第3話
私の名前は、さつき。
十八歳。五歳から、芸能活動をしていた。
お母さんが、昔アイドルを目指したが、おじいちゃんとおばあちゃんが警察だった事もあり、せっかく事務所に受かっても猛反対され、挫折したらしい。
だから娘の私に、お母さんは全てのお金や時間を掛けていた。実質、お母さんがマネージャーでありプロデューサーの様な感じになっていた。
当然、おじいちゃんとおばあちゃんとはほぼ絶縁状態となり、お父さんとも離婚。最後におじいちゃんが「可愛い孫をどこに売り飛ばすつもりだ?!」と、怒鳴っていたのを今でも覚えているし……実際にこの言葉の意味を、痛い程痛恨する人生だった。
まず、子役の小さなオーディションを片っ端から受けさせらる。
少しでも芸能界への入口に立ち、知名度を上げるため、七歳の時には児童ポルノに近い写真集を出した。
普通なら小学生の頃の写真は、家族写真とか、運動会とかの思い出の写真が多いのかもしれないけれども、うちはスクール水着やビキニでアイスキャンディーを食べる私の写真集ばかりだし、しかも事務所にも家にも写真集の在庫があった。
十歳からは、お仕事の前に母にホテルや遊園地へ連れて行かれると知らないおじさんとふたりで遊ばさせられた。すると、そのおじさんは別の日にはスーツ姿で仕事の現場にいたのだ。
今なら分かる。仕事のプロデューサー、または上席者のデート相手をさせられていたのだ、と。
十二歳の時、いつも通りホテルでおじさんと遊んでいると身体の関係を求められた。
「お母さん、君のお仕事の為に頑張ってくれてるよね?お母さんの為に、お仕事頑張りたくない?」
そう言われて、お母さんの為なら、とそのおじさんと初体験をした。とにかく怖くて、気持ち悪くて、痛かった。
でも、そのおじさんのおかげでゴールデンタイムのドラマのレギュラー役を出来る事になった。
しかし、その後はテレビのお仕事よりも、写真集の仕事や地域を回る小さなご当地アイドルとしての活動がメインだった。
他のメンバーの女の子達は、おじさんファンとの握手等を嫌がっていたが、私はもう無感覚に近かった。
十三歳の時には、ホテルにおじさんがいても躊躇わず仕事のために、関係を持つ様になっていた。
その方法しか、お仕事の取り方を知らなかったから。
信じたくないし考えたくないけれども、お母さんは、こういう“枕営業”の事、わかってたんだろうな。
十四歳の時、お母さんとふたりで美容クリニックへ行って整形した。きっとお母さんも整形したのはふたりの顔が違うと怪しまれるから合わせて整形したのだろう。とにかく整形手術は痛かったし、その後のメンテナンスも辛かった。今も、整形手術による後遺症で頭痛や皮膚の突っ張りが辛い。
十八歳の時、映画の主演の仕事が来た。
すっごく嬉しかった。
アイドルなのか、子役なのか、自分がなんなのかわからなくなっていた。
だから、この映画の仕事をやり遂げれば、「女優さん」になれるんじゃないか……って。
でも、実際は撮影現場に行ったらフルヌードとベッドシーンを求められた。
「聞いてない!やりたくない!」と、大泣きした。
でも、お母さんも現場の人達からも「仕事なんだから!」と、ものすごく怒られた。
そのまま、その映画を撮影した。
しかし映画は大コケ。それだけじゃなくて「清楚系ご当地アイドルのAV落ち」「ポルノ映画か?」「脱いだら意外と魅力のない身体」と、散々叩かられた。
この業界は、白も黒もグレーもない。反社会的勢力のと繋がりは当たり前。
本当に綺麗な所しか見えない。
でも私みたいに落ちて落ちて、ドロドロの人間もいる。
二十歳で、歳の近い会った事もない男性モデルとのスキャンダルを報じられた。
向こうはそこそこ売れていたからこそ、相手のファンからも、自分のファンからも、そうでない人達からも毎日SNSでの誹謗中傷や、嫌がらせの日々。
お母さんは心配してくれるところか、「注目されてる」と、喜んでいた。
誰も味方になってくれない。
助けもいない。
わかってくれない。
同じアイドルグループのメンバーは脱退して、大学やら一派会社に就職していた。
私自身、自分の限界や賞味期限の様なものを感じていた。
この先、私はどうなってしまうのだろう。
そんな時に、私は癌になった。
若いから進行が早くて、見つかったときには末期。手術や治療を終えても髪は抜け落ち、激しい背中の痛み。
寿命も申告された。
私の人生、なんだったんだろう。
SNSでは、散々叩かれ、ネタにされていたのに、今度は「子役からの地方アイドルの悲劇。」と、世間は手のひらを返して、今度はお涙頂戴の記事やらニュースを歌い出した。
もう……本当にうんざり。
どうせ死ぬ。
死んでもまたネタにされるんでしょ?
でも、忘れ去られていくんでしょ?
だって二日前の事件やニュースを私だって覚えていないんだもん。
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