空の向こう側。そこには優しさが飛んでいました。
- ★★★ Excellent!!!
この物語の主人公は、ネットで繋がった機器たちから寄せられるお話を聞いてあげています。
その行為を事業化もしている社会人です。
そうです。
この世界では機器たちが心を持ち合わせていて、誰かとお喋りしたいと思っているのです。
そんな主人公に、ある日人工衛星からのメールが届きました。
流れ星になるまでの間、お話をしようというのです。
この物語は、主人公と人工衛星との会話だけで進みます。
多くのことがよくわからないままに、物語は進むのです。
しかし、よくできた朗読劇がそうであるように。
和やかで巧みな会話の流れは、読む者をすぐに物語のなかに引きこむことでしょう。
なにせ人工衛星の語り口は、珍妙で愛らしいのです。
そしていつしか。
人工衛星の吐露するその心情に、多くの方が心を震わせるはずです。
この物語は良い作品です。
多くの方が、ひとときの感動を覚えるはずです。
でも私は知っています。
いくらよく出来ていたとしても。
読者は物語に感化されて夜空なんか見あげないし。お話のこともすぐに忘れます。
物語なんてたくさんありますからね。
でもね。だからこそです。
覚えているうちくらいは、空の向こう側のあの人工衛星のことを、少しくらいは考えようかと思いました。
優しくて勇敢な人工衛星に、敬意を表して。