土の人と獣につき、うみの出る腫物となる。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記九章より)


これは腫れ物を引き起こす病原菌をばら撒いたということでしょうか。ペストや天然痘など腫れ物を引き起こす伝染病は数多あります。

伝染病の脅威は現在でも実感させられているところですが、意図的にやっているという極めて悪質な例といえるでしょう。



ひょうを降らせる


モーセが杖を天に向けて差し伸ばすと、主は雷と雹を送り、火が地に向かって走った。主はエジプトの国に雹を降らせた。

雹が降り、雹のただ中を火がひらめき渡った。建国以来エジプトの国中どこにもそのようなことのなかった、きわめて激しいものであった。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記九章より)


ひょうは積乱雲内で発生するため、雷と同時に発生する場合が多いといわれています。旧約聖書内の記述通りというべきですね。

実は現在でもエジプトには雪やひょうが降ることがあるそうです。2013年12月に観測史上初の降雪があったということですが、古代エジプトでも似たようなことがあったのかもしれません。



いなごを放つ

あなたの手をエジプトの地の上に差し伸ばせ。いなごの大群がエジプトの地を襲い、その国のあらゆる草木、雹の残したすべてを食い尽くすようにせよ。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記一〇章より)


害虫シリーズ第四弾。満を持しての再登場です。

いなごは農作物を食い荒らす害虫で、七番目までの災いで疲弊したエジプトに止めを刺すかのような災害といえるでしょうあ。

いなごとありますが、バッタとごっちゃになっている場合もあります。

バッタの場合、群生相と呼ばれる特殊な生態があり、集団で育ったバッタは色が黒くなり、飛翔力が増し、凶暴性・雑食性が増します。また、群れをなす習性もできるため、群生相のバッタが代を重ねることで、より強く、より狂暴なバッタが大量発生することになります。



⑨暗闇でエジプトを覆う


モーセが天に向けて手を差し伸ばしたとき、エジプト全土は三日間真っ暗やみとなった。

三日間、だれも互いに見ることも、自分の場所から立つこともできなかった。しかしイスラエル人の住むところには光があった。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記一〇章より)


これはいかにも邪神の仕業という感じでしょう。

とはいえ、砂嵐や火山灰などで太陽が覆われれば、昼でも暗くなることがあるようです。異常気象で曇天が続いたということも考えられます。



⑩長子を皆殺しにする


エジプトの初子は、王座に着くパロの初子から、ひき臼のうしろにいる女奴隷の初子、それに家畜の初子に至るまで。みな死ぬ。

そしてエジプト全土にわたって、大きな叫びが起こる。

(『旧約聖書 新改訳』出エジプト記一一章より)


これはほんと意味わかりませんね。本編で書いたようにネフレン=カが一人一人殺して回ったというのが一番信憑性あるのでは、と思うくらいです。

敢えて考えるならば、伝染病が流行って多くの子供が死に、初子だけに限らないとはいえ、初子も多く死んだというケースでしょうか。

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ネフレン=カ=モーセ同一人物説 ニャルさま @nyar-sama

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