ネフレン=カ=モーセ同一人物説

ニャルさま

ネフレン=カ=モーセ同一人物説

歴史上、ニャルラトテップの信奉者として最も有名な人物は、エジプトのファラオ、ネフレン=カではないでしょうか。


彼は神官でありながら一代で王朝を築き、自らの崇拝する神々以外を排除しました。ところが、忌まわしい祭儀を執り行ったために反発を受け、一代で王朝を失いました。

新しい王朝とその民は先の治世の名残をことごとく破壊し、ネフレン=カの名を歴史から抹消したといいます。


そのため、近代に入り遺跡の発掘が行われるまで、 その存在はわずかに伝説として語られるだけでした。


伝説によれば、ニャルラトテップに生け贄を捧げる大規模な儀式を執り行い、予言の力を得ていたそうです。そして、誰も知らない地下深くに、自らの遺体とともに七千年もの未来を見通したタペストリーを遺したといわれています。


一方のモーセですが、彼はイスラエル人を奴隷から解放した政治的指導者であり、実質的にユダヤ教の開祖となった宗教的な指導者として知られています。


モーセはイスラエル人として生まれますが、新生児は皆殺しにせよというファラオの命から逃れるためナイル川に流され、王家のものに偶然拾われ育てられました。

成長したモーセは神の啓示を受け、イスラエル人解放をファラオに迫りました。断られると神の奇跡(十の災い)を起こしてファラオを脅し解放を認めさせます。

その後、数十年の放浪の末に約束の地カナンに入ることを神に拒絶され、死去しました。モアブの谷という所在不明の場所に葬られたといいます。


なお、モーセの足跡はユダヤ民族史には刻まれているものの、エジプトの歴史には一切残されておりません。


          ◇


興味深いのは、歴史に多大な影響を与えた人物が揃ってエジプト史に名を残していないことです。

ネフレン=カは記録が少なく、モーセは逆に胡散臭い記録が多い。これを補完しあえば一人の人物像が浮かび上がってくるのではないでしょうか。


モーセはイスラエル人であることが明記されていますが、本当でしょうか? その生い立ちはおとぎ話めいていて信憑性に欠けます。

また、古代エジプトでは奴隷階級が一般的な存在ではないことが近年の研究で明らかになっており、「イスラエル人は奴隷として虐げられていた」「新生児は殺害せよというファラオの命」といった記述は、誇張あるいはウソであると見なすべきでしょう。

モーセは最初から王家のものであったと見るべきです。そして、彼に啓示を与え神官の道に進ませた神こそがニャルラトテップだったのではないでしょうか。


モーセはイスラエル人の解放を掲げ、エジプトで奇跡を起こします。

ナイル川の水は血に変わり、エジプト中で害虫と疫病が蔓延し、エジプトは闇に覆われます。そしてヤハウェにまつろわぬ者の長子がことごとく死にました。

実に凄惨な災厄であるというべきであり、ネフレン=カが在位中に行った儀式とその影響がこのようなものであったといわれれば納得できてしまいます。


ネフレン=カ=モーセ同一人物説を念頭に置くと、こういうことではないでしょうか。

エジプトの王家に生まれたネフレン=カはニャルラトテップ崇拝に傾倒し、時のファラオを殺害して王座を奪います。そして、ニャルラトテップのための儀式として十の災いを引き起こすのです。


災いのうち九つ目までは自然現象として説明できなくはありません。

しかし、最後の災いだけは違います。長子に限定して死を与える自然現象などはなく、明らかに人為的なものと考えざるを得ません。

ネフレン=カはニャルラトテップを信仰しないものの長子をことごとく殺して見せしめとし、かつニャルラトテップへの供物としたのでしょう。


ネフレン=カの在位は短く、王座から落とされ、国を追放されます。

奴隷解放とイスラエル人の出エジプトとは、追放されたネフレン=カとその一族が自分たちを正当化するために事実をねじ曲げたものなのでしょう。

イスラエル人という種族も元々は存在せず、彼ら一族がそう名乗ることによって生まれたのかもしれません。


その後、ネフレン=カは約束の地カナンではなく、人知れずモアブの地に葬られました。誰も知らない地に葬られる、これもネフレン=カとモーセの共通点です。

モアブの谷と予言の地下神殿は同じ場所なのでしょう。


          ◇


ネフレン=カの神ニャルラトテップ、すなわちモーセの神ヤハウェへの信仰はユダヤ教、キリスト教、イスラム教となり世界中に広まっていきます。

これらの宗教は時に争いの火種となり、あるいは科学の発展の基盤となり、現代文明をもたらす原動力となりました。

現在の信仰者数は約40億人といわれ、世界人口のおよそ半数です。


這い寄る混沌ニャルラトテップは気の遠くなるような歳月をかけながら、すでに世界中の人間を手中にしているといえるのではないでしょうか。

そして、混沌と破滅の未来へと向かう私たちを冷笑しているのです。

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